元男子校に女子ひとり 2


 風が夏の匂いになる頃、体育祭が行われます。
 小学校や中学校の運動会と違って、親は見に来ません。生徒だけで行われます。入学からすぐクラスごとでチーム編成が行われ、全校生徒がほぼ三等分されます。一年十組は青組でした。赤組、白組、青組で戦うのです。応援合戦だってします。
 準備は午後の授業が終わってから、最終下校時刻までの数時間を使って行われるので、毎日暗くなるまでみんな残っていました。
 応援に使う小道具を作るのも生徒の仕事です。
 私は女子だから、と、ビニール紐でポンポンを作ったり、クレープペーパーで花を作ったり、という軽作業ばかりを回してもらっていたのですが、それがあまりに楽な仕事なので心苦しい部分もありました。
「渡辺さん」
「はい?」
 振り向くと知らない男子が立っていました。上靴の色から察するに三年生のようです。
「ちょっと青組の執行部まで来てもらえるかな?」
「はい」
 私は手伝ってくれていた男子に、ちょっと行ってくるね、と声をかけて立ち上がりました。
 執行部というのは、体育祭の準備のためだけに動く、三年生有志だそうです。基本的に運動部のキャプテンや各クラスの学級委員で構成され、応援合戦の内容決定や準備作業の割り振りなどを指揮します。
「失礼します」
 執行部で使っている三年生の教室に入りました。
 むっとする男子の匂いはここでも籠もっています。学校中男子だらけなのでどこへ行ってもこの匂いです。
「ああ、渡辺さん」
 手招きをされました。
 三年生が五人。みんな、同じクラスの男子とは比べものになりません。クラスの人たちが男子なら、この人たちはもう男の人、です。体つきも顔つきも違います。
 私を呼びに来た人が私の真後ろに立つと、体操服のシャツをするすると持ち上げ始めました。
「きゃっ?」
 驚いて、ぴょんと飛び上がってしまった拍子に胸が揺れます。
 体育祭の準備中は全員体操服に着替えます。学年で短パンのカラーがわかれているし、シャツにはクラスと名前をはっきりと書いたゼッケンを付けているので指示が出しやすいのだそうです。そして制服が汚れない、という利点もあります。
 私は教室でみんなと一緒に着替えることにすっかり慣れてしまいました。みんなも慣れてしまったようで、私の着替えをいちいち手伝ってくれます。私はまるでお姫様扱いで、大勢の手で支えられているあいだにすっかり裸にされ、体操服を着せてもらうのです。
 今日もそうやって着替えたので、体操服の下は何も着ていません。
 ブラジャーを着けていない胸は私が動くたびにぶるんと揺れるし、シャツと擦れた乳首が硬く立ち上がってきます。そのむずがゆさで短パンの中もじっとりと蒸れてきます。
「あぁ…」
 シャツを引き抜かれるままに両手を持ち上げると、私を脱がせていた人はシャツを完全には抜かずに、そのままシャツで手首を縛ってしまいました。
「やあんっ」
 腰をくねらせると胸が左右に揺れます。縛り上げられた腕はぐっと持ち上げられてしまい、背伸びをしないと肩が痛くてたまりません。
「渡辺さん」
 真ん中に座って私を見ていた人が言いました。
「はい」
「全校生徒でたった一人の女子が、我が青組に所属しています。きみのことです」
「はい」
 返事をする間にも短パンが引き下ろされます。
「これを利用しない手はありません。俺たちは応援合戦の先頭にきみを立てたい」
「は?」
「今年の青組のテーマが船出なのは知っていますか?」
「はい」
 頷きながら返事をしました。
 今年の青組は船出というテーマを掲げています。青→海→船、という連想だそうです。応援合戦の際に披露する舞は、水兵さんのような白いセーラーを着るんだそうです。どこで調達してくるのかは知りません。
「そこで船の外観を模したものを作っているのですが、その船首像を渡辺さんにやっていただきたい」
「選手……像ですか?」
 船と選手がどう結びつくのかよくわかりません。
「現在船首部分のハリボテを作っていますが、渡辺さんの身体を支えられるかどうかの耐久テストなどをしたいので、今日からしばらくご協力いただきたいのですが」
 先輩に、こんなに丁寧に言われては一年生の私に断れるはずもありません。
 選手のハリボテ、というのがよくわかりませんが
