沖縄には地元の人間しか泳ぎに来ない浜辺がいくつかある。
今日知念が来た浜辺も、普段は観光客は勿論地元の人間も余り来ない穴場中の穴場だった。
全国放送で秋だの木枯らしだの言われても、沖縄では未だ十分に海で泳げる季節だ。
部活のオフを利用して泳ぎたいと言い出した平古場と甲斐に引きずられて、知念はコンクリートの堤防から砂浜を眺める事になった。
休みの日までどうして君たちの面倒を見ないといけないの、そう言って渋った木手も駄々を捏ねる2人に結局は懐柔された。
着いた途端に荷物を砂浜に放り出して家から空気を入れてきた浮き輪やエアーマットを手に駆け出していく平古場と甲斐を視線で追いかけて、知念は堤防から砂浜へ降りていく。
2人が放り投げた荷物の側まで来ると、隣でレジャーシートを広げている田仁志を振り返った。
「えー、やーは?」
「わん腹ごなし」
「あぁ」
田仁志が、田仁志のためだけに持ってきた大きなクーラーボックスの中にはキンキンに冷やしたジュースと凍らせたアイスクリームなどが入っている。
それに目を付けた平古場たちが一度自宅から持ってきたジュースやお菓子をその中に放り込んだが、遊びに夢中になっている間に田仁志が食べた事があって大喧嘩になった。
その田仁志曰く、俺が持ってきたクーラーボックスに食い物を入れた時点でその食い物は俺の物だ、と言う理論らしい。
木手がどうにか今回だけはと取り成しても一向に頷かなかったので、以後『慧様のクーラーボックス』は田仁志の胃に直結していると専らの噂だ。
「知念は?」
「あぁ…うん」
「やーいっちも泳がんばぁ?」
「田仁志クン、余り食べると泳いだときに気分が悪くなりますよ」
遅れてやってきた木手の声に、知念はホッとした。
レジャーシートの上に荷物を置いた木手は、ジーンズのボタンを外しながらクーラーボックスを開ける田仁志に注意を促す。
細い指先がジッパーを下ろしていく様を眺めていた知念は、そんな自分を木手がじっと見ていたのに気付いて慌てて顔を反らした。
反らす直前に木手が首を傾げたのに気付いて頭に血が上るのを感じながら、近くに見える岩場を指差す。
「わん、ちょっとあっちいちゅんど」
「そう、俺も少し泳いでくるから、田仁志クンしばらく荷物番お願いね」
「おー」
足早にその場を後にしながら、暢気に食べ物を口に詰め込んでいた田仁志を羨んだ。
背後で平古場と甲斐が木手に絡む声が聞こえてきて、自分だってその輪の中に入れるなら入りたいと唇を噛む。
少し離れた岩場の足場の悪さに眉を潜めながら波後寄せる突端まで行くと、そこからはしゃぐ平古場たちを眺めた。
浮き輪にしがみついていたりそれと一緒にひっくり返ったりして、なかなか楽しそうだと思う。
その内にどちらが先にエアーマットの上に立てるか、とでも言い出したのか甲斐がマットを支え平古場がその上に立とうと四苦八苦していた。
海に落ちる派手な音とその度に上がる笑い声を遠くで聞きながら、知念は小さくため息を零してその場にしゃがみ込む。
そしてふと、さっきまで二人に絡まれていた木手が居ないのに気付く。
「知念クン」
「っ…永四郎?」
気づいた途端に本人から声をかけられて驚いた。
慌てて辺りを見回し木手を探すと、岩場の向こうへ回りこんだ海面、平古場と甲斐が居る方向から丁度反対側のその場所からこちらを見上げていつもの仕草で眼鏡を上げている。
木手はいつも眼鏡をかけたまま泳いでいた。
錆びたりしないのかいつも気になっていたが、聞いたことは無い。
「びっくりした?」
「あぁ、全然気付かんかったさ」
「潜水していたからね。…知念クンは、やっぱり泳がないの?」
「あぁ…うん」
眼鏡のことを聞かない知念と同じように、泳がないことを木手は何も聞いてこない。
