「おやおや、どうして君が此処にいるんでしょうねぇ。」
心底嫌そうな顔をして。
奇天烈頭の六道骸は僕に向かって言い放った。
「…僕だって嫌だよ。どうして夢の中でまで君と会わなきゃいけないの。すごい迷惑なんだけど。早く帰ってくれない?」
六道に全く臆することなく雲雀も言い返す。
「僕の夢に侵入してきたのは君でしょう?雲雀恭弥。」
「ふざけないでよね。それは君の方だろ。」
「……御覧なさい、この景色を。君には覚えがありますか?ある訳がないでしょう、僕が作った心象なんですから。つまりは君が闖入者なんです。」
確かに雲雀にはその景色に覚えは無い。
一面の青々とした野原。
穏やかな日差し。遠くに見える柔らかな影を落とす巨木。
咽返るほどの香る草の匂い。
これは六道が望む光景なのだろうか。
「…確かに覚えの無い景色だね。これは君が望んでる光景なの?」
「そうですね。人間が一人もいないこんな穏やかな世界を望んでいるのは確かです。だから貴方は邪魔なんですよ。」
冷たく言い放つ六道の赤い瞳がますます色濃く輝いた。
「ん、んぅ!…ふ、ぅ、く…っ」
唇を噛み締めても噛み締めても声が漏れる。
広々とした野原の真ん中に出現したまるで病院で使われるような簡素なベッドの上で。
六道に半端に衣服を乱されて、体中を弄られて雲雀は懸命に声を殺していた。
束縛はされていない。
だが雲雀の手には全く力が入らなかった。縋ることだけを許されたかのように。
殴ってやりたくてもどうしようもなかった。
「まだ頑張りますか。君も強情ですね。」
きつく立ち上がった屹立を撫でられ、時折舌と唇で弄られた。だが決定打を与えない愛撫は雲雀を絶頂へと導かない。
「こ、んな方法でしか…ッ、僕を…ん、く!貶めれないんでしょ、あ、う!」
「ええ、そうかもしれません。だから立ち上がれなくなるほどの屈辱と快楽を君に与えてあげますよ。」
ひたりと。
雲雀の後孔に当てられたのは六道の滾りあがった熱。
「さあ…お望みどおり入れてあげますよ。先ほど慣らして上げた時と同じように…痛みなんてありませんから。」
「そんなもの…っ、望んで…ッッ!!、ひ、ぅ、あ!ぅああ!!」
今まで一度だって人に触れさせた事なんてない。
知らないはずの快楽が身を焦がし、頭がおかしくなりそうだった。
痛みも苦しみも殆ど無い、只快楽だけというのは果ての無い苦痛。
「ふ…なかなか良いですね、君の体も。」
「ぅ、っ…だ、ま…れっ!んく、ぅあ、ぁ!!」
「クフフ…その減らず口が何時まで続くか楽しみですよ…ほら、もっと腰を上げて、僕をもっと奥深くまで感じなさい。」
雲雀は顔を枕に押し付けられ、二の腕を引かれて。腰だけを高く上げた格好で六道を呑み込んでいる。
揺すられる度に勝手に溢れる声を枕を噛んで必死に耐えた。
「ふ、くッ、ンッ!…ッッ、あぅ!」
「…さあそろそろ一度目はイきましょうか…」
少しだけ乱れた六道の吐息交じりの台詞と共に、更なる激しい律動が雲雀を苛む。
「ンンッ!ぅあ!あ!ッッ、やっ、あああ!」
瞼の裏に火花が散るような、呼吸を忘れさせる悦楽は雲雀を一気に絶頂に追い上げた。
「休むのはまだ早いですよ。もっと…僕を求めて…」
目が覚めた。
は、と息を吐くと気管が笛のような音を立てる。喉がとても渇いていた。
夢を見ただけのはずなのに。
寝汗と自らの精で汚れ、冷たくなったパジャマを着替えようと軋む体を叱咤してベッドから足を下ろす。
立ち上がろうとしたが膝から折れて、ぺたりと床に座り込んでしまった。
「…何…ッ?足に…力が………ッッ!な、!」
六道との逢瀬は夢のはず。
なのに。
足を伝う生暖かい物は 。
END