ハンス身代わりの笞刑

中世ヨーロッパの、とある町。鍛冶屋のヨハンは病に倒れて久しかった。ヨハンは腕のよい鍛冶屋だったが、この当時は注文が来てから製品を作るのが普通で、病に倒れて久しいとあればその日の生活にも困っていた。妻はもうかなり前に流行り病で亡くなっていた。この当時の人間は病に対してはなすすべがなかった。ヨハンには、ハンスという12歳になる一人息子がいた。ハンスは稀に見る美少年で、性格もよく、病気の父親の看病を献身的に行っていた。自分にできる仕事は何でもやり、近所の人々から幾ばくかのおこずかいをもらって、それで少しでも父親に栄養のあるものを買って食べさせようとしていた。美少年とはいっても、ハンスはひ弱な感じではなかった。走ったり、高い所に飛び乗ったり、逆に高い所から飛び降りたり、棒で打ち合ったり…と同年輩の友人との遊びで引けをとることはなかった。むしろ、大抵の場合ナンバー1だった。この当時の少年達は、お尻がやっと隠れるくらいの服を着て、腰には革のベルトか縄を巻いていた。ズボンははかずにタイツのようなものをはいていた。しかし、ハンスだけは素足だった。絹製のタイツが高価で買えなかったからだ。その代わり、ハンスは毛糸のハイソックスをはいていた。ハンスは帽子も服もこのハイソックスもみな緑のものを身につけていた。ついでにいうとパンツも緑だった。パンツは綿製品でこの当時は綿も高価だったため、12歳になって身体が大きくなったハンスだがなかなか新調できるものではなかった。ハンスが身につけているパンツは小さい頃のものだったためそれはとても小さくてハンスのお尻はほとんどはみ出ていた。服の裾が短いため、ちょっと動くとパンツが見えた。緑のパンツがきりきり食い込んだハンスの格好のよいお尻が見えると、その気のない同年輩の少年でさえどきっとした。

この当時のヨーロッパは、どこの国でも都市でも人民に重税が課せられた。隣国との戦争、お城の増改築、公共工事…何をやるにしても多くのお金が必要だった。しかし、ヨハンが倒れてからまとまった収入の途絶えているハンスのうちはとても税金が払えなかった。ハンスのうちには何回も収税吏がやってきた。その度にハンスが土下座するばかりに哀願して引き取ってもらうのだった。
ある日の早朝、ハンスのうちの戸をノックする音が聞こえた。ハンスはこの音で目覚めたというわけではない。ハンスは早起きの働き者だった。ハンスが戸を開けると、今度は収税吏ではなく、お城の警察隊が数人で押しかけてきていた。その隊長は羊皮紙の逮捕状のようなものをこちらに見せながら言った。
「鍛冶屋のヨハン、税金滞納1年以上の罪で逮捕する。今すぐ、お城まで同道願おう。」
 父親は今お城に連行されたら、お城に着く前に死んでしまうだろう。ハンスは咄嗟に言った。
「お役人様、僕を父の身代わりでお城に連れて行ってください。」
隊長は少し迷っていたが、やがてきっぱりと配下に命じた。
「よし、この少年に縄をうて。」
ヨハンはこの様子を病床で見ていた。元気な頃のヨハンだったら最愛の息子に手をかける者はたとえお城の役人だって、飛び掛っていったことだろう。しかし、今のヨハンは起き上がることも出来なかった。ヨハンはハンスの方に手を伸ばし、涙を流した。
 後ろ手に縛られたハンスはきっぱりとした表情で父に言った。気丈なことに泣いてはいなかった。
「父上、ご安心ください。ハンスは必ず帰ってきます。これは約束です。」

ハンスは護送用の馬車に揺られてお城まで連れていかれた。すぐに王様の前に引き出された。縄はうたれたままだった。ハンスは片膝つきの姿勢でひざまづかされた。5段ほどの階段の上に玉座があった。そこに王様が坐っていた。