甲斐や平古場は度々知念に訳を尋ねていたが、腹が痛いとか調子が悪いとか適当な事を言っておけば普段から言動が良く分からないと言われている分誰も気にしなくなった。
それでも木手は気にかけてくれているのか、岩場や浜辺で時間を持て余している知念に時々声をかけてくる。
「馬鹿なことしてるね」
「え?」
「あの二人」
バッシャーン、とまた水しぶきが上がった。
今度は甲斐が落ちたのか、平古場がエアーマットを抱えて笑っている。
ぼんやりとそれを眺めていたら海から上がってきた木手が隣に立って、手櫛で髪を後ろへ撫で付けた。
項からツルツルと零れ落ちていく水滴がなだらかな曲線を描く背筋を通って濡れて張り付くウエスト部分へしみ込んだ。
「あんなの、簡単じゃない」
「永四郎は…」
常人離れしたバランス感覚を持っているから、と続けようとした知念はこちらを向いた木手から慌てて目を反らす。
しゃがんでいる知念の隣に立つ木手の海水で張り付いた水着が視界に入らないよう、また平古場たちへと視線を向けた。
「何?」
「いや、…永四郎は簡単に立てるばぁ」
「うん」
自分達が見ているのに気付いたらしい平古場が、おーい永四郎、と向こうから呼んでいる。
彼らも木手ならと思ったのだろうか、こっちへ来てやってみろとしきりに叫んでいた。
「じゃぁ、ちょっと行ってくるね」
「あ、…永四郎」
思わず小さな声で呼び止めたが、木手が海に飛び込む水音に混ざって掻き消えてしまったと知念は思った。
けれどその声を木手は聞き取ったらしく、水面から顔を出してこちらを振り返る。
「何?」
「…相談、あるんど」
「…テニスの事?」
「あらん、やしがくまじゃ言えん」
何かを見透かそうとするようにしばらくこちらを見上げていたが、知念が目を反らさずに見返していると軽く頷いてくれた。
内心ホッとしたのを抑え込んで、木手の申し出に頷く。
「じゃぁ、帰りに知念クンの家に寄ってもいいですか?」
「あぁ、ゆたしく」
「うん、それじゃ」
小さな水音を立ててするすると泳いでいく褐色の背中を眺めながら、知念はその場で立ち上がった。
足場の悪い岩場から砂浜へ戻ると、レジャーシートの側で準備運動をしている田仁志に気付く。
腹ごなしを終えて海に入りたくなった彼と荷物番を交代してやるため、知念はそちらへ向かって歩き出した。
木手なら大丈夫だと思う。
彼は知念の知っている同級生の中でも一番大人びているし、知識もある。
だからきっと、笑わないで真摯に聞いてくれると思った。
正直、誰かに言わずに一人で抱え込んでいるのは重い。
甲斐や平古場に暴露してからかわれて笑い飛ばすのもイイかと思ったが、それには少し勇気が要った。
それにもし、万が一彼らが本気で心配するような状態だったらそれこそ立ち直れない。
だから、まずは木手に聞いてみたいと思った。
「で、どうしたんですか?」
夕方、腹が減ったから飯を食いに行くと言った他の三人と別れ、知念は自分の部屋に木手を招いた。
まだ濡れた髪をタオルで神経質に拭き取りながら、それでも本題に切り込んでくる。
場繋ぎにと麦茶をコップに注いでいた知念は一瞬それらを取り落としそうになるが、慌てて両手に力を込めて阻止した。
「相談があるんでしょう?」
「あいー…」
木手の前にコップを置くと、律儀に礼を言う。
けれどそれには手を付けることもなく、一度切り出したのだからさっさと白状してしまえとばかりにじぃっとこちらを見つめていた。
「えー、ちょっと背中向けて」
「は?」
心底怪訝そうな顔で言われても、自分にはもうこの方法しか思いつかない。
うり、と手で促すと木手は渋々といった感じで背を向け、これでいいですか、と呆れたように言った。
「ちょっと待ってて」
「はいはい、わかりましたよ」
何だか母親みたいな返事だと思いながらベルトに手をかける。
