看病

※ +10雲雀を【雲雀】、現在雲雀を【恭弥】としています。

「恭弥。」
雲雀が恭弥に首に抱きついた。
「は?ちょっと、場所を考えなよ!」
たった今玄関を潜り、後続の雲雀がドアを閉めたばかり。
「何処でもいいじゃない。今欲しい。」
「馬鹿じゃないの貴方、って、え?!何!?」
そのまま寄りかかってきた雲雀を慌てて支えた恭弥は驚いた。
「…、熱い?」



「ほんとに馬鹿だよね、貴方」
恭弥は悪態をつく。
「ちょっと熱があるくらいでしょ。」
「倒れるくらいの熱がちょっとの訳ないでしょ!」
額に濡れたタオルを些か乱暴に置きながら、恭弥は声を荒げた。

氷嚢や熱を吸い取るシートなども常備してある。
だが、どれも雲雀が好まないために恭弥は氷水にタオルを浸しては乗せ続けた。

「ちょっとだよ。疲れも少し溜まっていただけ。」
「まあね、仕事だって言って何日帰ってこなかったっけ。」
冷たくなった手に息を吹きかけ、恭弥は雲雀を睨め付ける。
「ふうん、寂しかったんだ。」
「だ、誰が…っ!!」
「本当の事だろ。僕だって君に会えなくて寂しかった。」
「…っ、そりゃあ、まあ、少しは…」
「そう、少し、なの…」
熱で上気した頬で薄っすらと微笑む雲雀にどきりとした。
「そ、そういえばさっきどうして急にあんなこと言い出したのさ。」
「あんなこと?…ああ玄関でか。別に。君の香りがしたら急に欲しくなっただけ。」

玄関で体が近寄ったときにふと香った恭弥のシャンプーの匂い。
普段は同じものを使っているが、仕事で外出していた雲雀は当然違うものを使っていて。
嗅ぎ慣れたはずの香りに急に欲情した。
体がついてこなかったけれど。

「やっぱり貴方は馬鹿だよ。」
掻い摘んで雲雀が説明をすると恭弥は溜め息をついた。
「さっきから酷いね。」
「本当の事だろ。」
「仕方ない、でしょ。君不足だった。」
「ふうん…」
恭弥は徐に布団を跳ね除けた。
暖かい部屋とはいえ、いきなりのことに雲雀は寒気を覚える。
「…何、」
「欲しかったんでしょ?僕が。……最後までは出来ない、けど。」
「…ちょ、っと、ねえ。」
「少し黙ってなよ。」
恭弥は雲雀の寝巻きの裾を撥ね、するりと太腿を撫でた。
掌の下で筋肉が収縮するのが伝わる。
「そんなの、普段でもしてくれない、癖に…」
「普段じゃないだろ、今日は」

いざ、となって恭弥は怯んだ。だがここまで来て引くのも面白くない。
そもそも後で雲雀にどれほど馬鹿にされるか解ったものじゃなかった。
微かに震える手で雲雀の下着をずらし、既に少し兆している屹立に手を伸ばした。
ゆるりと動かせば雲雀が小さく息を呑むのが伝わる。
思い切って舌を伸ばしそろりと先端を舐めた。

「…ん、ぅ」
小さな喘ぎに後押しされ、恭弥は少しずつ大胆に舌を動かし、手を動かした。
普段、雲雀が施してくれる口淫を思い出しながら裏筋を撫で擦り、先端をしゃぶる。
「は、ぁ…ん、ぅ」
ちらりと仰ぎ見れば雲雀は口に手を当てて声を抑えていた。
「ん…、ね、いつも僕に言うじゃない。声を殺すなって。」
「ハ…ぁ、うん、言うね。だから…僕にも声を、上げろって?」
「そうだよ、平等じゃない。」
「…ふふ、断るよ、」
艶やかに笑む雲雀に腹が立ちながらも、その笑顔に魅せられる。
「…いいよ、上げさせて見せるから。」
喉奥深くまで咥え込み、尚一層真剣に恭弥は愛撫する。
それでも抑えられる声に恭弥は躊躇っていた手を伸ばした。
「…っ、恭弥!そこ、は、!」
「んふ…、ん、」
雲雀の屹立を咥えたままちらりと見上げ、恭弥は雲雀の後庭に指を進めた。
そこは恭弥の唾液と雲雀の先走りに濡れていて、然したる抵抗なく指は飲み込まれる。
「…ッ、ぅ、ぁ!あ…ッ、きょう、や、」
きつく締め付けてくるのは入り口だけで中は熱く熟れ溶けていて。
そこに己の楔を打ち込めば、どれほどの快楽を得られるかと想像するだけでごくりと喉が鳴った。
しかし同時に雲雀の体温が今、尋常なく高いことも、現状が良くないことも思い出させた。
当然こういうことだって良くない筈だ。こんな行為は早く終わらせなくてはいけない。
いつもは翻弄されるだけされていて意識して場所を考えたことも無い前立腺を手探りで探す。
指が硬い一点を掠めた時、雲雀がびくり、と大きく背を反った。
「は、ア、あ!!…っ、ん、きょ、う、ッ、」
身を捩り、今までにない嬌声を零す雲雀に恭弥も我慢が出来なくなる。
ズボンを緩めて、自らの屹立に指を絡めた。
上がる息で雲雀のそれに歯を立てないように充分に気をつけ、熱いナカを指で犯し、自らを慰め続ける。
「ぁ、ぁ…っ、も、出、る…っ、」
射精を促すように少し強めに吸い上げてやると直ぐに咥内に苦味が齎された。同時に己の手も汚す。
零さない様に口を離し、何度かに分けて飲み込んだ。
世辞にも美味いと言い難いそれは飲むのも楽ではない。
べったりと汚れた手を拭い、雲雀を見るとしどけない格好のまま息を乱していて。
再び熱を持ちそうな自身を抑え込み、慌てて裾を整えてやって布団をかけた。
落ちてしまったタオルを再び氷水に浸して、雲雀の額に乗せる。

「ごめん、無茶して。」
「…いや、いい、よ。よく眠れそう。その代わり…元気になったら、覚えて、るんだね…」
「……忘れていいよ。」
あまり本気ではなさそうな雲雀の言い草に多少の安堵を覚え。
再び微睡ろみ始めた雲雀の邪魔をしないよう、恭弥は口を噤んだ。




END