 王様はハンスを人目見て息を呑んだ。稀に見る美少年だ。それにこの剥き出しの太ももの美しさはどうだ。スマートでしかもぴちぴち弾力に溢れている太もも。つやつやして輝くような肌。膝から下をぴっちり覆っている緑のハイソックスが露出している膝から上の素肌をいやがうえにも引き立てていた。王様の視線はハンスの立てられた膝から太ももを伝わってだんだんお尻の方に走っていた。下着はつけてはいるのだろうが、よほど行儀よく立て膝しているので、見えそうで見えない。王様はドキドキしてきた。いったいこの美少年はどんな罪を犯したというのだろう。
 縄尻を持っていた隊長が簡潔に報告した。
「ヨハンの息子ハンスです。本人のたっての希望で税金滞納の罪の父親の身代わりで連行しました。」
王様はハンスに直接言葉をかけた。
「ハンス、その方は何歳じゃ?」
「はい王様、私は12歳でございます。」
ハンスはびくびくせずに答えた。
王様は少しの間迷った。王様にもちょうど12歳になる王子がいた。もし、その最愛の王子が公衆の面前でお尻をムチ打たれることになったとしたら…。父親としての限りなく優しい心が頭をもたげた。いや、私は王だ。情けは無用だ。けじめがつかない。それに加えて一人の人間として、これほどの美少年がそのくりくりしたお尻をぎゅんと突き上げてムチ打たれるところが見たいという気持ちも否定できなかった。やがて、王様が判決を言い渡した。
「ハンスとやら、病気の父親を庇って代わりに刑を受けようというその心持ち、殊勝である。しかし、国法はけじめとして曲げられぬ。よって、ムチ打ち50回の刑に処す。但し、少年の年齢を考慮し、そのムチ打ちは生命に別状のあるほどのものであっては決してならない。少年の勇気と誇りをできるだけ傷つけないような配慮をすること。刑の執行は本日正午。場所は城門前の広場。以上!」
 王様のこの決定がなされて、早速ハンスの縄が解かれた。勇気ある孝行息子のハンスに縄目の恥をかかせてはならないと役人達が悟ったからだろう。それにハンスは縛られてなくても逃げるはずがない。逃げれば父親が窺知に立たされることが明白だからだ。
 ハンスはある部屋に連れていかれた。壁、床、寝台、すべて石造りの部屋であった。しかし、鉄格子などはなく、明るい部屋であった。少なくとも牢ではなさそうだ。ハンスをその部屋に入れると役人達は去っていった。戸に鍵もかかっていないようだ。
 すると一人の少女が部屋に入って来た。ハンスは息を呑んだ。これほどの美少女は見たことがない。艶々した黒髪を後ろで結んでたらしている。小麦色の健康そうな肌、真っ白の木綿の服を着ていた。実に簡素な服で袖なしのワンピースであり、裾は極端に短かった。腰にロープのような帯を締めている。小麦色の太ももはもちろん剥き出し、脚には革製のサンダルを履いていてサンダルの紐を膝下まで編み上げていた。

「ハンスね。私はパメラ、あなたと同じ12歳よ。ムチ打ちの刑の前後にあなたの世話をするように命じられたの。さっ、早速その緑の服を脱いで。」
 ハンスはちょっとためらったが、素直に緑の服を脱いだ。緑のハイソックスも脱いだ。パメラは言った。
「何してるの。パンツも早く脱いで。」
ちょっと恥ずかしかったが、ハンスは極短の緑のパンツも脱いだ。ハンスは素裸になった。パメラは流しでてきぱきとハンスの服を洗濯し、日当たりのよいベランダに干した。
「さあ、これですぐに服も乾くわ。清潔な服でムチ打ちの刑を受けないとね。きっと大勢見に来ると思うから。あなたに恥をかかせたくないの。」
 洗濯の時のしゃがんだり、立ったりする動作でパメラの短い服の裾は何回もひるがえり、下着が見えた。純白のしかもハンスの緑パンツに負けず劣らず極短のパンツだった。小麦色のお尻にぎゅっと食い込んでいた。そのくりっとしたお尻には何本かムチの痕としか思えない筋が付いていた。
「私は赤ん坊の時、お城の門の所に捨てられていたんだって。お城で拾われて育てられたの。お城の中の色々な雑用をして暮らしているの。みんなよくしてくれるけど、決して甘やかされてはいないわ。粗相があると容赦なくお尻をムチでピシリとやられるのよ。」
パメラはそういったが、決して暗い様子ではなかった。
