ばさり、と白いコートが脱ぎ捨てられる。
それを恭弥はぼんやりと見つめていた。
「何、そんなに見つめて。気になるの?」
普段から見てるだろ、とアラウディが笑う。
「…ッ、違う。」
「ふうん。」
アラウディの手が伸び、恭弥のネクタイを緩めて引き抜いた。
ゆっくりゆっくりとボタンが外されていく。
久し振りの逢瀬。
待ち合わせ場所に来た彼は今まで一度も見たことがない出で立ちだった。
真っ白いコートに誂えたダークグレーのシャツにグレーのベスト。
髪も瞳の色も薄いアラウディに良く似合っていた。
モノトーンで纏めていながらも、酷く華やかな印象に目が釘付けになる。
そのときから変だった。
まるで見慣れない人を見るようで、視線を向けるのも戸惑われた。
まだどこか夢見心地でいれば、気がつけばシャツは脱がされていた。
「…ん、やだ。」
「何が。」
答える代わりに恭弥は手を伸ばす。
微かに震える指で、アラウディのベストのボタンを一つ外した。
「僕だけ、は嫌だ。……・貴方も脱いでよ。」
「…ふふ、いいよ。その代わりお前が脱がせなよね。」
普段なら猛反発していただろう。
だが小さく頷いて、恭弥は次々にボタンを外していった。
シャツのボタンが全て外され、はらりとアラウディの素肌が晒される。
鍛え上げられ、一切余分な肉などない、しなやかな。大人の体。
また、見惚れる。
「今日は随分と面白い反応をするね。」
「そんなこと、ない。」
顔に血が上るのが解る。
それを見られたくなくて顔を逸らすも、アラウディの手は恭弥の顎を捉えて無理矢理顔を上げさせた。
「…真っ赤。」
「煩い。」
「まあどういう事かは解ったけど…取り敢えず言わないでおいてあげるよ。」
普段見慣れない姿に胸を躍らせて、興奮しているなど認めたくはないだろう、とアラウディは内心で笑う。
「今日はクリスマスだしね。特別に優しくしてやる。」
「あ!あ…ッや、ぁ!」
「嫌…?どの口が嫌、とか言うんだか。」
ベッドの上で四つん這いにされ、後ろから激しく突かれ、揺さ振られながら恭弥はシーツに爪を立てた。
強過ぎる奥への突き上げに眩暈がする。体を支える腕も萎え、ベッドへと突っ伏した。
「や、だ、…ッ、んぁ、ァ!や・・・ッ」
「…さっきから何が嫌なの。」
感じすぎて嫌だと零すことはある。だが余りにもはっきりと嫌がられては少々気にはなった。
苛めて楽しいのは確かだが、嫌われるつもりはないからだ。子供相手に匙加減は難しいが。
腰を支えたたまま身を倒し、恭弥の背中に胸をぴたりと合わせるようにして抱き締め。
一時的に収まった律動にぐったりとした恭弥の耳元で囁いた。
「…恭弥。」
「ん、ぅあ!」
「ほら、何が嫌?はっきり言いな。」
「…ふ、ァ、あ、この、ままでもい、いけど…ッ、」
「…良いけど?」
「か、お…見えな、いから…、」
それにはアラウディも驚いた。
今日は随分と甘えてくれる。
いつも突付けば面白いくらいに反発してくれるのに。
そういうのも良いが、素直なのも悪くない。
ならば、と身を離し、腰を掴んだままひっくり返してやった。
深く繋がったまま体勢を入れ替えられ、柔肉をぐるりと抉られた恭弥は小さく悲鳴を上げた。
「…ッッ!!ぃ、ァ!」
「ん、痛かった、かい?」
頷く恭弥にやはり少なからず驚く。
カタカタと震える恭弥を宥めるようにそっと髪を撫でた。思わずこちらの手つきも柔らかくなる。
「本当に今日はどうしたの。」
「あ、なた、こそ…っ、どうしたの。今日…優し、い…じゃない。」
途切れ途切れに強がる言葉に今度は吹き出しそうになった。
「…特別な日だから、ね…」
それから数回。
恭弥の掠れた嬌声が零れ、ぱたりとベッドに手が落ちた。
「…あ、恭弥?」
涙で濡れた顔のまま、もう瞼は開かない。
「プレゼントも言葉もまだ渡してないでしょ…」
ふ、と落ちる溜息。
額に掛かる黒髪を軽く梳いて口付けを落とした。
「Buon Natale 恭弥。」
END