その音は当然木手にも聞こえているから、濡れた後頭部がカクンと傾けられるのがこちらからも見える。
「ねぇ、いったい何なんですか?変なことじゃないでしょうね?」
「あらん、真面目な話」
「そう」
ジーンズと下着を一緒に脱ぎ捨てて、上半身に身に着けているTシャツに手をかけて一瞬考える。
こっちを脱ぐ必要は無いと考えて手を止め、その場に正座して座った。
「こっち向いていいさー」
「もういいの?ねぇ、知念クン。相談があるな……」
知念のほうへ身体を向けて座りなおした木手は、下半身だけを露にしているのを見て言葉を途切れさせる。
多分、こんなに驚いた木手の顔を見たのは自分だけだろうと知念は思った。
ポカンと口を開けて不躾とも思えるぐらい全身を眺めた後、取り繕うように眼鏡を上げようとしたがハッとして片手で外す。
それから知念が脱ぎ捨てたジーンズを引っ掴んでこちらに突き出した。
「ちょっと知念クン!何考えてるの!さっさと履きなさいよ!」
「そうじゃなくて…」
「何!一体なん、だって言うの…、え?何、…それ…」
うっすらと頬を上気させて知念の顔だけを意識的に見ようとしていた木手の視線が再び下に落ち込み、途端に言葉の勢いが弱くなっていく。
けれどすぐに自分が何を見下ろしているのか気付いて目を反らし、片手に持っていた眼鏡をかけなおした。
そうしてまたチラリと知念の股間に視線を走らせるが、慌てて顔を背ける。
「永四郎…相談って言うのは…」
「何…よ」
「わんの…くぬ大きさなんだけど…」
「大きさ、って…」
木手の反応を見て知念の疑念は確実なものになった。
やはり自分は、人よりも陰茎が大きいらしい。
それに気が付いたのは、中学一年生の時に銭湯に行った時だった。
近所の銭湯に行った為小さい頃から自分の事を知っている大人達と偶然顔を合わせ、その時にでかいでかいと笑い混じりにからかわれて女湯まで聞こえているのにと恥ずかしく思った。
けれどその時は単に他の中学生に比べて大きいだけだと思っていたし、体が大きいからその分成長も早いんだと考えていた。
深刻さを帯びたのは中学2年生になって、初めて年上の彼女が出来た時だった。
初めて彼女を家に呼んだ時、服を脱いだ自分に彼女は顔を引きつらせて逃げて行った。
後にごめんねと彼女は謝ったものの、付き合いはそこで終わった。
流石に気になって色々調べてみたら、自分の大きさは日本人の平均を大きく逸脱しているらしい事を知った。
物差しで計る自分がとても情けなかったけど、嬉しいとは思えなかった。
自分より確実に経験のある年上の女の子が逃げ出すほどなら、これから先自分に恋人が出来てもやっぱり嫌がられるかもしれない。
「やっぱり、大きいばぁ?」
座り込んだまま肩を落としているのに気付いたらしい木手が、とりあえずといった様子で知念の膝の上にジーンズを落としようやくこちらを向いた。
「あんせー、わんぬ…変やっし」
「変、って言うか…」
「病気か、…なんかかやー?」
びょうき、と木手の唇が知念の言葉を反芻する。
突然の事態にまだ頭の中が混乱して上擦った声で喋る彼は、何度か深呼吸を繰り返した。
「いなぐに、逃げられたんど」
「彼女居たの?」
「中2の時。もう別れた」
「…その、ソレが…原因で?」
頷く知念に木手はずれてもいない眼鏡をせわしなく上げ、身体ごと90度回転させて横を向いてしまう。
正視に耐えられないくらいなのかと思って彼の顔を覗き込もうと身を起こしたら、途端に片手を突き出されて近づくなと示された。
「えー、そんなに…」
「ちょっと、立ち上がらないで!」
「……永四郎…」
先ほど知念が出した麦茶を手に取った木手はそれを一気に飲み干して、長く息を吐き出してようやくいつもと同じ声で言う。
「あのね、そういうのは…個人差、だから」
「やしが、逃げ出すほどって…」