「さっ、ハンス。寝台の上に四つん這いになって。浣腸するから。ムチ打ちの刑は酷いからあまりにも痛くて括約筋が緩んで便を漏らしてしまう人がいるのよ。大勢の人々の面前でハンスにそんな恥をかかせたくないから、浣腸をかけるのよ。」
とパメラが言った。ハンスはほんのちょっと躊躇したが、素直に石造りの寝台の上に四つん這いになった。初対面にもかかわらず、全裸の身で四つん這いになって肛門も性器も晒してもよいほどパメラに自分のすべてをさらけだしてしまってもいいような気持ちを抱いていた。
 この当時はもちろんプラスチック製のイチジク浣腸などあるはずもなく、ガラスも貴重品であったので、素焼き製の容器でやはりピストンで液を押し込む注射式の浣腸であった。肛門に挿入する部分は十分に丸みがつけられ磨きこまれており、肛門を傷つけないような配慮がなされていた。
 パメラはハンスの肛門の周辺を優しく揉んでほぐしてから、ゆっくりと浣腸器の先端を肛門に挿入した。ハンスにとって一目惚れの美少女から浣腸を受けるのは決していやなことではなかった。妙な快感さえ感じた。すぐに便意を催し、部屋の中の便座に腰掛けて腸の中のものをすべて出し尽くした。この用便中はさすがにパメラは席を外し、再び現れた時には両手にお湯の入った桶を下げていた。
「さっ、ハンス。次は浴槽の中に四つん這いになって。お尻をきれいに洗ってあげるから。」
もうこうなったら言われる通りにするしかない。ハンスはやはり石造りの浴槽の中に四つん這いになった。パメラは桶のお湯と海綿のようなものを使ってハンスの肛門を丹念に洗ってくれた。肛門の中に指まで突っ込み、それは丁寧に洗ってくれた。肛門に指を入れられた時、またもハンスは快感を感じた。パメラは肛門だけでなく、ハンスの全身を洗い清めてくれた。やがて公衆の面前で父親の身代わりでムチを受ける神に近い少年だ。垢まみれではならない。もともと美しい肢体が光り輝くような状態でなくてはならない。パメラはそう願ったにちがいない。王様の願いもおそらくはパメラと同じだったにちがいない。
 次にパメラはハンスを石の寝台にのせ、上向きに寝せて、その後うつ伏せにして清潔な布で丹念に水気を拭った。体中の水気を取り終わった後、パメラはまたもやハンスを四つん這いにした。パメラはなにやら小さな壺を取り出し、指先によい匂いのするクリーム状のものをつけるとそれを丹念にハンスの肛門に擦り込み始めたのだ。
「さあ、ハンス。これでムチで打たれる時にどんなにお尻を突き上げて振りたてても周囲にいやな臭いが撒き散らされる配はないわ。それは、大勢の群集に見られてムチで50回も打たれるなんて苛酷な試練だけど、耐えてね。ムチ打ちの刑の後、また、この部屋で手厚く手当てしてあげるからね。」
と、パメラが言った。刻々と正午が近づいてきた。もう、この頃にはハンスの服も完全に乾き、きれいに磨き上げられた肢体にきりっと服を纏った。
 午前11時45分、部屋の戸がノックされた。
「さあ、ハンス、城門前の広場へ出る時刻だ。」
役人が迎えに来た。相変わらず縄はもう打たれない。パメラも介護グッズの入った籠を抱えて後に続いた。ハンスは役人の後に従って階段を降り、お城の大広間を横切ってお城の玄関を出、庭を通って城門へと向かった。城門がさっと開かれた。何百人だろう。大勢の見物人の視線を一時に感じた。しかし、ハンスはきっと顔を上げて一段高くなっている台の上に上がった。台の上にはT字型の台が置いてあり、ハンスは両膝をついて腹、胸、頭はその台の上に乗せ、両手は水平に伸ばしてベルトで台に固定された。
 よく声の通る役人が、
「鍛冶屋ヨハンの息子、ハンス。税金滞納の父親の身代わりでムチ打ち50回の刑を執行する。」
と、宣言した。
 王様はムチ打たれるハンスのお尻が最もよく見える特等席に着いていた。傍らにはハンスと同じ12歳の王子も固唾をのんで着座していた。
 打ち役には一旦は現役を引退したベテラン・ジェイコブが起用されていた。経験の浅い若い打ち役が力任せにムチを振るってはまずい。ジェイコブは伝説のムチ打ち人だった。狙いを定めるのが難しい長い革の紐ムチの先端でお尻の双球に打たれている女性のイニシャルを刻んだこともあったという名人だ。ムチの強さ、狙い、痕のつけ方など意のままにできる技術をもっていた。
