転機

「っあ…あ、ぁ…ぅ」

肉を引き裂くようにして、熱の塊が入ってくる。
自分のはしたない部分を開いて、ギッチリと身体の中を満たす感覚が好きだ。
尻に相手の下腹が当たったことで根元まで全部飲み込んだんだと分かると身体が勝手に身震いし、この後の快楽を予感してシーツに頬を擦り付けた。
 大きく息を吐き出して上半身をベッドに沈ませ、腰を高く突き出す。
 焦らすつもりなのか一向に動いてくれない男に、軽く腰を揺すってネダって見せた。

「ん、ん、っ…動い、てぇ…」

 肩越しに振り返ると、相手の唇が下品な笑みを浮かべて身体を倒してくる。
更に奥を開いてくる男のペニスに呻く俺に、耳元で卑猥な、俺を貶める言葉を吹き込む。

「ぅっ、あぁ…ん…」

そんな言葉にさえ感じてしまう事が、一般的な15歳ではないのを理解はしている。
ゆっくりと引き抜かれていくペニスの感触に全身が痺れたように痙攣し、再び内壁を押し開くように突き進んでくると身体の奥深い所にズンと響く衝撃に頭が真っ白になった。

「あぁ…あ…ぁ、あ」

男の大きな手が二の腕を掴んで後ろに引っ張り、更に奥を暴こうと腰を押し付けてくる。
上体が完全に起き上がって膝で立つ体勢になると、前から伸びてきた別の男の腕が俺の両足を抱え上げた。

「んう…っは、ァ…」

自らの重さで更にペニスを奥へ迎え入れ、苦しさとそれを上回る快楽に後ろの男に背中を預けて身を捩る。
前にいる男に向かって足を開きペニスを咥え込むだらしない場所を見られて、その男が欲にまみれた狂暴な目でこちらを見ているのが堪らなく心地好かった。

「あっ、ぅんん…っ」

不意に、後ろの男が両手で尻の肉を掴む。
体勢の安定を求めて腕を後ろに回し首元に手をかけた。
男は不安定な体勢に気を払うわけでもなく、執拗に両手で揉みしだいてくる。

「んん…ぁあ…っひぃ…!」

気持ちいいかと問われて頷くと、不満げな男が片手を尻から離して右の乳首を強くつまみ上げる。
ビリビリと強烈な電流にも似た痛みを感じて悲鳴を上げた俺は、その中から疼くような快楽を拾い上げて陶然とした。

「ぁ…き、気持ちイイ…んぁ…あ、あっ…イイ…!」

指の腹で擦り上げられて胸を反らせた俺は、前にいる男が俺の足を抱え直して肩にかけ体を密着させてくるのに気付く。
抱え直す時の僅かな振動で内壁を擦られて鼻から甘い声を漏らしたが、そのアナルにペニスの先端を押し当てられて驚いた。

「んあっ…、え…何…」

既に縁を広げてペニスを咥えているアナルをこじ開けるようにグリグリと押し付けられ、圧力に負けた縁が新たな肉を受け入れ始める。

「あぁっ…!嫌…ダメっ…」

無理だと首を横に振っても男達は前後から俺を挟み込んで解放してはくれず、浅ましく口を開く場所を凝視している。

「はあぁぁ…っ!」

ズルンと先端の膨らみが呑み込まれたのと同時に喉から信じられないくらい甘い声が漏れ、俺は男達にまた卑猥な言葉で貶められる。

「は、あ、っあ…裂けちゃ…ぅ…あぁ…」

容赦無く押し込まれる2人分のペニスに頭がどうにかなってしまいそうで、自分がいつの間にか射精していたのにも気付かなかった。
気付いたのは前にいる男が俺の腹にベッタリと付着する精液を指で拭ったからだった。




「永四郎、永四郎!」

大きな声をかけられて顔をあげると、甲斐クン達が怪訝そうな顔をしてこちらを見ていた。
手元を見下ろすと冬休みの宿題が途中で放り出されていて、みんなで宿題を片付けようと集まったのを思い出す。

「永四郎、とぅるばらんけ」
「あ、あぁ…スミマセン」
「えー、永四郎には刺激が強すぎたんばぁ?」

ニヤニヤ笑う平古場クンがテーブルの向こうから声をかけてくるのを、俺はぼんやりと聞き流した。
BGM程度の気分で付けていたテレビで「ヒメハジメ」と言う言葉が聞こえ、そこから平古場クンと甲斐クンの猥談が始まったんだと思い出す。

どんな相手がいいか、から果ては体位やテクニックのはなしまで。
辟易しながら聞いていたがいつの間にか俺の方が妄想に耽ってしまっていたらしい。

「馬鹿なこと言ってないで宿題しなさいよ」
「チェー、永四郎ノリ悪いんどー」
「やめとけって凛、くにひゃーがエロ話に乗らんのはいちもさ」

乗れるわけないでしょう、と心の中でだけ返して宿題に没頭する振りをする。

彼らや自分の同級生は知らない。
俺が男に抱かれることでしか欲望を解消できなくて、実は既に何人かと関係を持っているなんて。
多少いきすぎた願望を持っている事も、実は自覚はしている。
 一度に二本とか身体を拘束されるとか傷つけられるとか、現実は妄想ほど甘くないと分かっているけど機会があれば試してみてもいいかなと思う自分も確かにいて。
だから正直こういう話題は苦手だった。