「それは…。ねぇ、知念クン、それ…ちゃんと使えるの?」
「使えるって…?」
排泄的な機能は別に問題ない。
痛いだとか、出ないだとかの問題があればとっくの昔に病院へ行っているし、そこまでになれば流石に一人で悩む事はないはずだ。
「別に…トイレは普通に…」
「そ、そうじゃなくて…一度彼女に逃げられてるんでしょう。自分でならともかく、他人とそういうことになった時にちゃんとできるの?」
木手にそう言われて、別の不安が知念に押し寄せてくる。
確かに自分で性衝動を処理する場合には問題なかったが、他人とならどうだろう。
あれから彼女が出来ることも無かったし、知念自身がその大きさばかりに気を取られて勃起するかどうかなんかは二の次だった。
「わ、わからん…」
「あからさまに逃げられたら…ショックよね。もしかしたら、ダメかも…しれないですよ」
四つん這いになった木手がこっちに近づいているのにも気付かず、知念はくしゃくしゃになったジーンズの下の自身を見下ろす。
まさか、そんな、自分でするときは大丈夫だし、と気休めの言葉を頭の中で思い浮かべるが、実際に試す機会も無い知念が安心できるわけも無かった。
「ねぇ、知念クン。試してみようか」
「…ぬーがいゆってるばぁ?」
「だから、俺が触ってみようか…って」
ゴクリ、と木手の喉が上下したような気がしたが、そんなことよりもその申し出に驚いた。
まともに見られないくらいじゃなかったのかと思ったが、木手はさっき自分が乗せたジーンズを掴んで緩く引っ張っている。
今にも奪われてしまいそうなそれを慌てて掴んで阻止すると、妙な早口で木手が説得してきた。
「俺が触ってちゃんと勃起したら女の子でも大丈夫ですよ。ダメでも俺が男だから仕方ない」
「そうか…?」
「そうですよ。試しに触ってみて大丈夫なら安心すればいい。ダメだったらダメで女の子なら大丈夫かもしれないじゃない。ね?不安は早く取り除いた方がいいですよ」
緩かった力はグイグイとジーンズを引くまでになり、改めて自分の性器を他人に見られると言う状況に何だか急に恥ずかしくなった。
さっきまで自分で見せていた知念が思うことではないのだが、ペニスが正常かどうかの確認では無く性的興奮によって勃起するかどうかの確認をされるのはただ見せるのとは違う気がする。
「え、永四郎…」
「ね?」
「…気持ち悪くないさー?」
「俺は別に気持ち悪くないよ。個人差があるものだから、大きい人もいれば小さい人もいるの」
そうじゃなくて他人の男性器を触って勃起させることが気持ち悪くないのかと問うたつもりだったが、木手には上手く伝わっておらず的外れな答えが返ってきた。
答えながらも引っ張る力を緩めない木手にとうとうジーンズを奪われて彼の体の後ろに放り投げられてしまった。
「えー!」
「何よ。さっきは自分で見せたじゃない」
「それとこれとは…っ、え、しろ…っ」
スルリと太股を這った指先が萎えたペニスを握り込み、思わず声が詰まった。
背筋を駆け上がっていくのは覚えのある快楽で、反射的に力の入った膝頭が小さく跳ねる。
「長いだけじゃなくて太さも結構あるみたいですね…」
感心するように呟いた木手が、根元を掴んで揺さぶった。
下腹の奥のほうがギュウッと熱くなって、ペニスが芯を持って頭を擡げ始める。
緩慢な仕草で根元から先端をゆっくりと何度か擦り上げた手が、長さを測るように裏筋を指先で辿っていった。
眼鏡の奥からまじまじとペニスを見下ろす木手は、さっきまで身体ごと横を向いていたとは思えない。
観察するような、それとは少し違うような瞳で熱心に見下ろしていた。
「っは…永、四郎…も、大丈夫どー?」
「勃起しただけじゃ大丈夫とは言えませんよ…途中で萎んだりしたら、更にショックを受ける事になりますよ」
