11:別れ



いやだいやだいやだ 
 
そんなかってが、ゆるされるわけがないだろう 
 
いやだいやだいやなんだ 
 
どうかおれを、おいてかないで 
 
 
 
 
「って、さっきヴェイグってばすごかったのよ〜」 
「くっ・・・クレア!」 
 
ティトレイが、ヴェイグをかばって怪我をした。 
重度の怪我を。 
つまり、致命傷を。 
そして、アニーが手当てをしている最中、ヴェイグはひたすらティトレイに向かって、叫んでいたそうだ。 
 
いやだ、と。 
 
急遽とった宿の一室に、ヴェイグとティトレイは二人きりになる。 
他の仲間は、ティトレイが無事と聞いて安心して出て行った。 
しかし、ヴェイグは部屋から出ようとしないばかりか、俯いてティトレイの手を放そうとしない。 
看病で疲れているはずなのに、ヴェイグにもしっかり休んで欲しい、とティトレイは思った。 
 
「なあ、ヴェイグ。おまえも疲れただろ?部屋戻って休めって」 
「………」 
「おい、ヴェイグ?」 
 
まったく応答がない。 
心配になったティトレイが、なおも話しかけようとした時、ティトレイの手をつかんでいる、ヴェイグの力が強まった。 
 
「ヴェイ――」 
「怖かった」 
「……ヴェイグ?」 
 
のろのろと、ヴェイグが顔を上げる。 
その顔は、怯えでゆがんでいた。 
 
「いつか別れがくることは分かっている。だが、――」 
 
怖かったんだ。 
 
ヴェイグはそう言って、また俯いてしまう。 
きゅ、と、込める力が一層強くなった事を、ティトレイは感じた。 
 
しばし、沈黙の時が過ぎる。 
 
「まだ、その時じゃねぇだろ」 
 
どのくらい、そうしていたのか。 
唐突に、それを破ったのはティトレイだった。 
 
「絶対大丈夫、とか大それたことは言わないけどな、でも、大丈夫だ」 
 
ぽん、とヴェイグに握られている反対の手で、ヴェイグの頭を撫でる。 
 
「な、まだ、大丈夫だろ?」 
「……おまえの言うことは、わけの分からないことばかりだ」 
 
そういって、顔をあげたヴェイグは。 
今にも泣きそうで、笑いそうな、不思議な表情をしていた。