捩じ込んだ塊

「ぅあ、ア…ッあ!」
「ん、恭弥…ッ」
「馬鹿…ッ、痛い、って…言って、る!っんう!」




今日は一年を通してみても、指折り風紀が乱れる日。
学校にお菓子を持ち込み、且つ男女不正交遊が大胆に行われようとする。その為に朝から本当に忙しかった。
疲れて帰ってみれば家の前にはあの男。疲れを倍増しにしてくれること請け合いだ。
無視を決め込み、家に入ろうとすれば無理矢理に上がり込まれ。勝手にリビングのソファを陣取り、今日は特別な日だの恋人同士の日だのと良く解らない事を熱心に伝えようとする。

「…だから?」
「だからって…もう、本当に君は人の話を聞きませんね。」
「君にだけは言われたくない。」
自分だってこちらの話しなど全く聞かないくせに。雲雀は辟易する。

「だから!僕にチョコレートを下さい!」
「……めんどくさい。」
「恭弥くぅん〜」
あんまりにも泣きそうな顔をする上に鬱陶しいので、雲雀は買い置きしてあった板チョコを手渡した。
本当は投げてやりたいけど、行儀が悪いからしない。以前キャンディを投げたことがあるが、あれは撃退用だったのだから仕方がないことだ。
「これ持ってさっさと出て行って。そんなにチョコレートが欲しいならコンビにでもスーパーにでも行けばいいじゃない。」

がし。

と、音がするような勢いで手首ごと掴んで、六道は俯いた。
「ありがとうございます!恭弥君!まさか本当に貰えるとは…」
「寄越せって煩くしたのは君でしょ?」
「もう、大好きです!」
「うん、君がそんなにチョコレート好きだなんて思いも寄らなかったよ。」
「はい!君もチョコレートも大好物ですから!」
六道は掴んだ手首を思い切り引き、座るソファに引き倒した。すぐに圧し掛かって、逃げられないように確りと押さえ込む。
「ちょっと!」
「もう…好き過ぎて困ります。責任とって下さいね?」
「はあ?僕が何の責任を取るの?…ッ、ねぇ…君…まさか…」
「ええ…もう今すぐにでも恭弥を啼かせて苛めて、突っ込みたいんです。」
蕩けるような笑みを浮かべて、溢れる言葉は卑猥に満ちて。
押し付けてくる六道の腰は既に熱を持って、硬くなっていた。
「死ね、この腐れパイナップル!」
「ええ、一緒に天国の階段でも上りましょうか。」
「一人で行って来い!」
「いやらしいですね、恭弥。そんなに僕が一人でイくところが見たい…」
「…訳がないでしょ!どうしてそうもご都合主義な耳を持ってるのさ!」
「だって、」
君が大好きなんです、と困ったように、しかし感情が篭った言葉に返す言葉を失った隙を狙って、雲雀は唇を塞がれてしまった。



あとはもう済崩しだ。
何時もよりもしつこいキスに頭がおかしくなりそうだと思っていた間に、ズボンはずり下げられていて。
擽るように指で其処に触れられたら、ムカつくけれど、もう抵抗する気も失せた。
「…ン、ッふ、ぅう…ッ!」
「ああ…恭弥君…」
キスを解き、唇が触れる距離で六道は甘やかな溜息をついた。
最近わりと頻繁にこんなことをしてるのに、どうして今日はそんなに感激しているのだろうか。
雲雀には今ひとつそれが解らなかった。
とは言え、今日は何処となく手荒。いつもしつこいくらい愛撫してくるのだが、何か焦っている感もある。
「…ッ、ふ、ぅ…ッ、ね、ぇ、何そんな、焦って…っん、」
「さっきも言ったでしょう?早く君の中に入りたいんです。」
臆面なく言われてしまえば、照れるのは雲雀だ。
「君…ッホント、デリカシー、ってどこに捨ててきた、の、ァ、ああっ!」
入り込んだ指が、雲雀の性感帯を擦り上げた。びくびくと震え、しなやかな背が反り返る。
「クフフ…君こそ素敵な体になってきたじゃありませんか。ここ数日連続してシてますからね…ほら、もう三本目も入りますよ。」
「…ッ、ア!こ、の…っ!」
「おっと!…こう言う時にまで蹴ろうとするなんて…呆れますけど、そういうところも大好きです。好きです、恭弥。」
「も…ッ、知ら、ない…ッ、ん!」


それから何時もよりも早く指を抜かれて、入り込んできたのは六道の熱。
少しは慣れてきたとは言え、捩じ込まれる熱さに雲雀は声無く悲鳴を上げた。大声を上げるのは最後のプライドが許さない。
即座にギリギリと奥歯を噛み締めて、上がりそうな悲鳴を押さえ込む。

「…ッ、い、ァッ…ッハ、あぁ!」
「すみ、ません…恭弥…余裕、なくて…」

切れ切れの六道の声に、きつく瞑っていた目を開けてみると、秀眉を顰め、息を荒げ。
いつも余裕綽綽とも言える彼のそんな姿を初めて見た気がした。
自分を求めに求めて、余裕をなくす六道。どれほど求められているか口では散々言われていたが実感が沸かなかった。
それを目の当たりにして、体のどこかがぎゅっと疼く。

心と体と、同時に疼かせたそれは体内にいる六道自身も絞り上げてしまったようで。
声を漏らして六道は小さく呻いた。
「…ッぁ、恭弥、あの…ッ少し緩め…、て」
「無茶、言わない…で!ん、僕だって…ッ」
雲雀だってどうして良いか解らない。自分の体だが、心と体がちぐはぐに動いている感じで統制が取れなかった。息を吐いてみても緊張は解れず、ますますはっきりと体内の六道自身を感知した。
「は、ァ…ッ、もうこのまま、でもイきそう、です…」
「も、勝手、にしたら…?は、ァ、そした、らもう…抜いて、よね…ッ」
「嫌、ですよ…こんな、に求められてる、のに…」
「求め、てなん…ッか、ッ、んっ!!」
そのまま背中を抱きしめられると、体内にある六道の固い切っ先が柔肉を擦って気が遠くなりそうな悦楽を齎す。
「ア、ァ!…ッん、くぅ…ッ」
「ふ…恭弥、本当に、どうしたんです?いきなり…」
元々感度が良い雲雀だが、こんな少しの振動で身を捩るほど感じるなんて。
小さく頭を振るその動きですら、自身を苛む甘い苦痛のようで身を固くして震えていた。
しかしそれに反して雲雀の中は柔らかく、ねっとりと絡み付いてくるよう。
「解らな…ッ、あ、あ、動く、なッ、ァ!」
「無理言わないで、下さい。ああ、もう今日は…存分に抱いてあげますから…」
たっぷりの溜息と共に耳元で囁いて。
甘い雲雀の体を朝まで離さなかった。





END