「私にできることでしたら頑張ります」
と返事をしました。
「では」
「きゃあっ!?」
 後ろにもう一人いたようです。抱え上げられて、短パンを脱がされました。ショーツは着替えのときに脱がされていますから、簡単にみなさんの前に私の下半身が晒されます。
「あ、あの……」
 がたがたと机を動かして作った台の上に、足を開いて膝をつかされました。
「で、ここでまず支えるだろ?」
「うん。やっぱ衣装いるかな」
「衣装でカモフラして、身体を引っ張るほうが安全じゃないか? これだけだと前に倒れる」
「渡辺さん」
「は、はいっ」
 腕を縛っていたシャツをほどかれ、左右に広げて後ろに引っ張られました。
「この状態で、前に身体を倒してみて」
「はい」
 腕を持っていてくれるので安心なようです。ゆっくりと前に倒れていくと、胸を突きだしたようになり、しかも下に引っ張られて、なんだか変な気分になってきました。
「んん」
 思わず腰が揺れてしまいます。
 正面から見ていた人が
「これ、こうやって手を後ろに引っ張って固定してもいいかもよ」
と言い出しました。
「うーん。……渡辺さん、どう? 肩とか痛くない?」
「は、はい」
 それよりもじんわりと足の間が熱くなってきている方が気になります。
 十人くらいの三年生に囲まれて、裸で妙な格好になっていて、それをじっと見つめられて。
「…ふ」
 ふるっ、と身体が震えました。太ももの内側をぬるい液体が落ちていきます。
 入学してからずっと、クラスの男子みんなと仲良くするようになりました。体育祭の準備が始まってからは、毎日のように着替えさせてもらっています。そうするうちに私の身体はすっかりおかしくなってしまったようで、簡単にとろとろになっていきます。
「でもそれでハリボテが途中で壊れたらかっこわるいだろ」
「無理かなあ。いいと思ったんだけど」
「とりあえず、もう一つの持ってきて」
 なにやらあれこれと話し合われていますが、さっぱり状況が掴めません。私はそれどころではなかったのです。膝を開いているのが一番つらいです。腰をくねらせても肝心なところは擦れもせず、たらたらととめどなく、わずかにとろみのある液体が溢れていくだけなのです。
 胸の先端もかちかちになっていました。膝と腕だけで身体を支えているせいで小刻みに震えます。ぷるぷると揺れて、胸はなんだか冷たくなってきている気がするのに、顔だけが熱く火照って、閉じていた唇がだらしなく半開きになってしまいます。
「渡辺さん、こういうのは初めてかな?」
 返事をする間もなく、足の間に冷たくて硬いものが押しつけられました。
「え?」
 ぐちゅうっ
 卑猥な、粘った水音がして、ずるんとそれは私の中に入ってきました。
「あ、あ あぁ…っ」
 裸になって、見られていただけなのに、私のそこはすっかり潤んでいて押し込まれているものをぐいぐいと飲み込んでいきます。
「きつくない?」
「は……っ はい、大丈夫……です」
 満たされている感じに、頭の中が白くなっていきます。塞がれているはずなのに、どんどん淫液が足を伝います。
「手、離すからしっかり自分で咥えててね」
「え?」
 足の間にあった誰かの手が無くなると、ずろん、とそれが下に落ちていきそうになりました。
「あ、あっ! やあ!」
 慌ててきゅっとお尻に力を入れます。
「ぬ、抜けちゃう…っ」
「だから言ったのに」
 ぐい、と押し上げられます。
「ぅああんっ!」
 ぞくぞくっ、と背中をさざ波のようなものが走ります。
「こ、れ… なんですか…?」
「大人のおもちゃ。まだ準備段階だからここまで。お楽しみは当日」
「これさ、やっぱ衣装着けたらだめだろ。腕と膝とここと……。あとどこで支えたら不自然じゃなくできるかな」
「腹? でもそうすると衣装っぽいものがいるよな」
「これは絶対隠すべきじゃないって」
 かわされる言葉は耳を通り抜けるだけでした。私は、挿れられているおもちゃを柔襞で締め上げては緩めていました。
 体育祭の準備のために真剣に話し合っている三年の先輩方の真ん中で、私は、いけないことにふけっていたのです。

 体育祭当日はとても気持ちよく晴れました。青い空に真っ白な雲が浮かんでいます。一日中、日陰のない運動場にいることになるので、快晴よりもありがたいです。