「…誰にだって苦手はあるばぁ、やめれ…」

それまで黙っていた知念クンが平古場クンを止めたので、矛先はそちらに向かう。

「だぁ、代わりに知念が喋れよ。やーはどんないなぐがしちどー?」
「…でかい奴」
「はぁ?」
「背のでかい奴。小さいと潰す」

知念クンは手元のテキストから目を離さずに言う。
普段は俺と同じく猥談の類いには参加しない彼なので、少し驚いた。

「どれくらいよ」
「…180近い奴」

いねーよ、とゲラゲラ笑いだす平古場クンと甲斐クンには目もくれず、知念クンはシャープペンシルで問題を指し示す。

「永四郎、ここ分からん」

苦手な科目を潰し合おうと言うことで知念クンは地理の宿題を持参していて、先程からいくつか俺に質問してきていた。
平古場クンと甲斐クンに至っては全て手付かずの宿題を丸ごと持ってきていたが。

「うん…、え?」

シャープペンシルが指した問題は既に答えが書かれていて、思わず彼の顔を見上げると知念クンはチラリとこちらを見てからまたテキストに視線を落とした。
問題の隅っこ、テキストの余白に彼の字で何か書かれている。

『永四郎、身長180ぐらい?』

固まったまま頷くと、その横に『そういう事』と書き足してパタンとテキストを閉じてしまった。

「知念終わったさ?」
「終わった」
「わんの手伝え!」
「わんのも!」

知念クンは自分の前に積まれていくテキストを苦笑気味に眺めて、結局それには手を付けずに立ち上がった。

「コンビニで何か買ってくる」

平古場クンと甲斐クンが次々に注文するのを頷いて聞いていた彼がこちらを向くと、頭を屈めて覗き込んでくる。

「永四郎は」
「…じゃ、あ…お茶を」

知念クンが出ていくと、目の前の二人はテキストに向かってようやくシャープペンシルを走らせる。
けれども今度は自分の方が宿題どころではなくなって、テキストを見つめるしかできなかった。

知念クンはいつ俺の性癖に気付いたんだろうか。
学校では極力そういう素振りを見せないように振る舞っていたはず。
実際に付き合っていた相手は2、3人だったが、みな年上でこの道の先輩であり自らの生活もある口の堅い人間ばかりだった。
一番最近別れた相手とも大して問題なく円満に別れたし俺にとっては余計なお世話だが、次はちゃんと好きな人と恋愛をしなさいなどと優しい言葉までかけられた。
連れ立って歩いている所でも見られたか、いや人前でベッタリくっついて歩くのはそもそも嫌いだしそんな事をした覚えもない。
いくつも浮かぶ可能性をその度打ち消して、自分が気を抜かず用心深く性癖を隠してきたのを確かめてからようやく知念クンも同じ性癖を持っているんじゃないかと思い至った時には背中にジットリと汗をかいていた。

突然俺の携帯が鳴り響いて、さっきまで散々うるさくしていた二人が文句を付け始める。

「えー、電源切ってろよ」
「勉強中やっし」

苛ついたら負けだと適当にあしらって鞄から取り出すと、画面にはメールの着信が知らされていた。
誰からだろうかとメールを開けば、差出人は知念クンだった。

『やっぱり忘れて欲しい。嫌われたら、困る』

 たったそれだけの短いメールでも、俺には彼が葛藤していたのだと分かる。
 驚いていてろくに反応も返せなかったから、知念クンは軽蔑されるとか、気持ち悪いと思われるとか、そう思ったんだろう。

 別にこれまで知念クンをそういう対象として、と言うか元々年上が好きなので同級生と付き合うなんて考えても見なかったけれど。
 素直に嬉しいと思った。

「えー、永四郎。にやにやさんけ」
「ぬーが、彼女ばぁ?」

 いつの間にか俺の方を見ていたらしい2人が、冷やかして携帯を奪おうと手を伸ばしてくる。
 その腕を逃れながら頬を緩めていた自分に気付かなかった事を恥じた。

「別にそういうんじゃないです」
「えー、ゆくさーやっし」
「絶対いなぐだばぁ?!」
「違います」

 2人が飽きたのを見てから携帯に視線を落とし、返信ボタンを押してメール作成画面を起動する。
 少し考えてから、やはり短く返事を返した。

『忘れません。嬉しいです』

 送信ボタンを押すのに柄にも無くドキドキして、送った後はすぐに携帯を鞄の中にしまいこんでしまった。
 別にはっきり好きだと言われたわけでも、俺が知念クンを好きなわけでもないのに、と頭ではそう思うけれどまるで初めて人を好きになったときのような気持ちだった。

 しばらくして帰ってきた知念クンは全く俺の方を見てくれなくて。
 それでも顔が真っ赤になっていたから平古場クンと甲斐クンがどうかしたのかと、知念クンに詰め寄る。

 結局知念クンは、その日帰るまでずっと平古場クンと甲斐クンに押し付けられた宿題に没頭する振りをして2人をやり過ごしていた。


END

2008/01/20:完成
2008/02/02:UP