仕事納めも昨日に終わり、今日から正月三日にかけては休暇だ。仕事の都合上、呼び出されることもあるかもしれないが、それでも夏休み以来のまとまった休暇が取れる事は素直に嬉しい。
克哉は実家にでも帰ろうかと思っていた。本当のところは御堂と過ごしたかったのだが、正月ともなれば、流石に彼も実家に帰るだろうと思っていたからだ。
だが、今朝になって突然、御堂は「旅行に行くぞ」と言い出した。なんでも、東伊豆の海岸沿いにリゾートホテルがあり、そこを前々から予約しておいたのだという。しかも、年末から正月にかけて。
「ホテルといってもコテージのようなものだ。各個室に温泉もついているし、くつろげると思う」
あっけに取られる克哉に御堂はそう言い放つと、一人頷く。
「ちょ……っと待ってください御堂さん。お正月ですよ。ご実家に帰らなくてもいいんですか?」
「ん?君はそういうつもりだったのか?」
「いえ……オレは、ただ……」
御堂の実家の事は詳しくは知らないが、いくら多忙な身とは言え、正月くらいは帰省してもおかしくないと思う。口ごもる克哉をそのままに御堂は続ける。
「……最近は実家に帰っていない。無論、今年もその予定は無い。両親も割合そういう面ではドライなので気にはしていないようだからお互い様だろう」
「はあ……」
御堂が家族と親密なのも予想がつかないが、それにしてもなんとも乾燥しすぎた家族関係だ、そう思いながら克哉が生返事を返すと、御堂が問いかけてきた。
「私の事はどうでもいい。それより、君のところはどうなんだ。帰るのか?ご両親は?」
「いえ、オレも別に。MGNに移ってから仕事が忙しいって思っているらしくて、先日、無理して帰ってこなくていいって母親に先制されちゃました」
「そうか……」
御堂は腕組みをして暫く考えている様子だったが、眼を眇めると小さく笑って克哉の顎を持ち上げた。
「MGNは正月まで君を働かせていると君のご両親には思われているのか?」
「そ、そこまでは、ないんじゃないかと……」
ただ、息子が著名な外資系大企業のエリート部門に突然異動になった事に随分驚いていたのは確かだが。御堂の家に越してきてからは、あまり実家とも連絡を取っていなかったので、やはり家族には仕事が忙しいと思われているだろうとは感じている。
そんな克哉の思考を見切ったのか、御堂は滑らかに続ける。
「だが、多少は思われているのだろう。だとしたら、それは上司である私の責任だ。きちんと事情を説明してお詫びせねばならない」
「は?」
話がおかしな方向に転換しているのに、克哉はぽかんと口を開いた。
「ああ、まずはご両親にお願いしなければならないな。『克哉さんを下さい』と」
「はあっ?み、御堂さん!なんですか、それ!」
「時期もいいし、そろそろ私達の関係をお話したほうがいいだろう。さあ、克哉、君の実家に案内したまえ。それとも私と旅行に行くか?」
|