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2学期が始まり、ようやく涼しくなって来た頃。
職員室での用事を済ませた拓也は、教室へ戻ろうとしていた。
誰もいないはずの廊下に、ふと気配を感じて後を振り向く。
そこには今まさに逆セクハラをせんとする愛の姿があった。
思わず大きく一歩分飛びのく。
「……良く気付いたわね」
「やっ槍溝さん! もう、それやめてよ!」
言いながら、拓也はどことなく違和感を感じていた。
(あれ? そういえば、槍溝さんっていつも、気配なんか出さなかったような?)
けれどもちろん、そんな疑問を口に出来るはずも無く、
そういう日もあるのかな、とむりやり自分を納得させる。
「そ、それで、何か用?」
「そうそう、それよ。先生に明日の合同体育の授業で使う用具を準備しておけって
言われたんだけど、手伝ってくれない?」
「あ、うん。じゃ、一緒に行こう」
人の良い拓也は考えることもなく頷くと、
それでも逆セクハラを警戒し、愛を先に歩かせて体育倉庫に向かった。
扉を開けると、部屋に溜まっている埃が舞う。
少し咳込みながら、拓也は倉庫に足を踏み入れた。
「それで、どれを出しておけばいいの? ……槍溝さん?」
呼びかけても返事の無い愛に、後を振り返ると顔が目の前にあって、
また半歩ほど後ずさりしてしまう。
「うわっ! や、槍溝さん、いるなら返事してよ」
「榎木君」
拓也の動揺に構わず、愛は更に顔を近づけると低い声で問いかけた。
その、表情の良く読み取れない顔に、拓也はプレッシャーを感じてしまう。
「あなた、深谷さんと、したんですって?」
しな子の名前を聞いた瞬間、拓也の脳裏にしな子との初体験のことが思い浮かんだ。
そのことを後悔はしていないけれど、
クラスの皆と違う所に自分が行ってしまった気がして、
あまり思い出さないようにしていた、夏の日の出来事。
「し、したって何を?」
「何をって、それを女の子の口から言わせる気?
榎木君、さりげなくセクハラするとはなかなかやるわね」
「セ、セクハラって……大体、それ誰から聞いたの?」
「さあ?」
愛はとぼけるが、拓也が誰にも話していない以上、誰から聞いたのかは明らかだった。
(さあって……深谷さんしかいないじゃない!
なんで人に言っちゃうんだろう……恥ずかしくないのかな?)
「というわけで、あたしにも、してよ」
少し、現実逃避めいた回想をしていた拓也は、愛の言葉に我にかえる。
とんでもないことを言い出した愛に、思いっきり首を振った。
「そっそんなの、出来る訳ないよ!」
「あら、どうして? 深谷さんには出来て、あたしには出来ないのかしら?」
「ち、違うよ、そう言うことじゃなくて」
「じゃぁ、何?」
「だって、深谷さんと、その、しちゃったのに、
槍溝さんともしちゃうのは、浮気ってやつでしょう? そんなの絶対ダメだよ!」
必死に言葉を選んでなんとかこの場から逃れようとする拓也だが、愛は意に介した風も無い。
じりじりとにじり寄って拓也を確実に隅に追い詰めていく。
「あ、それは大丈夫。あたし達、お互いにちゃんと報告すれば榎木君としてもいい、って決めたから」
「決めたから、って……僕の意見は……」
「ま、いいじゃない」
まるで答えになっていないことを言って、愛はポケットからスカーフを取り出した。
「ちょ、槍溝さん、何を……」
「あ、これ? 気にしないで。ちょっとした、おまじないみたいなものだから。そうだ、その前に」
「〜!!」
スカーフを持った手を空中で止めると、何の前触れも無く唇を触れさせる。
実の物にも似た、柔らかい唇の感触が目を見開いたままの拓也の動きを止めた。
「ん……」
すこし愛が顔を傾けると、髪の毛が拓也の頬に触れて、ほのかなシャンプーの香が漂ってくる。
「槍溝、さん……」
抗議しようとした拓也だったが、触覚と嗅覚とに妨げられて、
口から出てきたのは自分の物ではないような、かすれた頼り無い声だった。
「ごちそうさまでした」
愛が少し悪戯っぽく笑うと妙に大人びてみえて、拓也は思わず見とれてしまう。
「ごめんね、榎木君に見つめられていると、恥ずかしいから」
その視線を、軽く逸らして受け止めた愛はそう言うと、拓也の顔にスカーフを巻き付けた。
頭の後ろでごそごそという音が聞こえて、縛られてしまう。
目の前が真っ暗になってしまった拓也がこれからどうした物か考えていると、
微かな音が聞こえてきた。
