『その程度じゃやっぱり興味は湧かないな。』
銀髪の男は無表情に言い放つ。
高い所から見下ろす黒髪の子供はどこか自分に面差しが似て。
まだ小さな世界しか知らない幼い子供。
その中で自らを強者と思い込んでいるのだろう。実力の差も解らず挑んでくるなんて。
しかし。
「そう。戦ってくれないなら僕も興味はないよ。」
意外にもあっさりとした後姿は追ってみる価値を見出した。
『…ねえ。』
男、アラウディは少年に声をかけた。
屋上から校内へ下りる階段の踊り場で。
「…っ、な、に?!貴方、どうして、」
『ふうん…』
間近でみれば色々と違う。東洋人の肌は肌理細やかで美しい。
触り心地が良さそう。
思うままに手を伸ばし、頬に触れてみた。
見た目どおりの滑らかさに加え、子供独特の柔らかさと相俟ってとても良い手触り。
「気安く触れないで。」
叩いてその手を落とそうにも、雲雀からは触れられなかった。するりと男の体をすり抜けてしまう。
アラウディの手は明らかに雲雀に触れているのに、だ。
『へえ、君からは触れないんだ。何故かな。』
「触らないでって言った!」
まるで毛を逆立てた子猫だな。
これはからかうと楽しいタイプだ、とアラウディは笑う。
ボンゴレの継承等興味もないのに付き合ってやっているのだから少しくらい遊んでもいいだろう。
『何をそんなに怒ってるの。』
更に手を伸ばし、するりと首まで撫でてみる。
ひくりと震えたのは見逃さない。
『…へえ。』
感度も良い。睨みつけてくる目はもっと良い。
悪戯心を押し退けて、加虐心が目を覚ました。
『前言撤回。興味、涌いたよ。』
逃げようとする手は捕まえた。いつも懐に忍ばせてある手錠で。後ろ手に。
余計な口は叩きそうになかったけれど、屈辱を味わわせてやるために、アラウディは自らのネクタイを外して雲雀に噛ませた。
「ん、んぅ!ん!」
まあ多分離せ、とかその辺りの事を言っているのだろう。
そのままぐっと壁に押し付けてやっても怯む事ない強い眼差し。
『ふふ。最後までその目をすることができたら、直ぐにでも雲の守護者と認めてあげるよ。』
END