 この日使われるムチは、貴族の子弟が通う学校で使われている「スクーティア」と呼ばれているムチだ。平べったい革製のムチで木の握りがついている。先端は二股に分かれている。ハンスと同じ年代の少年に使われているムチということで選ばれたが、貴族の子弟は服の上から、或いはタイツの上から打たれているわけで、極短のパンツで覆い切れない素肌のお尻を打たれる痛さは格別なものだろうと思われた。しかし、生命に別状があるほどの傷は受けないだろう。

 ムチ打ち名人のジェイコブはもうほとんどめくれあがているハンスの服の裾を念入りにめくり上げて腰のベルトに挟んだ。こうしてハンスのピチピチしてよく張ったお尻は服の裾に隠されることなく大勢の見物人達の目にさらされることになった。
 さあ、ムチ打ちの開始だ。
 ジェイコブは打ち方専門で、ムチの数の数え役は別にいた。さらにムチの数を石板に記録する係までいた。
「ひとーつっ!」
数え役がよく通る声で最初のムチの数を数えた。
ヒュッ!ジェイコブのムチが空気を切り裂く音がすべての見物人の耳にはっきりと聞き取れた。
パチッ!こんなによく張ったお尻をムチ打ったらこんな音がするだろうとみんなが期待した通りの乾いた音がした。
「ふたーつ…みーっつ…よーっつ…」
ムチ打ちはゆっくりしたペースで続けられた。見物人達はようやく何かが足りないことに気づき始めていた。そうだ!ハンスの叫び声が全く聞こえないのだ。
 この国ではハンスのような年頃の少年少女が公開のムチ打ち刑に処せられた例はないわけではなかった。最近では哀れな10歳の掏り少年と泥棒の見張り役をさせられていた14歳の少女が公開のムチ打ち刑に処せられたことがあった。二人とも一つ打たれるごとに金切り声を上げ、涙を滝のように流し、打ち役のお慈悲を乞う言葉を並べ立てていた。不良少年少女達の間ではもしムチ打ちの刑に遭ったら思い切り金切り声を上げた方が打ち方が少しは軽くなるという言い伝えさえあった。これはあながち嘘ではなかった。
 ハンスのような美少年が泣き叫びながらお尻をムチ打たれる姿を期待していた見物人にとってはちょっとものたりないことではあった。しかし、ハンスのような完璧な美少年だったらもしかしたら一言も声を上げないで50回のムチを耐えるんじゃないかと期待した人々も少なくはなかった。その人達は自分の期待通りにことが進んでいるのでさらに興奮し、ハンスに感情移入していった。
 当のハンスはというと、ムチ打ちの時一切声をあげないで耐え抜いてやろうなんてムチ打ち台に上がるまで少しも頭に浮かばなかった。これから耐えなくてはならない痛さと恥ずかしさに対する不安と必死に闘っていただけだった。1つ目のムチを食らった時、ショックで声が出なかった。2つ目の時も同様だった。2つ目のムチと3つ目のムチの間に考えた。愛するパメラも見守っている。大勢の人達の前でお尻をめくられてムチ打たれるなんて不名誉の極みだけど、もし、50回のムチを一切声をあげずに受けきることが出来たらこの最悪の状況の中でも少しは自分に誇りをもてるのではないだろうか。今受けた2発のムチの痛さからするとうんと頑張れば耐えられないほどでもないかもしれない。
「とう!」
ムチ打ちはようやく10回が終わった。10回で小休止が入れられた。パメラが柄杓に冷たい水を入れ、ハンスに飲ませた。この水には少量の気付薬が溶かしてあった。パメラはハンスの露出した肌に浮き出ている脂汗を丹念に布で拭ってあげていた。立会いの医者がムチ打ち台に上がり間近でハンスのお尻のムチ痕や顔色を観察した。
