その前の日、アリスはこういうメールを灯里と藍華から受け取った。
『……なのね? だからアリスちゃんもきなさいよ?』
『きっと愉しいよーー灯里』
「…………でっかい、おもしろい」
ミドルスクールの、とある課目の講義室の中で、アリスは窓辺に近い所に座って物思いに耽っていた。
確かに、面白いかも知れない、藍華先輩はともかく、灯里先輩の笑顔は好き…だから…。
「はっ…!?」
午後の昼下がり、アリスの眠たげな瞼には、可愛く笑う灯里の表情が浮かんでいた。
「いってみようかな……」
アリスは窓枠から入り込む涼やかな風に身を任せながら「いきます」と、そのメールに返信すると、ぱたんとノート型携帯端末を閉め、その視線を教壇の上から去っていく女講師の姿を、暖かみに満ちた瞳で追いながら立ち上がった。
「なんだか、でっかい楽しみです」
普段余り喋らず、そして笑わない彼女がふと微笑みながら呟いた言葉に、すこし離れた所に座って講義を受けていた彼女の同期生はちょっと驚いていた。
だが、アリスは彼女らしい無関心さが災いしたか、それに気づく事はなかった。
「今日も練習です」
アリスは、スカートを靡かせながら講義室を後にした。
「やんややんや」
灯里と藍華が騒いでいる。
騒いでいる訳は、彼女らに酒が入っているから……。
…と言う事は分かっているが、そもそも彼女らは未成年では??
それよりも何故、旧時代の畳部屋?しかも変な服?
確か灯里先輩が言うには、浴衣とか言う物らしいですけど。
これって巻いている布みたいなもの一本緩めたら、もう裸なのでは?
いや、灯里先輩も、藍華先輩も既にその布みたいなもので縛った所が緩んでこの変な服の裾がはだけてます。
むしろ藍華先輩 「でっかい胸」全開です。
灯里先輩もなんだかおかしいです。
そうです、これは夢です……何かの「でっかい 間違いです」
アリスは必死に自分に、そう言い聞かせていた。
その為にジュースとミネラルウォーターをぐびぐび飲んでいた。
しかし、今アリスの眼前に広がる情景は何かがかなりズレていた。
三大妖精の一人と数えられる晃。
その凛々しくそして女性にしては逞しい身体を持つ彼女は今、アリスのちょっと離れた台の上に裸で寝そべっていた。
そしてその横で、すっかり出来上がった藍華と灯里が晃さんの白く艶やかな肌の上に並べられたなにか…そう食べ物らしき物を箸で摘んで、盛んに気勢を上げていた。
「でっかい不条理です」
アリスは俯いたままちびちびとコップに注がれたジュースを口に運ぶ。
顔は上げたくなかった、上げると吸い込まれそうだったから。
とにかく今は、何れ来るであろうアテナ師匠をアテにして…出来たらアテにしたいけど。
そんなアリスを尻目に、藍華と灯里の二人は、眼前に広がる、晃さん女体盛りを、箸でつつき合っていた。
かなり離れた所には、小さな取り皿の上に置いた箸を、じっと見つめたまま動かない…たまにコップのジュースを飲んでいるみたいだけど…そのアリスが頬を真っ赤に染めて座っていた。
「男が出るの、禁止!」
藍華が叫ぶ。
「そろそろめいんでぃっしゅー欲しいぃー」
酔っぱらった灯里も叫ぶ。
「灯里ぃぃ、好き嫌い禁止ぃぃー」
酔っぱらった藍華が、晃の敏感な谷間と、その廻りにこんもりと黒い草が生い茂った丘に、覆うように添えてある白身の刺身を定まらない手付きで、つつきながら叫ぶ。
こんな藍華では、その箸先が逸れまくるのも当たり前、灯里の方にちょっと顔を向き直した藍華の箸先は、思いっきり峡谷の上流付近に逸れ、晃の一番敏感な部分を擦った。
「あぁッッ!! んんっっ―――! いやゃ!? ひゃいかぁぁ! ひゃめ!」
既に周辺の黒い草はじっとりと夜露に濡れ、その深い峡谷からは滝のように清水が溢れ出し、それを十分に吸い、程良く熟していた晃の果実はそれを包む表皮を捲りあげその果肉を露わにしていた。
そこを漆塗りで滑りがほどよい箸で擦られたのだから、晃は堪らず、艶やかな唇を歪ませよがり声をあげた。