 母の作ってくれたお弁当を持って、日焼け止めも持って、出かけました。
 教室で、いつものようにみんなに着替えさせてもらいます。
 青組なのでみんなスカイブルーのはちまきをします。
 観客のいない体育祭は地味だろうと思っていたのですが、大きな間違いでした。
 競技のたびに自分たちの組を応援する野太い声が、校舎を揺らすかと思うほど響きます。
 元男子校のせいでしょうか。暑くなったから、とあちこちで無造作にシャツを脱ぎ捨てる男子が続出します。
 目のやり場に困ってしまいました。
 同じクラスの男子の裸も、着替えのときにしか見たことがありません。仲良くしているときは、私は脱いでいるのですが、男子はパンツを下ろすだけなのです。
「渡辺さん」
 不意に声をかけられました。
「はい?」
 振り向くと見知った顔でした。
「あ、執行部の」
「暑いからって、みんなみたいに脱がないでね。応援合戦のインパクトが減っちゃうから」
「あ、ああ。はい」
 それ以前に女子は暑くても脱ぎません。

 昼食後すぐ、応援合戦です。赤、白、青の順に披露します。
 最初もドキドキするでしょうが、最後というのもドキドキします。
 選手、と思っていたのが、船首、と知ったのは数日前でした。船のへさきのことだよ、こういうの見たことない? と船の写真を見せてもらいました。
 船の先に付いている女神像の役をするのです。
 それと一緒にハリボテも見せてもらいました。
 くっついているように見せるために穴を開けてそこに腕と足を入れるのですが、試してみたところそれではハリボテが壊れそうだったので、急遽中に人が入ることになってしまいました。ハリボテの内側から引っ張ってもらって身体を支えるのです。
 船首の真ん中あたりにも穴が開いています。そこも私の身体を支えるのに必要なんだそうです。
「お疲れ様です」
 午後の部が始まる十分前、応援合戦用に割り振られた運動場の片隅のテントへ入っていきました。
「ああ、お疲れ様。まだ早いから赤組の応援合戦くらいまでは見ててもいいよ」
 他のチームの応援合戦も見たかったので、私はいそいそとテントの外に出ました。
 応援席に座った全校生徒のざわめきが、ドン、という太鼓の音で一斉に消えてしまいました。
 ぴんと張りつめた空気で耳が痛く鳴りかけた頃、二度目の、ドン、という音がし、真ん中に立っている応援団長の、聞き取れない台詞が風に乗って届いてきました。
 ちらちらと見える、翻る応援旗。
 中学校とは違います。なんだかドキドキしてきて、きっととてもかっこいいんだろう、もっと近くで見てみたい、と足を踏み出したとき、テントの中から呼ばれました。
「渡辺さん、スタンバイするから脱いで」
「はい!」
 披露時間、というのでしょうか。持ち時間は八分。今からセッティングをしてギリギリです。
 私はシャツをまくりあげながらテントの中へ入りました。

 台車に乗せたハリボテの船首が運動場に引き出されると、
「ああ、卑怯くせぇ」
という声があちこちで上がりました。
 全校生徒に見つめられ、私はいっきに身体が熱くなりました。
 私は一糸まとわぬ姿で、はりつけになっています。大きく広げた両手と膝から下は、ハリボテに開けられた穴から中へ入れていて、ハリボテの中では私が落っこちないように二人がかりで引っ張ってくれています。
 そして私の股の間のあたりに開いている穴からは例の大人のおもちゃが突き出されています。
「女子使われちゃ、青組に勝ちを持ってかれるわ」
 溜息まで聞こえてきます。
 ドン、という太鼓の音で私語は無くなりましたが、空気を震わせたその音は剥き出しの胸に響きました。
「んあ……」
 ひくん、と腰が動きます。ざりっ、とお尻がハリボテを擦ります。
「はぁ…っ、 はあ、はあ…」
 すでに息が上がっています。八分、もつでしょうか。
 二度目の太鼓の音に、乳首がビリビリしました。
「ああ…っん!」
 くちゅ、と音をさせて蜜壷に大人のおもちゃが押し当てられます。
「はぅう…」
「渡辺さん、いくよ」
 ハリボテの中から声がしました。それと同時にぐっと入ってくるシリコン製の長くて硬い、気持ちのいいもの。
「っああああぁぁん! や、あん!」
 ぐぐぐ、と入ってくるそれは、男子のそれと違ってとても冷たいのですが、何度かリハーサルを繰り返す内に私はその冷たさを悦ぶようになってしまいました。
