って、せっかく姫屋の晃様が、じきじきに足を運んでやったのに、アリシアも灯里も留守じゃないか。
すわっ! 二人とも、なってないっ!
ま、しかたないな。あとでもう一回来て見るか。
あれ?あそこで足掻いてるのは、アリア社長か?
胴回り考えずに、あんな狭い所にもぐるから、つっかえてるじゃん。
「ぷいにゅーーっ!」
分った、分った。引っ張ってやるから、痛くても我慢しろよ。
「ぷ、ぷ、ぷいいいぃぃぃぃーーー!」
だめだぁ、頭から引いても、足から引っ張っても、抜けん。
おっ、発想の転換!後ろに回りこんで、こうやって足を使って押し出してやると・・・、お、いい感じ、いい感じ。
「ぷいにゅぅ……」
社長は抜けたな。そしたら、このまんま、自分も通り抜けたら……
と、あ、あれ?目が回って、気が遠く な る
「あ!アリシアさん、あんなところに人が倒れてますっ!」
「あらあら、まぁ、晃ちゃんにそっくり。ご兄弟かしら」
「とにかく、お店の中に運びましょう」
「晃ちゃんにも連絡を取ってみましょう」
「あらあら、晃ちゃんとは連絡が取れないの?」
「はい。今日はオフだから、ARIAカンパニーの偵察に行くって、うきうきと出かけたっきりなんです」
「晃先輩にでっかいそっくりです……」
「でも、兄弟が居るなんて、聞いたこともないわねぇ」
「摩訶不思議」
「う……うーん」
「あ、気がついた」
気がつくと、俺はARIAカンパニーの店内に運び込まれていた。
ベッドに寝かされているって事は、灯里の屋根裏部屋か?
「気がつきましたか?」
「んん、あ、あれ? アリシアのお姉さん、ですか?」
俺を覗き込んでるのは、幼馴染のアリシアにそっくりな女性だった。
改めて、まわりの人々を見てみると、藍華と、灯里に、アリスも、みんな女になってやがる!
軽くパニクってる俺に、すっとティーカップが差し出された。
「はい、ホットミルクです」
「あ、ありがとう」
差し出してくれたのは、女性化アテナだった。
うわ、こいつ女になっても、マイペースの気配りさんだよ。
しばらく、語り合った末に、どうやら、性別があべこべのパラレルワールドに迷い込んだらしい、って結論に達した。
って、そんな無茶な。
「この間、大福もちとアランチーニを一緒に食べた」
いきなり、女性化アテナが言った。
確かに数日前、久しぶりに、アリシアとアテナと一緒に昼飯を食べる機会があって、そうゆう組み合わせで食べた憶えがある。
この世界の、女の俺も、そうゆう食事を摂ったのだろう。
「あのぉ、それが、何か?」
気弱に尋ねる俺に、女性化アテナは言い切った。
「食べ合わせ」
「はぁ?」
「食べ合わせで、パラレルワールドに飛びやすくなる」
あー、アテナって女になっても、素っ頓狂な奴だぁ。
こっちのみんなも、慣れているのか、誰も聞いちゃいねぇ。
そんなこんなを話していると、結構遅い時間になってしまった。
「すんごいお騒がせしたけど、俺、とりあえず姫屋に戻るから」
と、言った途端に、女性化藍華が両手でバツ印を作った。
「男子宿泊禁止っ!」
あ、そうか、こっちの水先案内人は、みんな女なんだ。
アテナとアリスも、首を横に振りながら顔を見合わせている。
「じゃ、とりあえずどっか宿屋に泊まるから」
「性別以外に、何か違ってることがあったら、困るんじゃない?」
「でも、ここに泊まるわけにもいかないし」
「あら、ここに泊まってもいいわよ」
ああだこうだとやっていると、アリシアがさらっと言った。
「いくら晃ちゃんでも、この状態で、会社に一人で居てもらう訳にはいかないから、私もここに泊まるわ。灯里ちゃんには、アリア社長と一緒に、私のお家で寝てもらって」
いやぁ、女になっても、アリシアはアリシアだなぁ。
てきぱきと段取りを組んで、みんな各々に戻っていった。
「あらあら、お客様を、ソファで眠らせる訳にはいかないわ。灯里ちゃんもベッド使ってもらっていいって、言ってくれたのに」
「ベッドはアリシアが使ってよ。俺はソファでも床の上でも、構わないからさ」
寝ようって時に、寝場所のことで、軽く押し問答になった。
「んー、それじゃあ、寝場所はお風呂の後で決めましょう」
風呂は、アリシアが先に使う事になった。
どうせ、後から俺が風呂を使ってる隙に、ソファを占領する積もりなのだろうけどな。
案の定、俺が風呂から上がると、アリシアはソファの上で横になっていた。
「分ってくれよぉ。女の家に押しかけて、女をソファに寝かせて、自分がベッドで眠れるわけないじゃん」
アリシアは、微笑むのを我慢しながら、狸寝入りを決め込んでいる。
すわっ! かくなる上は実力行使!