怖いことを言われて黙り込んだ知念に、木手は薄く微笑を浮かべる。
すっかり勃起しきったペニスから一旦手を離すと、角度を持ったそれがビクビクと脈動していた。
「確かに、人より大きいですね」
「あんまり見ないでほしいさ…」
「どうして?さっきは自分で見せたのに」
それは今とは意味が違うと言う前に両手で握り込まれ、人差し指で先端をくるくると撫で回していく。
窪みから先走りが溢れ出して、知っているはずなのに大きさは比べ物にならない快楽が腰に絡みついた。
「っ、はぁ…っ、ぁ…」
「…っ、気持ちイイ?ちゃんとイけそう?」
本当は、もっと前の段階で木手がおかしいと気付いておくべきだった。
すっかり知念の足の間で両膝を付いて座り込んでいる彼は、根元の辺りをゆったりを扱きながら利き手で括れを撫でたり袋を突付いたりと好き勝手に弄繰り回している。
勃起したペニスにはどんどん血液が流れ込んで、尖った物で突付いたら途端に破裂してしまいそうなほどに膨れ上がっている。
少しでも激しい刺激を受ければ射精できる事は木手から見ても丸分かりなのに、ただ緩慢に撫で回しているだけの動きを繰り返されて知念は頭がおかしくなりそうになっていた。
「ぁ、…ぅ、う…えいしろ…っ」
「どう?」
「ん…っ、あらん…っ」
「何?どうしてほしいの?」
後から後から溢れ出すぬめりを全体に塗り込めて、ぬちゅぬちゅと空気と液体の混ざり合う音をわざと立てているように思えた。
気持ちイイとしか考えられないのに、木手の手で射精する事が出来ない。
「も…っと、ちゃんとし…」
「ちゃんとって?」
上目遣いでこちらを見つめて唇の端を持ち上げる彼が、ぺろりと舌先で自分の唇を舐める。
知念が木手の手で勃起させられて息を上げているのを見て、木手自身が興奮しているのだと知った。
「っはぁ、はっ…ァ…っ」
「イけそうにない?困ったね」
「ん…っ…ぅあ…」
心臓が体の中から激しく胸を叩いて、血液の周りが激しくなる。
なのに頭には空気も血も回っていないのか、意識はくらくらして白く霞んできた。
出したい、射精したい、同じ事ばかり考えているのに、口から出るのは呻き声と犬みたいなはぁはぁという呼吸音だけだ。
そこへ、木手が内緒話をするような小さな声で問いかけてくる。
「手でダメなら、舐めてあげようか」
「なめ…?…っは、はっ…ん…ぅっ…」
「舌で舐めて、イかせてあげようかって。舐めてもいい?」
イかせてくれると思ったらもう何度も頷いていて、木手の言葉の半分も理解してはいなかった。
知念の様子を見て笑みを深くした木手が屈んで根元に唾液を絡ませた舌をベッタリと付けて舐め上げる。
その瞬間、訳も分からないまま強烈な快楽が脳天を突き上げていって、引きつった声が知念の喉から絞り出された。
ゴプッと音を立てそうな勢いで零れた先走りを、木手の舌先が掬い取っていく。
「っひ、ぐ…っ!!」
「どう?」
「はっはっ…永、し…」
根元に人差し指を親指を巻きつかせた木手の指先同士が、既に触れ合わないまでにペニスは膨らんでいる。
硬く尖らせた舌でグリグリと筋をマッサージされて、意図せず腰が跳ね上がった。
「…すごく大きいね。ねぇ、知念クン…イきたい?」
「イき、っはぁ…出したいっ…!」
先端が、木手の口の中に咥え込まれる。
顎を目一杯広げている様は少し辛そうではあったが、今の知念にそこまで気を使う余裕は無かった。
熱く濡れた口の中の感触を味わう間もなく、根元から括れの部分までを木手の手が激しく擦り上げていく。
同時にジュルジュルとはしたない音を立てて先端を吸い上げられ、思わず彼の頭を片手で押さえ込んだ。
一瞬の浮遊感とすぐに訪れる射精の快感に、震える歯を噛み締めて精液を噴き上げる。
「っふ、ぅ…うっ…」
「っぁ…あぁ…っ、うぅ…ッ!!」