医者から続行可能の判断が出され、11回目からのムチ打ちが再開された。1回目から10回目までジェイコブはハンスの右側に立ってムチを振るっていたが、11回目からは左側に立って左手でムチを振るった。名人ジェイコブは右手でも左手でも同様にムチを振るうことができた。左右の臀球に均等にムチ痕をつけようとするジェイコブのこだわりであると同時にすべての見物人に必死にムチ打ちに耐えるハンスの健気なお尻を見てほしいというサービス精神の表れでもあった。
10回ごとに小休止が入れられた。医師の診察も注意深くなっていった。ハンスに大丈夫か?と聞くこともあった。ハンスは荒い息の下からきっぱりと「大丈夫です」と言い切った。ハンスは声をあげないばかりか涙さえ一切見せなかった。小休止時に甲斐甲斐しく世話を焼くパメラの方がポロポロ涙を流していた。
 ハンスのパンツが十分に短かったためとハンスのプライドを慮ったためとで、ジェイコブはムチを振るう前にハンスのパンツの裾をたくし上げて肌の露出を広げることはしなかった。しかし、20回、30回とムチの数が増えていくとさすがに我慢強いハンスも1回打たれるごとにあまりの痛さにお尻をひくひくさせるので、短いパンツはぎりぎりとお尻の溝に食い込んでいった。結果的にハンスの臀球はそのほとんどが露出する羽目となった。
 ムチの数が30回を過ぎるあたりから、ハンスの意識は朦朧としてきた。打ち役のムチの数を数える声が遠くなってきたし、痛さの感じ方も鈍くなってきた。意識を失ってしまえばむしろ楽かもしれないとも思った。しかし、ハンスは強い意思で意識をつなぎとめていた。意識を失ってしまえば、いくらパメラが浣腸をかけてくれたとはいえ、脱糞や尿失禁の恐れがないとは言い切れない。
 ムチ打ち名人のジェイコブは、ムチでピシリとハンスのお尻を打った後、再びムチを振り上げる際にムチの先端で微妙にハンスのお尻の溝を下から上にすっと撫ぜた。これはどんなに近くで見ている人でも気づかないほどのかすかな動作だった。でもやられているハンス本人は気づいていて妙な快感を味わっていた。
「…50!」ヒュッ、ピシーリ!最後のムチが振り下ろされた。ようやくムチ打ちの刑は終わった。ハンスはついに一声もあげずに耐え抜いた。
「ハンス!偉いぞ!」
見物人は口々にハンスを褒め称えた。拍手まで起こった。ハンスの両手の縛めはすぐに解かれた。ハンスは立ち上がろうとした。しかし、ほんの少しも身体が動かなかった。ハンスはそのまま、担架にうつ伏せに乗せられ、お城の中のあの部屋へと運ばれた。そして、寝台にうつ伏せに寝かされた。既に罪人ではないハンスのために石の寝台には柔らかい敷き物が敷かれていた。
 担架でハンスをこの部屋まで運んできた役人はすぐに退去し、パメラだけが残った。パメラは泣きつづけていた。パメラはお尻の割れ目に食い込みきったハンスの緑色のパンツを膝まで下ろして、ムチ傷に効くお城秘伝の塗り薬をハンスのお尻のムチ痕に擦り込んだ。
パメラがお尻のムチ痕を刺激しないように注意深くハンスのパンツを引き上げ終わった時、部屋に王様がやって来た。王子も伴っていた。パメラはすぐに片膝立ての姿勢で跪いた。ハンスも跪こうとしたが、起きられなかった。
「ハンス、苦しゅうないぞ。そのままでよい。そのままでよい。今日は実に立派な態度じゃった。余は深く感動したぞ。よい知らせをもってきた。そなたの父親は今お城の馬車が迎えに行って王立病院に入院させようとしている。きちんとした治療を施せばきっとそちの父親も元気になる。お前はもう自由の身なのだから傷が癒えたらうちに帰るのも自由じゃ。これはお前が自由意志で選んでよいのだが、この王子が今日のムチ打ちの刑を見て余以上に感動しておるのじゃ。できれば毎日その方と一緒に勉強したいといっておるのじゃ。どうかな?」
ハンスは無理をして寝台から降り、倒れるようにして跪いた。
「王様、ありがたいお言葉です。私のようなものでよかったら是非王子様と一緒に勉強させていただきたいです。」
王子の顔がぱっと明るく輝いた。
「ハンス、よく思い切ってくれた。それではこれからお城に住み込むがよい。当分この部屋を使うように。尻の傷が癒えて椅子に座れるようになったら早速王子と勉強じゃ。」(完)