アリシアの身体の下に、両手を差し入れてお姫様抱っこして、「あらあら」とか言ってるのを無視して、ベッドの上まで運んだ。
だけど、アリシアを抱き上げた瞬間に、俺は後悔する事になった。
顔がアリシアそっくりだから、抱き上げたって欲情なんかしないって思ってたんだ。
とゆうよりは、そうゆう気持ちになるなんて、想像もしてなかった。
だけど、抱き上げたアリシアの身体は、柔らかな女性の身体だった。
ベッドまでたどり着いた時には、もう気持ちがのぼせ上がって、顔が赤くなってるのが、自分で分るほどだった。
ベッドの上に横たえたアリシアの顔を、じっと見つめた。
黙ったまま、アリシアも、俺の事を見返してくる。
我慢しきれなくなって、顔を寄せる。
気持ちの赴くままに、唇を合わせてしまった。
てゆーか、何をやってる? 自分。
いくら女でも、相手はアリシアなんだぞ。
いや、いくらアリシアでも、相手は女なんだと、考えるべきなんだろうか?
だいたい、なんでこいつは、女になってもこんなに美人なんだ?
頭の中でこんな事を思っている隙に、口付けを拒まれなかった事に味をしめて、俺の手は彼女の身体をまさぐろうとしていた。
あ、こら!止めろよ、俺!
その時、アリシアは、俺の胸に手のひらを当て、すっと腕を伸ばしてきた。
おだやかな、でも、明確な拒絶の動作。
それで、頭に血が上っていた俺も、少しクールダウンした。
自分がしようとしていた事が、急に恥ずかしくなって、詫びようとした俺をさえぎって、彼女は言った。
「このベッドは、今では灯里ちゃんのものだから。ね」
彼女は、軽やかな動作でベッドを降りると、ソファのタオルケットを床に広げた。
彼女の動作の意味に気がつくと、俺は部屋の明かりを落とし、広げたタオルケットの傍らに佇むアリシアに寄り添った。
黙ったまま見つめ合い、かるく抱き合ってキスした後、アリシアの身体をタオルケットの上に横たえた。
俺は、おたおたと自分が着ている借り物のパジャマを脱いだ。
ってゆうか、右前と左前がちがうだけで、なんでこんなに、ボタン外すのが面倒くさくなるんだ?