それが衣服を脱いでいる音だと気がついた時、胸の鼓動が急速に高鳴るのを感じる。
「これで良し、と」
満足気に呟いた愛は、拓也の顔中にキスを始めた。
ついばむように、吸い上げるように、様々なキスを、試すように続ける。
「ぁ……ぅ……槍溝、さん……」
くすぐったさから逃れようと、拓也は愛の顔を手で払いのけようとするが、
軽く肩を押さえられただけで、どういう訳か力が入らなくなってしまう。
「じっとしてて」
なおもキスを止めない愛は、拓也の髪にそっと手を入れながら、耳たぶを甘噛みする。
「うぁ……ぁ、くすぐったい、よ……」
本当は、くすっぐったい、ではなく、別の言葉があるはずなのに、
それを口にしてしまったらいけない気がして、心に嘘をつく。
「ん……榎木君……」
愛は空いている方の手で上着のボタンを探り、
ひとつひとつ、拓也に今、何をしているのか教えるかのように時間をかけながら外していった。
一番下のボタンまで外し終えると、服の内側に手を滑りこませて、
わき腹から胸元へと撫で上げる。
細い指先が拓也の乳首を探り当てると、人差し指の先で軽く引っ掻いた。
「んっ、槍溝さん……止めて、よ……恥ずかしいよ」
「あら、男の子は女の子の胸をこういう風にするじゃない。女の子は良くて男の子はダメなの?」
「それは……そうだけど、だって、僕はそんなことしないもん……」
拓也の必死の頼みも、愛はいとも簡単にかわし、
真っ赤になっている耳から唇を離すと、首筋に舌を這わせながらもう片方の乳首を目指す。
まだ体毛も少なく、女の子のように滑らかな肌を充分に堪能すると、辿りついた乳首に吸いついた。
「んっ! ……ん、あ、はぁ、ぅぅ……」
焦らすような、それでいて執拗な愛撫に、拓也は声をあげてしまいそうになって、
必死に下唇を噛んだ。
何か喋ろうとする拓也の機先を制して、愛が囁く。
「榎木君……気持ちいい時は我慢しないで声出して良いのよ」
愛の掠れた声が理性を弾けさせようとするが、拓也は首を振ってなおも堪えようとする。
その表情を見ていた愛は、人差し指を口に当てて小首を傾げていたが、
ひとつ頷くと手早く衣服を脱ぎ始めた。
突然外部からの刺激が途絶えた拓也は、
大きく息をしながら愛が何をしようとしているのか気配を探るが、
もちろん何も見えるはずも無く、不安が走るだけだ。
愛は拓也の前に立膝で跨ると、後頭部を優しく掴んで引き寄せる。
突然の愛の動きに、何が起こったか混乱する拓也の口に硬くなり始めた乳首が押し込まれた。
同時に腕を取られ、愛の胸にあてがわれる。
「これで、おあいこでしょう。あ、歯は立てたらダメよ。すごく痛いんだから」
喋ろうとした所に機先を制されて思わず言う事を聞いてしまい、おとなしくなる拓也。
「そう……優しく、実君がママのおっぱいを吸うみたいに、吸って」
ママ、と聞いた拓也は一瞬身体を固くするが、
後頭部に添えられた愛の手と、手に触れている温かく柔らかい愛の胸の感触と、
唇に甦る原初の記憶が、溶け合いながら拓也の心を優しく満たしていく。
(マ、マ……)
無意識に呟くと、おずおずと愛の胸を吸い上げる。
「ん、榎木……君、そう、上手……っん、ん……」
すぐに拓也の口の動きにあわせて愛の声が短く途切れ出す。
「ね、こっち、も……」
「う、うん」
胸に置かれている手に自分の手を重ねると、愛は優しく促す。
愛に導かれるまま、拓也の手は胸をさまよい始める。
同学年の少女達の平均に較べて少しだけ大きい愛の胸は、
それでも、拓也の手の動きでわずかに形を変える程度だったが、
拓也は初めて触れる女性の柔らかな胸に興奮して夢中でまさぐる。
「っ、ぁ……いい、わ、……っん、そ、こ……」
愛は愛撫を覚え始めた拓也の手を拓也自身に任せ、空いた手でズボンのボタンを外す。
「ね、榎木君、ズボン……脱いで」
その言葉で夢中になっていた拓也は急に醒め、今まで触っていた胸から手を離した。
「は、恥ずかしいよ……」
「榎木君」
少しだけ目を細めて、低い声で愛が言う。
思わず返事をしてしまう拓也。
「な、なに」
「あなたは今、目隠しされてるわよね」
「う、うん」
「と言うことは、今、誰に見られているか解らない。つまり、恥ずかしがることなんて何もないのよ」
愛はめちゃくちゃな理屈で拓也をけむに巻く。
拓也も一瞬そうなのか、と思ってしまったほどだったが、頷きかけて慌てて口を尖らせる。
「そ、そんなこといった……うわ、ちょ、待ってったら槍溝さん!」
