「・・・暁・・・さ・・・っ・・・」
オレ様は頬を赤く染めている灯里の額にキスをした。
そもそも何故こうなったのだろうか、とオレ様は考える。もとはといえばオレ様はアリシアさんが好きだったのだ。
あれは間違いなく一目ぼれというやつであり、彼女は聖母のようにオレ様の目に映ったのだ。
しかし、夜遅く疲れた体をベッドに横たえながら不意に思い出すのは、灯里のあの気の抜けるような笑顔であり、アリシアさんのものとは違ったのだ。
それはオレ様を混乱させ仕事にも支障が出るほどだった。
この最近の暑さ。
その暑さにじりじりと身の焼けるような思いをしながら久しぶりに下に降りると、幸か不幸か灯里と出合った。
そしてその暑さで汗を流す灯里。右手で汗を拭う灯里。
それは本人は意識していないことであろうがひどく欲情的だったのを思い出す。
そして今目の前に居る灯里。灯里の目を覗き込むとオレ様自身が映っていた。
オレ様の頬も熱く熱を帯びていて、多分オレ様の頬も灯里と同じように赤く染まっているのだろう。
オレ様は灯里のはだけた制服の隙間から、手を差し入れた。
肌と肌が触れ、そのぬくもりが伝わる。
つう、と背中を撫ぜると灯里の体が跳ねた。
「ひぁっ」
「・・・あ、あぁ、悪い」
その灯里の反応になんとなくオレ様は照れ、思わずそう謝ってしまった。
格好悪い。情けない。
しかし当の灯里はと言うと、恥ずかしそうに目を瞑り、頬を更に赤く染め首をぷるぷると横に振っていた。
「悪くなんか・・・ないです」
「・・・、おう」
照れながらも、俺のその行為を拒まない灯里のその言葉を耳にし、その表情を文字通り目の前で見つめたオレ様の声は、静かにこの部屋に響いた。
灯里の部屋だ。
多分まだこの部屋に男はオレ様以外誰も入っていないのかと思うと、不思議な気分だった。
この部屋、そしてこのアリアカンパニーにはオレ様たち以外誰もいない。あの猫さえも。
窓の外から波の音が聞こえた気がした。壁を背にして、灯里はオレ様だけを見ている。
そう思うと、独占欲が満たされていくのが分かった。
灯里の上の制服を丁寧に脱がせ、床に落とす。
ボタンを外し、露出させる。
白い清潔そうな下着が、目の前に晒された。
小さくフリルで飾られていたそれは、ただ純粋に灯里に似合っていると思った。
「・・・暁さん」
オレ様が胸を見ていることを気にしたのか、灯里が声をかけてきた。
膝を付いている所為で灯里を見上げる形になる。
オレ様の両手は灯里の制服の前を肌蹴させたままだった。
「なんだもみ子よ」
灯里の顔は相変わらず赤かった。気のせいかもしれないが、どこか思いつめたような顔をしていた。
「・・・っその・・・、アリシアさんみたいな、おっきい胸じゃなくてごめんなさい・・・」
間。
「・・・馬鹿か」
オレ様はようやくその言葉を口にした。
何故なら、なんと言っていいのか分からなかったからだ。
こいつは、オレ様がアリシアさんのかわりで自分を抱こうとしていると思ったのだろう。
当たり前だ、オレ様はアリシアさんが好きだったのだ。
そして灯里もオレ様はアリシアさんのことが好きなのだと思っていた。
自分がこの部屋にオレ様を招きいれたと言うのに、そこで悩んでいたのかと思うと、オレ様はぎゅっと唇を噛んだ。
「はひっ、ひどいですよー、真剣に言ったのに」
そうあくまで本気ではないような、軽口で灯里は言った。
しかしオレ様はその言葉の裏側に隠された意味を見逃さなかった。
「・・・おい、もみ子よ」
「・・・はい」
お前が泣きそうな顔をしているのも気のせいか。
オレ様は立ち上がり、灯里のもみあげを引っ張った。
灯里は驚いたような顔をした。
「オレ様が抱きたいのは灯里だ」
「あ・・・暁さん」
「好きなのも」
「・・・え、んぅっ」
それ以上灯里を喋らせないように、オレ様はキスをした。
右手て灯里の顎を持ち、口を開かせる。
歯列を下でなぞり、舌を絡めさせる。
「ん・・・ふぁ、あかつきさ・・・」
唾液の絡まる音を聞きながら、オレ様は灯里の顎に当てていた手を外し、胸を下着の上から撫でた。
もどかしくなり、下着をたくし上げる。
「・・・っ!」
灯里が息を呑むのが分かった。
キスを終えると、唾液がオレ様たちの間をつう、と伝わった。
灯里の瞳は潤んでいる。
先程のことから嫌ではないのだろうとオレ様は思い、灯里の胸をゆっくりと両手でもみ上げた。
指が胸の頂点へとかすめ、もどかしいのか灯里が身じろぎをした。
「ひぁ・・・っあ、ん、ん」
灯里が恥ずかしそうに口を紡ぐ。
「・・・こらえるな」
オレ様はそう言い、灯里の耳にキスをした。
そしてそのまま舐める。胸の頂点のつまみ、こねる。
「ひっ、あ、でも、恥ずかしい、です・・・っ」
「これからもっと恥ずかしいことをするのに、このくらいでどうするのだ」
胸をいじりつつオレ様は片手で灯里のスカートを掴み、引き上げた。
灯里の白い足があらわになる。灯里の足は微弱に震えていた。
ふとそこで、オレ様と灯里は立ちっぱなしであったことに気付く。
「もみ子」
「・・・っあ、なんでしょう」
胸から右手を離し、灯里の頬へと触れる。
「ベッドに行くか、そのままだとつらいだろう」