しかしそれでも、彼女らの暴走は止まらない。 そんな中、灯里の言うメインディッシュが狂乱の宴の座敷に運ばれてきた。
「アリシアさんーーご登場!! ぱちぱちぱち」
灯里は、だらしなく纏っていた浴衣の裾を広げ、その華奢で長い足を放りだし大喜びした。
当の、アリシアは、Uの字に反った台の上の端に手足を縛られ、その美しい身体はエビのように反り返った状態で運ばれてきた。
そして、その白い肌の上には、色とりどりの料理が盛られていた。
ちなみに、Uの字に反った台は、アリシアの豊満な尻の部分だけ綺麗にくり抜かれており、そこからでも中を……、要するに、その尻を鑑賞出来る仕組みになっていた。
そこからアリシアの秘裂を覗き込むと、そこには甘たるいチョコクリームやフルーツゼリーを、
たっぷり絡め付けられた、長く太いバナナが二本刺さっていた。
……正しくは三本かも知れない、アリシアの膣口には二本、そして菊門にも一本刺さっていたからだ。
その三本の果実は、くり抜かれた薄暗い空間の中で、絡め付けられたクリームやゼリーの汁を滴らせながら歪に小さく揺れ震えていた。
「うわぁ……アリシアさんすごいですぅー」
我慢出来ない灯里は、藍華の制止も訊かず、台に備えられた奇怪なくり抜きの奥へ顔を突っ込むと、その情景を舐めるように視姦しつつ、細い指先で長く太い果実を覆っている、ジャムやクリームの固まりをこそぎ取り、その固まりを口に入れる。
「あーん、おいしい!」
「わたしチョコバナナって子どもの頃から大好きだったんですぅ」
灯里はそう喋ると、そんなに好きな果物の為か、アリシアの秘裂に刺さっている果実その物に唇を寄せ、赤く艶めかしい舌を巧みに伸ばして、その廻りの甘いモノを舐め上げていった。
「むぐっ………ん、んんーーーっ! 」
アリシアは身体中に盛られた食材の冷たさと生暖かさ、そしてその重さと、膣と菊門に感じる形容しがたい感覚に身体全体が痺れ、半ば放心状態になっており、その青い瞳は虚ろに宙を舞っていた。
更に、口には、オレンジのツブを大量に詰められたボールギャグが噛まされ、為に歪に緩んだ口元からは、果実から漏れだした果汁か、それとも彼女の涎か良く分らない、ねっとりとした汁が零れ出していた。
「晃さんとアリシアさんー綺麗ー可愛いぃぃーーっっ!」
いつの間にか、灯里はアリシアの頭の部分へと廻っていた。
そして、ボールギャグに詰められたオレンジの果実を見るや否やこれにむしゃぶりつくと、その中身を舌で探りつつ吸い上げた。
灯里に、なすがまま、嬲られるがままのアリシアを見て晃のとなりに座っていた藍華が、嫉妬まみれの声を上げた。
「ダメぇぇーーアリシアさんは、あたしが食べるーー! 灯里! アリシアさん禁止っぃい!!」
そう叫ぶ藍華の箸の先は、晃の大きく桃色掛かった乳輪の中心で、瑞々しく実った苺と見まごう乳頭を無慈悲に摘み上げ、ぐいぐい引っ張っていた。
「あぁんっ! ひゃめな! ひぃたぃっっ!! ひゃめてぇ! あいか!?」
こんな小娘に…私ご自慢の娘に、下の果実ならず、上に実った果実まで玩ばれる……どうして?
何れは私が藍華の三つの果実を熟させて、共におんなの悦びを分かち合いたかったのに…どうして。
晃は、己に実る三つの果実を無造作に貪られる快感で思考が纏まらなかった。
そして、その刺激で何度も昇天した自分が恥ずかしかった。
もうろうとする意識の中で晃は、二、三度、その峡谷から清水が、滔々と流れ出す感覚を覚えていた。
そして、身体全体を震わせ、その悦びに震えていた事も。
『そんな…あたし…藍華に嬲られるの…のぞんで…いた…の?』
晃の切れ長の目の先から大きな涙粒が零れ落ちる。
…そんなはずはない、私は姫屋のわがまま一人娘を、一人前のウンディーネにするために、藍華に厳しくしてきた。
でも、今この状態って何? 厳し…激しいのは藍華じゃないのか。
そう…この娘は……ああぁぁ―――!?