そして、とてもデリケートな貴重品の包装を取り去るようにして、アリシアの寝巻きを脱がせる。
と、星明りの下で、輝くような裸身があらわになった。吸い寄せられるようにして、胸に顔を埋める。
「ん、んんっ……」
舌先で、乳首を転がすと、アリシアが切なげな声を上げた。
左右の乳首を、口と手で交互にせめた。
はしたない声をあげまいと、苦しげに首を左右に振るアリシアに、ちょっと歪んだ満足を感じながら、そっとショーツに手を掛けた。
確認するように、アリシアの表情をうかがう。
目を合わせた彼女は、軽くうなずいて、心もち腰を上げた。
俺は、静かにショーツを下ろした。
彼女の髪と同じ色の、淡い茂みが股間を隠していた。
誘われるようにして、思わず手をあてがう。
「あんっ、ん、んふっ」
いつの間にか、両手で自分の顔を覆っていたアリシアが、堪えきれない様子で、声を上げる。
もっとアリシアを感じさせたくなって、指先を足の間に進めた。
暖かい湿り気を帯びたそこを、指の腹でこすりながら、再び彼女の乳房に舌を這わせた。
乱れそうになるのを、必死で抑えているアリシアを感じながら、指先を彼女の奥底に差し入れてみた。
「痛っ!」
アリシアが小声で叫んだ。あ、これって、初めてなのかも。
「アリシア?」
「うん、ごめん、大丈夫だから」
小声で呼びかけたら、顔を塞いだ両手の間から、声を返してくれた。
でも、このままじゃ、痛いだけだよな。
俺は、頭の位置を下ろして、彼女の股間に顔を埋めた。
これから、どうなるのかを悟ったアリシアは、あわてて両手で俺の頭を抑えようとした。
「あの、晃ちゃん、だめよ、そこは、お願いっ」
「大丈夫だよ。俺に任せて、力抜いて」
ちょっと強引に、彼女の中心に舌を這わせる。
「んんっ!」
彼女の抵抗が、形ばかりのものになった。
俺は、舌先に唾液を絡めて、彼女の入り口を充分に湿らせていった。
アリシアの香りに耐え切れなくなった俺は、身体を起こして彼女の入り口に、自分自身をあてがった。
アリシアも、力を抜いて、俺を受け入れる体勢になっていた。
すこしきつく、締め付けてくる暖かな感触に耐えながら、自分自身をおし進める。
アリシアは、自分の手に軽く歯を当てて、声を出すのを耐えていた。
そっ、と彼女の口元から手を外させる。
「アリシア」
心細そうな表情で、俺の顔を見つめる彼女の、名前を呼んだ。
「晃ちゃんっ!」
彼女は俺の名を呼び返すと、しがみつくように抱きしめてきた。
そのまま、俺たちは気持ちが求め合うままに、身体を動かした。
やがて、登り詰めて、全てが真っ白に感じられる瞬間を迎えた。
そして、その直後、目が回る感じがした。
あれ、この感じ、最近体験した事 が ある かな
気がつくと、目の前にアリシアの顔があった。
あれ?アリシアの髪がさっきより長いかな?
私が気付くと同時に、アリシアも目覚めたようだ。
あ、あれ?どうしよう?
女の子同士で、しかも裸で、抱き合ってるよ、私たち!
意識がはっきりした途端、お互いにパッと距離をとった。
「あ、あの、お、お帰りなさい」
「え、えと、た、ただいま」
「シ、シャワーでも、使う、かな?」
「う、うん。悪いけど、先に使わしてもらうね」
アリシアの顔、真っ赤だけど、たぶん私も真っ赤だろうな。
二人とも、シャワーを浴びて、衣服を整えて、窓を開いて部屋の空気を入れ替えたら、やっと人心地がついてきた。
でもお互いに、昨夜何があったのか言わない。
ちょっと気まずい沈黙が、部屋の中に流れた。
「うふふっ」
いきなり、アリシアの奴が笑い声を漏らした。
「ど、どうしたんだよ、急に」
「あっちの晃ちゃんと私も、そろそろ目を覚ましたのかな」
「ぷっ」
笑い事じゃないけど、思わず想像して笑っちまった。
「うふふっ」
「あははっ」
灯里が出社してくるまでの間、アリシアと二人で、涙を流しながら、笑い転げていた。
数日後……。
「うわ!晃さん、大福もちとアランチーニですか?」
「でっかいアンバランスです」
「てゆうか、昨日も、それ食べてなかったですか?」
「すわっ!ウンディーネたるもの、人の昼飯に口出ししない!」
「は、はひ〜」
(完)