二度、三度、と精液を噴出させるたびにペニスが跳ね上がって、木手の口内を満たしていった。
力の抜けた身体が後ろに傾いていくが、ベッドの端にぶつかって止まる。
だらしなく足を開いたまま脱力して満足そうなため息を零した知念は、自分の股間から顔を上げた木手の喉がゴクリと音を立てたのに気付いて驚いた。
「…えー…の、飲んだんどー?」
荒い息の下から問いかける知念に、起き上がった木手は床に手を付いたまま身を乗り出してくる。
快楽の余韻から知念がまだ戻っていないのをいいことに、うっすらと微笑んだままの唇が頬に触れた。
「知念クン」
「ん…?」
「こんな時に言うのもなんだけど…俺ね、知念クンが好きなの」
「……あい?」
次第に熱が引いていくのと同時に、頭に冷静さが戻ってくる。
足の間にぺたりと横座りした木手がいて、自分は下半身だけ何も身に着けないで足を開いて座っていた。
自分のペニスが異常でなく、性的な機能もちゃんとしていることが分かった今、この状態は余りにもあんまりだ。
慌てて身を起こした知念は木手の後ろに手を伸ばす。
奪われたジーンズを取り返して股間を覆うと、すぐにでもキスできそうな場所に座っている木手から距離を取るため背後のベッドに上がった。
けれどジーンズを取る時には動かなかった木手が一緒になってベッドに上がってきたため、距離を取る事は出来ず逆にぴったりとくっつく形になってしまう。
木手の身体は熱があるかと思うほどに熱く、間近で見た瞳が潤んできらめいていた。
「え、永四郎…」
「その、ね…知念クン、俺で…すごく大きくなったじゃない?」
「う、…うん…」
「で…俺だったら、逃げたりしないし…ね」
ね、と言われても知念には彼が何を望んでいるのか分からない。
手どころじゃなくしゃぶってもらった負い目があるし、木手のおかげで自分の悩みが杞憂だった事も分かった。
「えー…ぬーいゆってるばぁ?」
「うん、だから…」
ジーンズの硬い生地を掻い潜って再び木手の手にペニスを握られて、グッと息が詰まった。
いつの間にか知念の腰を跨いでマウントポジションを取られているため、逃げ出せる状況ではなくなってしまう。
その体勢でヌルヌルと扱かれて再燃する欲に、知念はこれはちょっとヤバイ状況なんではないかと考えた。
けれどそれも、生み出される快楽に霞んで消えそうだった。
「最後までしてもいいかなって…」
「さ、最後…」
「そう」
思わず生唾を飲み込んだのは、仕方が無い。
知念だって正常な中学三年生だ。
性的な事に対する興味は山盛りで、悩みのなくなった今はそれが加速する。
「異常じゃなくても、同じ年くらいの女の子はやっぱり怖がると思いますよ」
「…だーるな…」
「でも俺なら、ちゃんと知念くんと出来ると思うの。幸い、知念クンは俺が触っても興奮してくれるみたいだし」
ここでようやく、知念のために試すと言いながら本当は木手が自分でも知念が勃起するかどうか試していたんだと気付いた。
「永四郎…やー」
「ごめんね、でも好きなんです。だから…」
ちょうだい…、と舌足らずに耳元で囁かれて背筋を駆け上がっていったのは紛れも無く欲情の火種だった。
勢いを増すペニスを掌で感じて心底嬉しそうに笑う木手が片手で毟り取るように外した眼鏡をベッドの下に放り投げ、跨いでいた知念の腰から降りて足の間に座り込む。
「やしが…やーは、いきがど?」
「…大丈夫よ、知念クンが好きだもの」
その時見せた木手の表情は、妙に穏やかなのに切羽詰った複雑な顔だった。
このまま木手の欲求に応えてしまうのは容易いが、果たしてそれがお互いにとっていいことになるのか知念には分からない。
しかしここで拒んだら木手がもう二度と自分には近づいてこない気がして、知念はただじっとしている事しか出来なかった。
