RM新刊 「不協和音」 サンプル

話の舞台は10年後。
プリーモことジョットをはじめ、初代守護者は実体化したまま戻ることができず、時代に確りと適応して日々をすごしている。
そんな中、ここ数日暗殺事件が横行していた。それは大ボンゴレ参加のファミリーも例外ではなく、沢田達も頭を悩ませていた。
そこへ浮かび上がる疑惑、中毒性を持った音楽による汚染。
全ての答えを手に入れつつあったアラウディは雲雀の異変に気が付いた。




〜以下本文サンプル〜



「く、ぅあ、あ!」
逃げようと身を捩れば、頭上で戒められ、括られた手枷の鎖がベッドサイドのポールと擦れて金切り声を上げる。
「ふ、いい声。もっと善くなりなよ。それこそ何もかも飛ばしてあげるから」
「断、る…っ、ん、ぅ!」
声を殺せない。殺す余裕すらない。
まだ前戯の段階でこれだ。
強がりだろうと何だろうと、声にしなければあっという間に狂いそうだった。
「少し音量を上げてあげようか」
「…ッ、も、いい、ッ」
「遠慮しなくてもいいよ。もっと良くなるから」
銀色の髪に隠された耳には音楽用にヘッドフォンが装着されている。それが繋がる音楽プレイヤーの音量が上げられた。
実際に耳に届く音は無い。流れているのは不可聴音。それが耳から直接脳へと叩き付けられた。
「――― ッッ、ア、ああ!」
上がるのは悲鳴にも似て。
過ぎる快楽など、ただの苦痛でしかない。
「もう少しだね…アラウディ」
笑った様に見える雲雀の顔に表情は乏しかった。



空を気儘に渡る雲が
堕ちる―――――





〜終盤抜粋〜

流れ続けるピアノコンツェルト。
「ねえ、獄寺く、ん…?」
沢田が声を掛けた、その時。
彼ら六人が腰や懐から取り出したのは拳銃だった。
自然な仕種で構え、全ての銃口が沢田を向く。逃げようと思えば逃げることは出来た。けれど驚愕の余りに体が上手く
動かなかった。それに彼らを傷付けるなんて以ての外で。
「そんな…獄寺君も、お兄さんも、山本も、ランボも…雲雀さん、骸まで…?」
無表情の彼らは普段は銃など持たないのに、それを手にする姿は一種異様だった。
その様をじっと見つめた後、まるで覚悟を決めたかのように沢田は目を閉じた。力を抜いて背凭れに体を預けて。
六丁分の撃鉄が上がる音が耳に届く。それでも沢田は動かない。
トリガーが指に掛かったその瞬間。
彼らの動きは止まった。
目を開けてみれば、会議室の入り口には銀髪の男が立っていた。
「アラウディさん」
「何を暢気にしているんだお前は…っ」
きしきしと何かが軋む様な音が響き、それぞれの手から拳銃が落ちた。
「何が起きて…」
「…くっ、全員の首を落とした方が楽で良いんだけど…ッ、流石に六人を抑えるだけなのは辛い、っ」
アラウディの右手が何かを巻き取るようにくるりと回り、力一杯引く仕種をした。しかし沢田には何をしているのかさっぱりで。
「あの、アラウディ、さん?」
「見て、理解しろ!僕が止めてるんだ…っ、早くこいつ等の気を失わせるなり…っ、何なり、しろ!」
「は、はい!」
何時もは寡黙なイメージしかなかった彼に怒鳴られ、沢田は慌てて立ち上がった。
彼が抑制に使っているのは恐らく殆ど不可視のワイヤーだろうと沢田は踏んだ。先ほど幽かに輝くのが見えたのだ。それでも気のせいだと言われれば頷いてしまうほどにほんの一瞬だったが。







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