ひとりきりの保健室

朝から少し頭が痛かった。
この程度、と気にもしていなかったけれど、時間の経過と共に耳鳴りまで伴うような頭痛に嫌気がさして。
鎮痛剤でも貰いに行こうと保健室へと足を向けた。



勝手知ったるその部屋をノックもせずに開けた先は無人。
保健医が居なくとも薬の置き場は把握している。
目的の薬を手に入れ、保健室においてあるグラスに水を注ぎ、喉の奥へと流し込んだ。

この時間はまだ授業中。
誰一人歩いていない廊下もとても静か。
窓からは柔らかい日差し。

風紀委員の執務室に戻ろうと思ったけれど、白いベッドに誘われて靴を脱いだ。



ふわり。
髪を風が撫でる。
冬の昼下がり。



「誤魔化してるつもり?」
「何をですか?」
「……風紀を乱すなら咬み殺すよ?」
「今は君の髪を乱してますけどね。」
まるで風のようにふわりふわりと六道は髪を乱す。
黒髪を小さく摘むように触れては離した。
「触らないで、って言ってるでしょ。」
ぱしりと音を立ててその手を払う。
「覇気がありませんね、雲雀恭弥。病人相手は面白くありませんよ。」
「…病人じゃないんだけど、別に。ちょっと頭が痛いだけ。」
「……おやおや、やはり面白くない。何時もの君に比べて何と弱々しいんでしょう。いっそ可愛らしいですよ。」
「今すぐ咬み殺してあげるからそのままでいなよね。その憎たらしい顔見てたら頭痛なんて吹き飛んだ。」

トンファーを抜こうとした手を押さえ込まれて、起き上がろうとしたベッドに逆戻り。
蹴り上げてやろうしたら、にこりと間側で微笑まれた。

「元気になったようで何よりです。やはり君はそうでないと。」
「………そ、言えば…他校生だったよね、君。校内までの侵入は風紀違反。今すぐ…」
「その前に僕が咬みついてあげましょうか。」

制止も聞かず、降ってきたのは六道の唇。
咬み付く様な口付けに、ぐらりと目眩がした。