| 同類の男 |
天が寝転がっていると、不意に視界がグレーに塗りつぶされた。 同時に、かさかさした温さが目元を覆う。 くすぐったくなって、天は思わず笑い声をあげた。 「何ですか、赤木さん」 手のひらは答えず、ぐ、とその指に力を込める。 「天よ」 細い指は天の両瞼を押しながら、吐息を吐き出すように名を呼ぶ。 「見えないってのはどんな感じだ?」 天は小さく唸った。 「……暗いですねぇ」 茶化す訳でなく、真面目にそんな答えを返してみると、 赤木はその手をずるりと滑らせ、天の頬を包んだ。 視界が開けて、見上げれば自室の汚い天井と、赤木の白い肌と赤褐色の瞳が目に入る。 「もし」 今度は片方の人差し指で目元を撫でられる。 その一つ一つの動作に、天は欲情さえ覚える。 「もしこのまま俺がお前の目を潰したら、それでもお前は麻雀を打つのかね?」 明日の天気を聞くようなあどけなさで赤木は問いかけた。 「打つんだろうなぁ」 からりと、他人ごとのように天は言った。 そして右手で牌を摘む仕草をしてから、悪ガキのような笑みを浮かべてみせる。 「ホラ。盲牌もあるし」 いざという時にはサマもあるでしょ、と悪びれもせず言ってのけたりする。 「あんたもそうでしょう。赤木さん」 たとえその目が潰れても。 「…ああ」 たとえ両腕両足が千切れてもげたとしても― この人は赤木しげるである限り、この生き方は変えないのだろうな、と天は思った。 そして自分もまた同じなのだと。 「どうしてそんなことを聞くんです?」 「ん…?」 顔から赤木の細い腕が離れるのを惜しく思いながら、天は体を起こし、赤木の隣りに座り直した。 「誰か知り合いにいるんですか?目が見えない人」 「魚が、一匹…」 「はい?」 「随分昔になぁ」 俺が殺した男が、そうだったんだよ。 赤木はひどく懐かしそうにそう言って、天の真似をするように牌を撫でる仕草をした。 |
| 06/07/07 |
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