鞄に入っていたハンドジェルで、木手は自分のアナルを丁寧に慣らした。
始めは指一本しか入らなかったそこを、時間をかけて四本呑み込めるように広げて知念を受け入れられるよう準備を整える。
汗ばんだ肌をうっすらと赤く染め目を伏せて後孔を指で探る姿に、知念は言いようの無い興奮を覚えた。
「んっ…、ぁ…あ…あ、あ…」
先端が木手のアナルに触れて、ゆっくりと押し込まれていく。
縁が少しずつ広がっていく度に敏感な先が熱く濡れた場所に包まれていくのを、知念はただ息を切らしながら凝視していた。
エラの張った一番太い部分の手前で木手が動きを止める。
不安に駆られて彼を見上げた知念は、薄く微笑んでいるのを見てゾクリと身を震わせた。
「全部、…呑み込んであげる…から…」
囁くような声で言った木手の腰が、更にググッと下がってくる。
狭い肉の中に埋没させられていくペニスは、痛みを感じるほどに硬くそそり立っていた。
知念でさえ自分で処理する時よりも更に大きいと感じるそれを、木手は怯まず笑みを浮かべて受け入れていく。
「あ、はっ…あ、ぁ…あ、あ…あぁっ…!」
「う、ぅ…っ!!」
グプ、と音を立てる勢いで先端が全て呑み込まれた。
思わず目を瞑って歯を食いしばると、目の前に星がいくつも飛び交っていく。
沸き立つような熱が腹の底から湧き上がってきて、木手の腕を掴んだ。
「永四郎…っ!」
「も、少し…ぃ、…あっあっ、っはぁあぁ…っ」
木手の尻が触れる感触がするのと、長いため息のような声が聞こえるのは同時だった。
目を晦ませる快楽に耐えて何とか目を開けた知念は、自分の上にすっかり座り込んで満足げな顔をしている木手を見上げる。
「永四郎…」
「ほら、俺なら大丈夫って…言ったでしょう…」
「痛、くないんど…」
「…どうして痛いの…知念クン、なんだから、…気持ちイイに決まってるじゃない」
立てた膝に手をやって開かせると、恥ずかしいから、と言われる。
けれど知念はどうしても見たかった。
本当に、自分のペニスが誰かの体内に受け入れられるのかと。
「っ、ね…あんまり見ないで…っ」
限界まで開ききって赤い粘膜を覗かせている縁は、確かに自分を根元まで呑み込んでいる。
テラテラと濡れ光るそこに指先で触れると、キュウと窄まって痛いくらいに締め付けてきた。
「しんけん、痛くないんど」
「痛くないよ…すごく気持ちイイ…」
うっとりした声で言われて、頬を両手で包まれる。
頬を辿って首筋を撫でていった手が胸に当てられ、木手はコクリと喉を鳴らしてそこへ口付けた。
「っ、永四郎…」
知念の頭の両脇に手を付いた木手は膝を倒して跨いだ腰を挟み込むと、身体を前後に揺すり始める。
大きな動きではないが、熱い粘膜に擦られる生々しい感触に知念は何か縋る物を探して木手の太股を掴んだ。
「ん、っぁ…あ…」
結合部から互いの体温で蕩けたハンドジェルが泡立つ音がして、反射的にそこへ視線を落とす。
腰を擦り付けるようにして動かしているため繋がっている場所は見えないが、そこには木手のペニスが勃起して先端から雫を零していた。
「気持ち…イイさぁ?」
「あ、…あ、っ…っふ、ぅ…ん、イイ…よ」
自分とのセックスで木手が快感を得ている。
こちらから動いてしまえば苦痛を与えてしまいそうでじっとしているしかないが、彼が今知念のペニスを体内に受け入れて身を捩って声を上げているのが嬉しかった。
キュッと唇を噛み締めていたかと思うと堪えきれないようにはぁっ、と大きく息を吐き出し、唾液に塗れた唇を自分の舌で舐めていく。
下からその様子を眺めていた知念は、そこへ触れたくなって体を起こす。
背後に手を付くと、胸に当てていた木手の手を引き寄せて自分の首に回させた。
「えー、永四郎…っ」
「んっ、何…っぁ…ア、あ…」
知念が起き上がった所為で角度が変わったのか、上擦った声を上げて体の動きを止める。