しかし、言うだけ言った愛は拓也が止める間も無くさっさと下着ごと脱がせてしまった。
既に充分に硬くなって、反りあがっている拓也の若い茎が露出する。
慌てて手で覆い隠すが、
「榎木君」
再び低くなる愛の声。
「は、はい」
「ここまで来たらもう諦めなさい。でないと、もっとひどいことするわよ」
もっとひどいって、今されているの以上にひどいことなんてあるのかな。
そう思ったが、結局手を掴まれて、そのまま屹立を愛の眼前に晒すしかなかった。
「これが、男の子の……」
初めての、しかも勃起している男性器を見てさすがの愛も言葉を失う。
それでもやはり好奇心が勝るのか、すぐに手を伸ばして指先で触れてみた。
瞬間、拓也の身体が跳ねる。
「う、ぁ……」
「熱い……それに、こんなに硬いなんて……」
「っあ、やり、みぞ、さん……」
興味深げにゆっくりと擦り出すと、すぐに拓也から声が漏れる。
気持ちよさそうに声を出す拓也に、愛はそっと手全体で握ってみた。
にちゃり、と粘液質な音がして、指に透明な液体がまとわりつく。
(あ、これ……本で読んだやつだわ。本当に出るのね)
妙な感触に手を引っ込めかけたが、
すぐに少女向けの雑誌で事前に仕入れていた知識と照らし合わせて答えを出すと、再び握り直す。
まだかろうじて愛の手の中に収まる大きさのそれは、愛が握ると更に大きさと硬さを増していった。
吸い寄せられるように顔を近づけて、舌先で触れてみる。
「んぁっ! ……槍溝さん、何……してるの?」
「何って……何かしら?」
愛はそれがフェラチオと言う行為なのは知っていたが、
さすがに口に出すのは恥ずかしく、拓也の問いをはぐらかした。
「それよりも、どう、気持ちいい?」
それ以上聞かれるのを避けようと、再び、今度はさっきよりも大きく舌を動かす。
「う、うん、すごく、……気持ちいい」
「そう、よかった。それじゃ、もう少し続けるわね」
愛は再び舌技を開始する。
愛の奉仕を受けた拓也は、徐々に自分の中から、しな子とした時の最後に感じた、
強烈な爆発感が立ち上って来るのを感じていた。
「や、槍溝さん、僕……何か……!」
それは一旦生じると、一気に拓也の身体から外に飛び出し、
愛が顔を引く間もなく白濁した液がかかってしまう。
「きゃっ……これ……精液、ってやつかしら……」
愛は鼻をつく匂いに顔をしかめながら、自分の頬にかかった拓也の精液を掬い取った。
(なんだか……ヘンな感じ……おしっこ出る所から、こんな、全然違う物が出るなんて)
それでも、何故だかあんまり汚い、とは思わなかった。
しかし拭かない訳にももちろんいかず、ポケットからティッシュを取り出すと丁寧に拭き取る。
粘り気があって上手いように拭けず、
何枚も使ってしまったがなんとか自分の顔を綺麗にすると、
余ったティッシュで拓也のペニスも拭き取り始めた。
一度放出を終えたそれは時折脈動して射精の余韻を残しながら、
少しずつ硬さを失い始めていた。
黙々と拭き取り続ける愛に気まずくなった拓也が声をかける。
「あ、あの……」
「榎木君」
タイミングを計ったかのように、拓也の言葉に被せる愛。
これが拓也が愛にペースを握られてしまう大きな原因になっているのだが、
拓也はまだそこまでは気付いていない。
「な、何?」
「続きは、いつする?」
「え、ええっ?」
「だって、結局まだ最後まではしてないじゃない。それに」
そこで一度言葉を切ると、少し怒ったような意地の悪い口調で続ける。
「男の子が先に出しちゃうのって、すごく失礼なのよ。おまけに顔にかけるし。
まだなんだか顔が突っ張った感じがして気持ち悪いわ」
「そ、そうなの……? ごめんなさい」
怒られているかのようにうなだれて、上目遣いで愛を見る拓也。
いけないことをしている、という罪悪感が、愛によってうまくごまかされ、結局謝ってしまう。
(……やっぱり可愛いな)
愛は思わず拓也を抱き締めそうになるが、寸前でこらえると怒っているふりを続けた。
「そう。だから、もう一回は言うこと聞いてもらわないとね」
「そ、そんな……」
「わかった?」
「あいっ」
自分が実を叱る時のような強い口調で言う愛に、思わず実のように返事をしてしまう拓也。
はっとして拓也は両手で口を塞ぐが、自分を見ている愛の眼差しに気付くと、
愛のペースからはこれからも逃れられそうに無いことを痛感せざるを得なかった。。
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