木手の部屋には、両親から与えられた個人で使うパソコンがある。
練習のメニューをまとめてプリントアウトしたり、個人のデータを登録しているらしい。
両親も気を使っているらしく、ネットには接続されていないが木手自身もネットが使いたければリビングに置かれている父親のパソコンを使えばいいと大した不便さは感じていないようだった。
そのパソコンで、知念は始めからインストールされているカードゲームを何度となく繰り返していた。
しかし知念はいつもそのゲームの中盤で行き詰ってしまう。
どんなに試行錯誤を繰り返してもクリアできず、結局はまた始めからゲームをやり直すことになってしまっていた。
自分たちと同じだなと、何となく知念は思った。
カチリ、と小さな音がして部屋の電気が消え、振り返ると扉が開いた隙間から木手の腕だけが覗いていた。
カーテンはすでに閉められているため、部屋は少し薄暗くなる。
「永四郎」
軽く咎めるような口調で名前を呼ぶと、クスクスと密やかな笑い声と共に腕が逃げて行った。
忍び込むように木手が部屋に入り、音を立てて扉を閉め厳重に鍵もかける。
そのままベッドの方へ歩いていくのを追いかけて、知念は椅子ごと体を回転させた。
ベッドがスプリングを軋ませて、腰を下ろした木手を受け止める。
「見てて…知念クン」
「あぁ…」
着ているシャツの裾から手を忍ばせ、胸元で蠢く。
無言で息を詰めた木手の口から微かな吐息が漏れて知念まで届くと、シャツの中を想像して自然と喉仏が上下する。
するとまた、手を留めないままの木手から笑い声が聞こえた。
「…知念クン…っ、ん…」
「……ん?」
「…見たい?」
頷く知念を見て木手は目を細める。
口元は笑みを象ったまま、シャツのボタンが上から一つずつ焦らすようにゆっくりと外されていった。
全てボタンを外した木手が前をはだけ、再び右手を胸元へ伸ばす。
薄く色づいた乳首を指先で軽く押しつぶし、伏せたまつ毛を震わせながら刺激で立ち上がった乳首を摘み上げた。
「んっ…ぁ…あぁ…」
立てた膝の間にもう片方の手を滑らせて、スラックスの上から柔らかく股間を揉み腰をくねらせる。
胸を膨らませて深く息を吸い込んだ木手を眺めるしかない知念が、つい身じろいで椅子が軋んだ。
「駄目よ」
立ち上がることを恐れるように鋭い声が飛んできて、何度も頷いて木手に自分が動く意志の無い事を伝える。
注意深くそれを見つめていた彼がふっと息を吐き出すと知念も安堵して体の力を抜き、背中を背凭れに押し付けた。
「そこに居てね、知念クン」
「うん」
「見ててね、そこでずっと」
「うん…だから永四郎」
また目を伏せて行為に没頭し始める彼が、布の奥でおそらくもう熱を持っているそれの根元から先端に指先を滑らせそこへ指を食いこませる。
「っあ…ぅ、んん…」
グリグリとしばらく布越しの感触を楽しんだ木手は、両手でベルトをゆっくりと外し始めた。
それは明らかに知念へ見せ付けるための動きで、ジッパーを下ろした彼がベッドに背中を押しつけて仰向けになる。
両足を上げてウエストの部分をずり下げると、知念からは木手の尻と太股の裏が露わになった。
膝まで下ろしたスラックスと下着から手を離し、あとは重力に引かれて勝手に床へ落ちた。
ガチャリ、とフローリングとバックルのぶつかる音がしたがそちらに視線をやる余裕はもうなかった。
他の部分よりも日に当たる時間が少ない所為でどこもかしこも褐色の肌の中で、知念にだけこうして「鑑賞させてもらえる」その部分は色が薄い。
両足を自ら胸の方で折りたたんだまま下半身に纏っていた衣服を脱ぎ捨てた木手が膝を開く。
開かれた足の中心にはすでに形を変えた木手自身が触れられるのを、そして知念の眼下に晒されるのを待っていた。
さらにその下の袋も奥の窄まりも、同じくそれを待っている。
先ほどとは違って目を伏せずに知念の方を見つめる木手の手が、今度は直接局部に触れて手の中に包み込んだ。
細くは無いが長く美しい形をした指先が上下に動き、凹凸の浮く腹筋に力が込められる。
木手の息が上がり始めると頬が上気しているのもはっきりと分かるようになり、知念の背中を羽毛のような感触でもって撫で上げていった。
「っぁ、あ…」
足がベッドに付けられると、木手は踵を持ち上げて腰を浮かせる。
自分の手の動きに合わせて腰が上下にくねり、手の中からは液体の掻き混ぜられる音が知念の所にまで聞こえてきた。
「永四郎、気持ちいいばぁ?」
「う、んっ…いいっ、あ…っ」
「顔赤くなってるさぁ、息も上がっててやらしい顔してる」
低い知念の声が木手に届くと、それすらも刺激の一部だと言わんばかりに木手が心地良さそうに顔を歪める。
「乳首はもういいばぁ?真っ赤になってるんど」
「あ、あ…んっ…ぅ」
ペニスへの愛撫に夢中な木手に言ってやれば、すぐさま片手が胸元に伸びる。
指先で押し潰しては捏ねるような強い感覚に軽く喉を反らして声を上げるが、それでも視線はただ椅子に腰かけているだけの知念から外れない。
蕩けそうに潤んだ瞳が片時も逸らされず自分を見つめている。
彼が虐めているその器官は、触れたらどんな感触がするのだろうか。
指先じゃなく舌先で弄ってやれば、彼は今より顕著な反応を示すだろう。
けれどどんなに想像しても、自分が彼に触れられることは無い。
「っは、はぁ…ぁ、あ、…あっ」
「永四郎、まだイッたら駄目さぁ」
「ん、んん…」
より激しい快楽を求めて扱く動きを速める木手に釘をさすと、彼は乳首を弄っていた手を口元へ持っていく。
そのまま中指を根元から舐め上げてしゃぶり、たっぷり舌を絡ませて指を引き抜いた。
行き着く先を知っている知念が喉を鳴らしたのに気付いて、薄く開いたままの唇を吊り上げる。
「知念クン、見て」
「っ…」
木手の唾液で濡れた指先が窄まりに押しつけられて、まず指先だけを呑み込ませた。
それから中ほどまで押し込み、いったん引き抜いて今度は根元まで収める。
「ぁ…ぅ、ん…あぁ…っ」
竿を扱く手を止めないまま中指がくねくね動くたびに短い声が上がって、ペニスから透明の液体が溢れる。
「あ、ぁ…あっ、う、あ…」
木手の体内は熱くうねって指先を締め上げているのだろう。
その感触の片鱗すら知らない知念は、こうして視覚だけで快感に囚われる木手を感じるしかなかった。
「知念く、…っあ、あ…あっ!」
ブルリと身を震わせた木手の手の中で白濁が散ると、知念は知らず詰めていた息を吐き出す。
身の内に籠った熱も吐き出せればよかったが、不幸にも知念の体は若すぎてその願いは叶わない。
ほんの数歩先にいる木手に触れることも叶わず、知念は全てをまた始めからやり直すために自分のスラックスに手をかけた。
END
2008/11/09:完成
2008/11/10:UP