「へえ、成程。」
「ね?ヒバリさん向きでしょう?できれば引き受けてほしいなぁ、とか思うんですけど。」
「…僕に命令なんて。偉くなったね、沢田綱吉。」
「とんでもない!俺はお願いしてるだけですし。駄目ですか?」
沢田が申し訳なさそうに雲雀に依頼した仕事は、ボンゴレと同盟関係にありながら内部から転覆を狙うと噂があったファミリーの殲滅。
勿論、沢田は調査に調査を重ねて結論を出した。だが雲雀に言わせれば痛めつけてさっさと吐かせれば良いのだ。
どうせ結果は変わらないのだから。
「…まあ、楽しそうだからいいけどね。」
久々に暴れられる。
雲雀は小さく舌なめずりして敵アジトへ向かった。
さすがは天下のボンゴレを覆そうと考えるだけある。
手応え十分だ。
並々ならぬ弾幕。雲雀が倒れてないと解るや否や、弾幕が開けると同時に炎を灯した指輪を匣に叩き込みながら突っ込んできた。
「…銃なんか興醒めだってやっと気がついたかい?」
雲雀のトンファーに纏う紫の炎がより一層鮮やかに燃え上がる。
「恭弥君!」
六道の声にちらりと視線を投げ、振り向いたのは傷だらけの雲雀だった。
累々と横たわる屍の合間に立つ雲雀は匂い立つような色気に満ちている。
命の遣り取りをした後は何時もこうだ。張り詰めるような緊張と怒声。そして訪れる静寂と血の臭いに堪らなく興奮した。
「…なに、どうしたの。」
頬を流れる血が鬱陶しいのか、乱暴にスーツの袖で拭う。
「どうして独りで行ったりしたんです?沢田綱吉は僕と君とでこの仕事はするように言ったそうですね。」
苛立ちを隠しもせず、六道は雲雀の前に立つ。
「この程度、僕独りで十分だし。」
「それでそれほど怪我をしてるんでしょう?」
「掠り傷だって言ってるでしょ。折角気分が良いのに水を差さないで。」
確かに動けなくなるような傷が一つもないのは流石だが、満身創痍、とはこのことだ。
傷がない箇所がないほどに全身隈なく怪我をしてる。
「全く君という人は…。しかし僕は暴れることができなくて欲求不満ですよ、楽しそうだったのに。」
「ふふ、それは残念だったね。でもこの程度じゃ足りないな、あまり手応えなかったし。」
雲雀は自らのネクタイを指で引き、襟を乱しながら六道を見遣る。
「おやおや…。これほど暴れていて足りないのですか?」
「足りない。」
じっと見返す雲雀の目には欲情の炎が宿っていて。それは六道を煽るのには十分だった。
「…あ、ああっ…っふ、っあ!」
「ほら、早くしないと掃除人が来てしまいますよ。」
「だ、ったら…っ、ぁ!もっと奥、まで…っ」
血臭で噎せ返るような中。
最低限の衣服を乱して二人、壁際に立ったまま繋がっている。
「普段もこれくらい素直に求めてくれてもいいでしょうに…おや、もう到着しそうですね。」
遠くに人の気配を感じた六道はそれがボンゴレの掃除人だと判断し、早急に終わらせることにした。
「く、ぁ!アアッ!!…ッッ、ひ、ぅ…っ!」
爪先が浮き上がるほどに突き上げられ、雲雀の屹立からぽたぽたと精が零れ落ちた。
「この程度でイってしまいましたか?少し早いんじゃありませんかねぇ、恭弥。」
情事の最中にだけ気が向いたように呼び捨てにされる名前。
耳元で低く囁かれて、腰が抜けそうになってしまう。
「ふッ…ぁ、まだ、イって、な…ッ」
「まあ、あの量なら確かに……でもこの状態で続けたら歩けなくなりそうですね。」
「い、い…から!もっと…っ!ふ、ぅんんっ!ん、んんっ!」
更に甘く、高くなる嬌声を外にいる人間に聞かせたくなくて、六道は雲雀の口の中に己の指を押し込めた。
噛まない様にしつつも耐え切れず六道の指に歯を立て、目の前の壁に爪を立てて。
「…は、ぅっ、く…っ、くぅんんっ!!」
びくんと震え、大きく背を反らせて雲雀は昇りつめる。
きつく絞り上げられる内部に六道も限界を感じて慌てて抜いた。こんな現状で中に出しては後で雲雀に怒られるのは目に見えている。自らの手を自らの精で汚し、片手で力が抜けて落ちそうになる雲雀の腰を支える。
満足しましたか?と問えば、まあそれなり。と素っ気無い言葉が返って来た。
「…帰ったら僕もじっくりと恭弥を味わわせて頂きますからね。」
「…ふ…好き、にしな、よ……僕も、まだ…足りない、し…」
簡単に雲雀と自分の衣服を整え、腰を支えたまま霧に紛れる。
「クフフ、楽しみですね。君の傷の治療をしながら、無傷の場所は隈なくこの舌で舐めてあげますよ。その後は僕を煽った罰として啼いて許しを乞うても知りませんから。」
「…ん…どうして、君が言うと…変態臭い、かな…」
失敬な!と六道が憤慨するのを雲雀は小さく笑って。
今晩は夜更けまで寝れないことを予感しつつ、僅かな休息を得るために目を閉じた。
END