灯里は俺の言葉をぼーっとした顔で聞き、首を振った。
左手をオレ様の右手へと添える。灯里はゆっくりと口を開いた。
「このままで・・・いいです、それよりも、早く暁さんが欲しいです・・・」
純粋に、灯里からそう言われたことが嬉しかった。
オレ様はスカートを掴む手を離し、そのまま灯里を抱きしめる。
「・・・暁さん」
灯里の首筋に顔をうずめる。
「もみ子よ、恥ずかしいセリフは禁止だ」
空気で、灯里が微笑んだのが分かった。
「これからもっと恥ずかしいことをするって言ったのは、暁さんじゃないですか」
「・・・うるさい」
オレ様は灯里の首筋から鎖骨、胸へと下りていき、赤い痕を残していった。
胸をもみ上げ、胸の頂点を口に含み、舐る。
スカートをたくし上げ、灯里の足の間にオレ様の左足を割り込ませ、足を閉じさせないようにする。
これでもう灯里は足を閉じることが出来ない。
胸から口を離す。
「もみ子、スカートを持っていろ」
「・・・はぁっ、・・・はい」
灯里はオレ様から言われた通りに両手でスカートを巻き上げた。
胸を覆っていた下着と同じく、その下着も白かった。
胸を覆っていたそれは、もうすでに床の上へと落ちている。
太股の内側を、直に撫でた。肌触りがいい。
オレ様は屈み込み、灯里の内股へとキスをした。
灯里の体がぴくんと跳ねる。オレ様はその場所にも痕を残した。
「んっ・・・」
灯里に片足を上げさせ、下着をゆっくりと脱がせる。
灯里のそれがあらわになり、オレ様は足を開かせ、そこに顔をうずめる。
そこはもうすでに充分に湿っていて、オレ様はわざと音を立てるように舐めた。
ぴちゃぴちゃと水の跳ねる音がする。
「うあ、ぁ、はあ、ひあ、あ・・・!」
灯里の足はがくがくと震えていた。
オレ様はもうそろそろかと思い、指を一本、差し込む。
「んっ・・・!」
びくんと一瞬灯里の体が跳ねたが、特に抵抗も感じられなかったのでそのままゆっくりと指を動かし、差し込んだ指の本数を2本、3本と増やす。
「あ・・・暁さん、もう・・・」
「・・・分かった。」
オレ様はポケットから避妊具を取り出した。
くそ兄貴がなにがあるか分からないからいつも持っていろよと言っていたが、本当だった。
たまにはマシなことを言うではないか。
オレ様が避妊具を着けていると、灯里がこちらを見ているのが分かった。
「・・・怖いか」
「・・・いえ、大丈夫です」
灯里はそう言って、オレ様を気遣ってか微笑んだ。
オレ様は自分が照れるのを感じながら、灯里の足を持ち上げる。
「いくぞ」
「はひっ」
灯里の負担にならないように、ゆっくり、ゆっくりと挿入していく。灯里の中はきつかったが、灯里自身も負担を耐えているのだとオレ様は思い堪えた。
「あぁ、ふあ・・・っ」
灯里はぎゅっと目を瞑り、湧き上がる違和感に耐えているようだった。
「・・・痛いか」
もう一度オレ様は灯里に聞いた。
「・・・大丈夫です・・っ」
それから、またゆっくりと動かしていった。
灯里のいい場所を探す。灯里も慣れてきたのか痛みとはまた違った声が漏れ出してきていた。
「ふ、あ、んあ、・・・あ・・・っ!」
灯里の声が段々と大きくなるにつれて、オレ様は動かすスピードを早く、激しくしていった。
また水の跳ねる音がする。灯里はあたたかかった。
「あかつきさぁ・・・っ!」
「・・・ん・・・っ!」
そしてオレ様たちは果てた。
それからオレ様たちは交代に風呂に入った。
浴室に入ると、前ならここがいつもアリシアさんが入っている風呂かとも思うところだが、今はもう違っていた。
風呂から上がると、灯里はかわりの制服を着ていた。多分洗い換えがあるのだろう。
そして汚れた床や、服の掃除をした。灯里の制服は特に汚れた箇所を水洗いし、洗濯機の中へ。洗濯機はごうんごうんと派手な音を立てながら回っていた。
オレさまが床に膝を着き、左手に雑巾を持って床を掃除していると、同じく雑巾を持った灯里がオレ様の前に屈み込み、顔を赤くしながら呟いた。
「なんだか、照れますねー」
「・・・おう」
オレ様は先程した行為のことを思い出し、灯里つられて顔を赤くした。
よく分からないが、相手が灯里だからか、尚更照れる。
黙々と床を吹拭く。
「・・・おいもみ子」
「はひっ」
「思いは伝わるって言ったよな」
オレさまが初めて灯里を意識したボッコロの日。あいつはオレ様を励ますかのように思いは伝わるとそう言った。そしてオレ様が何気なく渡した花一輪に嬉しそうに微笑んだ。
灯里を意識し始めたのはあの瞬間からだった。そして今なら分かる。俺にとってアリシアさんは憧れの対象であり、恋愛のそれとは違ったのだ。
「・・・はい」
「オレ様の思いは伝わったか」
お前はアリシアさんのかわりなんかじゃなくて、オレ様はお前を抱きたかったんだ。
「・・・はいっ!」
灯里はそう言って、にっこりと微笑んだ。その笑顔は眩しかった。
掃除を終え下の階へと階段を使い降りると、ちょうど玄関の扉が開きアリシアさんが帰ってきたところだった。
「あ、アリシアさんお帰りなさいっ!」
灯里は嬉しいそうにアリシアさんのもとへと走っていった。オレ様はなんとなく場違いな空気を感じ、窓の所でじっとしていた。