「キス…したいさ」
「え…?」
「あんせー、キス。嫌か?」
「そうじゃない、けど」
唇を寄せようとする知念にちょっと待って、と身を反らして避けた木手が辺りに視線を走らせて腰を浮かせる。
ズルズルと木手の体内から抜けていくのに驚いて、咄嗟に浮き上がる腰を掴んで引き止めた。
半ばほどまで覗いた自身は、見慣れている自分でさえ驚くほど膨れ上がって血管を浮き立たせている。
「まーいちゅんど?」
「だっ…て、知念クンの飲んだじゃない。気持ち悪いでしょ。さっきのお茶で濯ぐから」
多分、恐らく木手であっても今の自分の状態を見たらちょっと引くんじゃないかと知念は思った。
浅ましい考えだとは自分でも思うが、ここまで来て嫌だといわれたら困る。
「気にせんばぁ」
「でも…」
後頭部に手を当てて自分の方へ引き寄せると、言い淀む唇を塞いだ。
少し開いた隙間から舌を差し入れ、奥で縮こまっている木手の舌を捉える。
「ぅ、ん…っ、ん」
クチュ、と唾液の絡む音が聞こえたと同時に木手が肩を竦めて、知念の首に回した腕に力が篭った。
口内を弄ると微かに生臭い物が残ってはいたが、大して気になるほどでもない。
それよりも未だ浮いたままの木手の腰を支える足が震えているのが気になって、少し強引に腰を引き寄せた。
ズブズブとまた自身が熱い場所に飲み込まれていくと木手の身体が自分と密着して、より深く口内を舌で探る事が出来た。
「んうぅ…っ!!」
足だけだった木手の震えが全身に行き渡り、喉の奥からくぐもった呻き声が聞こえる。
ただでさえ狭い内壁が食い千切るような勢いでペニスを締め付け、思わず射精してしまいそうになった。
そのまま上下に痙攣するように腰が揺れるのに驚いて唇を離そうとするが、木手のほうが夢中になっていて離してくれなかった。
「ふ、ぅん…んっ、っ…!」
「っく…う、ぁ…っ」
ビク、と木手の中で自分のペニスが跳ねるのが分かる。
腰を震わせながらも奥まで飲み込もうと押し付けられ、堪えきれなくなって自身を解放した。
一度目と同じぐらいか、それ以上の勢いを持って射精する。
「あ…ァ…っ」
唇を離して脱力した木手は知念の首筋に額を擦り付けながら、か細い声を漏らした。
荒い呼吸が胸の辺りにかかるのを感じながら知念も呼吸を整え、自分と木手の身体を支えているのが面倒になってまたベッドに寝転ぶ。
まだ微かに震えている木手の背中に手を当てながら、ふと自分の腹の辺りが濡れているのに気付いた。
「えー、永四郎…?」
「ん…っ」
ブルッと身震いして顔を上げた木手は、知念の頭の両脇に手を付いてゆっくりと身を起こす。
密着していた下腹部が離れる時に糸を引く液体を目に止めて、木手も自分と一緒に達したのだと知った。
「あんまり気持ちイイから…出ちゃった…」
「そ、…そういうもんなんどー?」
「…こうなったのは知念クンが初めてですよ…」
まだトロリと蕩けた瞳でこちらを見下ろしてくる木手は、匂い立つような色香があった。
体内も熱が引かないまま、咥え込んだ知念のペニスを締め付けている。
自分の出した精液に塗れている木手のペニスを握りこんで先端を擽ると、ピクピク震えてアナルが締まっていった。
「っあ…」
木手の零したため息がまだ濃厚に性欲を残しているのを感じて、知念は自分の中を走り抜ける感覚に身震いする。
自分で誰かに快楽を与えるのがこんなに気持ちイイとは思わなかった。
それは木手が自分のペニスで快楽を得ていると知った時と同じくらい、知念を喜ばせた。
「知念クン、ね…?」
今度はちゃんと意味が分かって、木手に向かって頷く。
収まりかけた火を熾すように再びゆっくりと腰を揺すり始める木手の腕を引いて、知念は彼に口付けた。
後編へ
2008/02/05:完成
2008/02/05:UP