08:セレーナ



「・・・まあ!まあまあまあまあっ!」 
「?!」 
 
ずいずいずい。 
そんな擬音語を響かせつつ、セレーナは椅子に座った事で近くなったヴェイグの顔へと自分の顔を近づける。 
目と鼻の先。 
息の触れ合う距離。 
近すぎて、ヴェイグはなんともいえない居心地の悪さを感じた。 
ティトレイ自慢の姉セレーナは、パワフルでワンダホでビュリホなヒトだった。 
あんまりにもセレーナの目がキラキラしているものだから、ついにいたたまれなくなってヴェイグは目線を宙に泳がせた。 
 
「こんな美人さんを捕まえてくるなんて!流石私の弟だわっ!」 
「へっへー!だろ、だろ〜?」 
 
(………なんだこのノリは) 
 
ヴェイグは早くもこの姉弟のテンションについていけなくなってしまったようだ。 
早くも脱力感にさいなまれていたヴェイグだったが、次の一言で正気に返る。 
 
「で、挙式はいつなの?」 
「は?」 
 
挙式? 
挙式って……なんだ? 
 
「はぁー、全く私よりティトレイが先に結婚するだなんて、なんだか悔しいわー。しかも相手がこおんな美人さんだなんて!」 
「おい姉貴〜!ちょっとヴェイグに近づきすぎるんじゃねえの〜?!」 
「あら、ごめんなさい。」 
 
そう言って、セレーナは身を引いた。 
少し余裕の出来たヴェイグは、ティトレイに向き直る。 
 
「………挙式?」 
「いやだぜヴェイグー!マリッジブルーかぁ〜?」 
「あらあらあら。夫婦喧嘩はマフマフも食べない、って言うわよ〜?」 
「いやだから………」 
「はははっ!冗談きついぜヴェイグ!俺とおまえの結婚式じゃないか!」 
 
俺と……おまえ………とダイゴロウ?(違) 
 
全く状況の読めないヴェイグに反して、クロウ姉弟はうきうきと話を進めている。 
そしてヴェイグは、無性にスールズの青い空が見たくなった。 
 
「ウェディングケーキはピーチパイにしようなっ!」