「……なんて事があったよね。昔。」
「そ、でしたっけ…」
「ワオ。君、覚えてないの?…へえ、そう。」
表情はにこりと笑みを象ったが、雲雀の目は全く笑っていなかった。
10年前。黒曜ランドの一件から一月も経とうかと言うころ。
雲雀は六道の夢に紛れ込んだ。『契約』という六道の一方的な術を掛けられたせいだったのだろうか。
そこで抵抗する術を奪われ、狂う程の快楽を押し付けられて。
それは夢であったはずなのに、雲雀の体にははっきりと六道との情交の跡が残っていた。
「きょ、やく…ん、…ふ、ぅッ」
「ん…何?」
べろりと首筋を舐め上げ、耳元で雲雀は低く囁いた。その間にも手は六道の弱い所を暴いていく。
「ど、して今…なんです?もっと…早く…、ハッ…ぁ、君は、こうするべき、でし…た、ンっ!」
口を開けば零れる喘ぎを厭いながらも、六道は聞かずにいられない。
「……仕方ないだろ。思い出したのが唐突に…昨日だったんだから。」
「そ、それだけ…?」
「うん、それだけ。」
簡潔、且つ明瞭に答える雲雀に思わず苦笑してしまう。
愛すべき彼の純粋さは10年如きでは失われていない。それが嬉しくて。
「よく笑っていられるね。言っておくけど今日はあの時の仕返しのつもりだから。朝まで寝せてなんてやらないよ。」
「まだ宵の口…です、よ?!あ、くぅ!!あ、待っ…!」
面白いくらいに紆余曲折を経て、体を重ねるようになった。
勿論切欠はあの夢のからだ。
一方的に押し付けられた快楽。激しい憎悪と困惑、そして僅かながらの興味と。
追って、追い続けて。遂に雲雀が六道と対峙した時、それは不思議な方向へと昇華した。
追い続けた執念も何もかも含め、今になって思い返せばそれは『恋情』と呼ぶに相応しい。
「は、ァ…ッあ、ああっ!きょぉ、や、く…っ」
「ん、何?」
「も…辛、いで…ん、ぁ!」
それに対して雲雀は綺麗な笑みを見せた。
「じゃあこれからでしょ?苦痛は詰まるところ快感でしかないんだから。」
「この、サディスト…っ!」
あれから何度登りつめた解らない。既に六道の屹立から吐き出される精は極少なくなっている。
イき過ぎて辛い。
それに対して、仕返しと決め込んだ雲雀の精神力は見事に強く、六道の3分の1の回数も達してないだろう。
互いに感じる場所など知り尽くしている故に雲雀の攻めには容赦がなかった。
「違うな。君がマゾヒストなんでしょ?」
「あ、あぅ!く、ぅああ!恭、弥…ぁ!」
「ほら、もっと啼いてよ…夜が明けるまで…」
「ホ、ント…にする、なんて…君、おかし、です…よ。」
見れば窓の外は薄らと白みかかっていて。
「ついて来た君も大概でしょ。…それにしても掠れた声、いいね。」
「ちょ、恭弥、君!…も、ホント、無理です、からっ!!…あ、ぅ!」
体内収まったままの雲雀の体積がぐんと増す。
「これで、最後…」
またゆるりと動き出され、六道は掠れた声を上げるしかない。
「…むく、ろ…」
「きょう、や…っあ、ぅ!ぁ、ぁ…っ!!」
自らの名を呼ぶ掠れた甘い声は極上の煽り文句だ、と互いに思いながら。
最後の頂点を目指し、考えることを止めた。
END