 ひとしきり入れたままにしておくと、じんわりと芯から温かくなってくるのです。
「あ…はぁ…っ」
 禁止されているはずの私語が、ひそひそと聞こえてきます。
「すっげ。あんな太いのがずっぽり」
「あれ、愛液か? 太ももまでびちょびちょじゃん。あ、地面に垂れてる」
 ああ、そんなに。
 恥ずかしさで私は首を振りましたが、その動きで胸もぶるんと横に揺れました。
「今のところ、同じクラスのやつと教科担任しか手を出しちゃいけないんだろ?」
「もうちょっと規制緩めてもらえないかな」
 そんなルールがあったとは知りませんでした。
 だから執行部の人たちは私に一度も……。
「っあああ!?」
 ブーンとモーター音がお腹の中に響きました。
「あ、ああぅ! やあん! や、やああ!」
 ウィーン、と音をさせながら、膣内が掻き回されます。
「なに!? や、あっ これ、なに!?」
 ありえない動きに私は必死で身体を捩りました。
 クラスの男子のアレや、先生方のアレは奥の方まで突き上げてくれることはありますが、こんな動き方はしません。
 鎌首を上げたヘビが私の淫穴の中でぐるぐると回転しているような感じです。
「ぅああ…っ あ、あああ あは…ぁっ!」
 ウィンウィンと音をさせてリズミカルに回転しながら、それは私の中の形を変えてしまいます。もっといやらしく、もっと太くて大きなものでも入ってしまうように、形も柔らかさも変えてしまいます。
「ああん、ぃやあ…っ、 こ、れだめぇ…っ」
 気持ちよくておかしくなりそうです。
 ありえない動きだからこそ、今まで知らなかった感じに襲われます。
 肉を抉られているような恐ろしさと、モーターの小刻みな振動が、私の身体の中心を痺れさせていきます。
 もう周りの音も聞こえません。
「ひゃあ…っう! うあ、ああぁ あはぁっ! あ、あ」
 ざらつくハリボテにお尻をなすりつけ、激しく腰を上下させて、快感を貪ります。ありきたりな言い方ですが、そのときの私は完全にその大人のおもちゃに屈服して、貪っていました。
 急に動きが激しくなります。中で私を支えてくれている人がおもちゃを上下させ始めました。
「っきゃあああああ! あ、あああ…くあ、あ!」
 奥だけをごりごりと掻き混ぜられていたのですが、その動きでおもちゃは回りながら私のいやらしい穴を全体的に拡げていきます。奥も真ん中も入り口の近くまで。
「あ、あ…っ」
 こんなのは初めてです。
 苦しくて苦しくて仕方がないのに、気持ちよくて、頭の中が真っ白になるのにピリピリして、正反対どうしの組み合わせがいくつもいくつも私の中にあってそれがけんかをしているように感じます。
「やああ…っ! や、だめ、だめぇっ でちゃう  っで、でちゃうぅぅ!」
 ぎゅうう、と女性器一帯を締め上げるような感覚にうろたえました。
 疼痛感まであります。
 大変です。
 お昼ご飯の後ちゃんとトイレに行ったのに。
「いやああああ!」
 ぶしゅぶしゅ、と淫らな音がして、広げているはずの内股にびっしょりと熱い液体がかかりました。
「演技時間終了。お疲れ様」
 遠く聞こえる声と共におもちゃは動きを止め、じゅぼっ、と引き抜かれました。
 おもちゃが栓の役割をしていたのでしょうか。
 蜜壷にいっぱい溜まっていた愛液がまた吹きこぼれました。
ざわざわと興奮が伝わってきます。
「すげー。水たまりになってる」
 全身に全校生徒の視線を感じて、私は気を失いそうなほど気持ちよくて、ハリボテが控え場所に戻ってからもしばらく動けませんでした。

 体育祭はとても疲れましたが、私はうきうきしながら帰宅の途につきました。
 総合優勝こそ逃しましたが青組は応援合戦で最高得点を取ったのです。私の『潮吹き』が満点の理由だったそうです。
 執行部のみなさんからもお礼を言われました。
「最後の学年で満足のいく仕事ができた」
ととても喜んでくださいました。
 そしてお礼を兼ねて記念に、とあの大人のおもちゃをプレゼントしてもらったのです。
 バイブレーター、と名前も教えてもらいました。携帯と一緒ですね、と言うと笑われましたが、お手入れの方法なども教えてもらいました。
 今夜からがとっても楽しみです。

2009年4月19日