(いっしょに、って言ったら困るかな)


とある寒い朝。
眠っていると何かが飛び込んできた。
「何…鬱陶しい」
寒さに丸く香箱座りをしていたせいで避けれるのも避けれなかった。
「…にゃぁ」
見れば黒猫。
「お前、何」
「さむい…」
それだけを呟いて小さな黒猫は更に擦り寄ってくる。
「ちょっと、邪魔なんだけど。大体僕に近づくな」
「…や、さむい」
「おい、お前!」
怒鳴りつけても動く気配のない黒猫はますます擦り寄って、そのまま眠ってしまった。



        なんて事があってから、早数ヶ月。
「アラウディ、遊んでよ」
「…いやだ。僕は眠い」
無視を決め込んでも、恭弥はのしのしと乗り上げてくる。
「っ、おい!もうガキじゃないんだから、重い!」
「いいじゃない。遊んでよ」
「何がいいんだ、この馬鹿」
不機嫌に揺れる尻尾もなんのその。黒猫は執拗に白猫に迫る。
「ねえ、遊んで」
「いい加減にしな」
「後でいっぱい毛繕いして上げるから」
それには白猫のしっぽがぴくん、と反応した。
毎日教えた毛繕いが最近になってやっと上手になったのだ。舌が届きにくい首の後ろや背中をしてもらうのは確かに気持ちがいい。
「ねえ、良いでしょ?」
きゅ、と力加減をして柔らかく踏んでくる前足もいい気持ち。
「ん、こら、」
「アラ、ねえ」
更にふみふみとしてくる黒猫に遂に白猫は頷いた。
「……ああもう、解ったよ」

面倒臭そうに、けれども気持ち良さそうに前足と背中をぴんと伸ばして立ち上がる彼をじっと見つめる。

ずっとずっと、いっしょにいて、って言ったら困るかな。
優雅にしっぽを振って遊びに誘う白猫にじゃれて飛びつきながら、黒猫は考えていた。




END