晃の思考は、そこで突然途切れ真っ白になった。
「あぁぁあッ! んっ……あぁ…んッ…」
藍華と灯里が、晃の豊満な乳房の頂上にそそり立つ二つの苺を、その艶やかな唇で包み込んだと思うと、思い切り乳輪の膨らみごと銜え込み、同時に、その細く長い舌で嬲り始めた為だ。
「あ…藍華…やぁぁ…いやだぁ…」
とろんとした瞳で、自分の乳房にしゃぶり付いている小娘二人を見ていた晃は、上目使いで自分を見上げる藍華と灯里に、抗しようのない悦楽の中でこう呟いた。
「ねっ? 藍華…もっと……きもちよ…くっっね…灯里もおねがい……」
藍華と灯里は、その言葉を聞くと、互いに目を見合わせながら頷き微笑んだ。 そして、むしゃぶりついていた乳房から口を離すと、まだ肌の上に残っている食材を振り落としながら晃の頭の所まで身体を舌で這わせ舐め上げていった。
いつの間にか晃の右の耳に藍華、左の耳に灯里が寄り添っていた。
そして二人は、もう玩具同然の晃の耳にこう囁いた……。
「晃お姉さま…一緒にアリシアさん? 愉しみましょう? ね?」
それを聞いた晃の虚ろな瞳が鈍く光ったのを、藍華は見逃さなかった。
「灯里! そろそろ…はじめよっかっ!」
灯里も晃の顔越しに答える。
「そうだね! メインディッシュは、『一緒に』だよねー」
灯里は、くいと顔を、虚ろな瞳のまま仰け反っているアリシアの方へ向けて続けた。
「だって、みんなアリシアさんラブだもんね…」
「晃ちゃんも藍華ちゃんも…そして私も…」
……………
「でっかい、不思議光景です」
アリスは心の中で、何度も呪文のように呟いていた…。
「おかしいです…確かあたしを歓迎するって事で呼ばれたはずですが」
しかし、アリスの目線の先に見える光景は、何かが違っていた。
既に、晃と藍華と灯里は、晃を中心に絡み合い、アリシアは件の台の上で大量の食材を盛られたまま仰け反って放置されている状態だ。
こないだ行った島で、アリスが藍華からひんしゅくを買った言葉。
男なら「血湧き肉躍る展開です」と言う形容がぴったりだった。
「(こうなるとアテナ先輩だけが頼りです!)」
アリスはそう思った。
…が、すぐにしゅんとなった。
「(何かと物事に対して鷹揚と言うか、気が付かない…いやわたしが言うのもなんですがドジな先輩のアテナさんでは返り討ちに遭うのが目に見えてます。アテナさんまで、この『でっかい 変態魔女共』に喰われたら大変です)」
「ここは、わたしがしっかりしなければ…しなければ…」
アリスは、そう呟いたが、先輩ウンディーネの痴態振りや、異常な場の空気に押され、俯いたまま小刻みに震えるのが関の山だった。
そして、何とか落ち着こうと…いや”せめて自分の貞操は守ろう”と、ジュースとミネラルウオーターを、宴の開始からがぶがぶと飲んでいた。
そして、アリスは「でっかい レズ女達」の先に見える滑り戸から何時でも外へ逃げ出せる様、ちゃっかり準備だけはしていた。
だが、上手く抜け出す隙はなかなか見つからなかった。
仕方が無くアリスはこう自分に言い聞かせた。
「今、ここに私は居ない そう言うフリをした方が賢明です。そう! これは『でっかい試練』です。アテナさん わたしを守ってください」
もはやアリスも、まともな思考が纏まらなくなっていた。
このときアリスは未だ、自分がこの狂宴最後の、ラストメニューに添えられる者に既に指定されている事など、このときまだ知る由もなかった……
何故知る由もなかったか知る由もない。
(完)