全てを凍らせる冷たい檻で 熔けることの無い氷の障壁を張っていた 自ら閉じ込めた少女が眠る氷柱の前に蹲った彼の 硝子のような無機質で、冷たく凍った目を見た時、 僕は、どうしてもこの空間から彼を救い出したくなった 此処は、彼自身が作り出した 氷の、牢獄 とらわれたもの 雪深い山の奥に位置するスールズ。ノルゼン程じゃないけど、結構寒い。 いくら旅人用の布地を使ったって、僕自身が炎の加護を受けていたって、 寒いものは、やっぱり寒いんだよ。 山から吹き降ろしてくる冷たい風を全身に感じて僕はふるりと身震いをした。 足が鉛のように感じる。露出した肌に当たる風は僕の足を凍りつかせた。 「どうした、マオ。大丈夫か?」 隣に居たユージーンが僕のことを気遣ってすらりと長い足を止めた。 いいなぁ・・・ユージーンは寒くなさそう。毛皮着てるもんね。 「ううん、大丈夫。だけど・・・さーむーいーよー!」 「泣き言を言うな。・・・ほら、もう直ぐだぞ」 村の奥に位置する集会場を目の前にして、僕は少し元気を取り戻した。 きっと、集会場の中はあったかいだろう。少なくとも外よりは。 浮上した気持ちに心なしか足も先刻よりは軽くなる。 だけど、やっぱり吹き降ろしてくる風は寒くて、早足で進んでいった。 そんな僕の姿をユージーンが見て笑ってた。酷いよ! ちょっとむくれながら、僕は集会場の扉を開いた。 集会場の中はやっぱりあったかかった。 薪ストーブの熱に、冷えた体が急速に温められて行くのが解った。 それに、甘く香るピーチパイの美味しそうな匂いがした。 ポプラおばさんのパイは確実に焼き上がっていってるらしい。 早くヴェイグ達来ないかな・・・そうしたら早く、焼きたてが食べられるのに。 「出来たわよ〜!特大ピーチパイ!」 「わーい!!」 威勢のいい音を立ててポプラおばさんがやって来た。 その後ろには、ガジュマのヒトも、ヒューマのヒトも一杯居た。 僕は自然と口元が上がってゆくのを感じた。やっぱり、ヒトはヒトなんだね。 「ヴェイグ!美味しいね〜!」 「・・・ああ。そうだな」 ピーチパイを頬張りながら至福の時間に浸る。 美味しいものを食べてるときって、どうしても笑顔になっちゃうよね。 それはヴェイグだって同じみたいで、雰囲気がどことなく笑ってる感じがした。 クレアさんを助け出した時と同じ感じがする。 「・・・今日までいろいろなことがあったよね」 「そうだな、本当にいろいろなことがあった」 思い出になっちゃうくらい、沢山の時間を僕達は共有してきた。 初めて会った時には得られなかったものを沢山得てきた。 ヴェイグだって、こんなに僕と話をしてくれるようになった。 いままで、本当にいろいろあったよね。 「覚えてる?僕と、ユージーンが初めて此処に来た時の事」 「覚えてるさ。お前が居なければクレアを助ける事も出来なかった」 お前には本当に感謝している、とヴェイグは言ってくれた。 でもね、本当に助けたかったのは・・・ 「・・・あの時ね、この集会場が檻のように見えたんだ。 氷で覆われた冷たい檻・・・。どうしても、助けたいと思ったんだ」 明かり取りの窓でさえも氷で覆われたままで、暗い所に蹲ったままの君。 僕達が近付けば、獲物を狙う獣の様にギラギラした目に射抜かれた。 全てを拒絶するからっぽの瞳。敵意は剥き出しなのに、何も映さない硝子の瞳。 全てから隔離された空間で、凍てつく寒さが君の心まで凍らせてしまった。 本当に捕らわれていたのは、氷柱に封じ込められたクレアさんじゃなくて 罪悪感という黒い闇に覆われた氷の檻に自分から閉じこもっていた ヴェイグの方、だったんじゃないかな。 「僕は、此処から出さなきゃいけないと思った。傷つける事なく、嫌悪される事なく」 「・・・・・・」 「結果的には二人とも無事に助けられた。嬉しかったんだ」 本当に良かった。あのまま放っておいたら、心が壊れてしまうかもしれない気がしたから。 「マオ・・・」 「へへっ・・・何か暗くなっちゃったね。食べよう!パイ無くなっちゃうよ!」 目の前の皿にはもう、一切れも残っていなかった。全部食べられちゃったみたい。 僕は目聡く残ってるピースを貰って口に運んだ。 熟れた果実の甘味がサクサクのパイと一緒に口の中一杯に広がる。 「マオ・・・お前が居てよかった。お前が救ってくれなかったらどうなってたか」 「もうそのお話はおしまい!・・・でも、気にするようなら一つだけ約束して」 「何だ?」 「僕が困ったら、ヴェイグが助けてね」 「・・・ああ。約束しよう」 どんなに堅固な氷の檻でも 僕がきっと溶かしてあげるから 安心してね 僕が助けにいってあげるから だからね 僕が困ったときは その綺麗な氷の力で 僕を止めてね 約束だよ 氷の力に魅入られて とらわれたのは、誰? XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX うへへ(ニヤニヤ) 李津さんから頂いたマオヴェイ小説でございます。 んもう、こんなもん学校で渡されたもんですから、ニヤケが止まらなくて大変でしたよ! 李津さん本当にありがとうございました〜! 本当はまだあるんですが、小出しにします!(この卑怯者め! ・・・あとで挿絵とかかいてもいいですか? |