真っ白い世界に甲斐は立っていた。
夢だと気付いたのはすぐの事で、何にも無いなぁとあたりを見渡した。
「ん?」
振り返ると遠くに誰かの背中が見える。
頭に被っている真っ赤な帽子に、あれが自分だと気付いた。
「ぬーがよ、幽体離脱ばぁ?」
明日凛に自慢してやろう、なんて思ったのも束の間。
まるで胸元を思い切り引っ掴まれたかのように、背中を向ける自分に引き寄せられている。
それはものすごい速さと力で、抗う事も出来ない。
近づいてくる自分の背中。
膝を付いて座っている背中は、肩のところから何かがにょきっと伸びていた。
さっきまであんなのあったか?と思う間もなくそれが人の足だと気付いて。
人の足だと気付いたら、背中を見せている自分が誰かを組み敷いているんだと理解できた。
ぐい、と自分が腰を突き上げるような動きを見せた後、肩に抱えていた両足を掴んで前に押し付ける。
何だ、エロい夢かよ。
そう思って口の端を緩ませた次の瞬間。
ドン!!と言う強い衝撃と共に甲斐は誰かを組み敷く自分と同化した。
「っうわああぁあぁあぁ!!!」
追い立てられる様な恐怖を感じて、甲斐は飛び起きた。
自室のベッドの上で身を起こし、乱れた呼吸を整える。
煩いくらいに心臓の音が高鳴って、頭は貧血を起こしたようにクラクラしていた。
「ぬーがよ…」
体の下では、木手が組み敷かれていた。
折り畳まれた膝を胸元に押さえ込まれて、いつものユニフォームを首元まで捲り上げられた木手が。
今にもぐずぐずと蕩けてしまいそうな目をして、頬を上気させてうっすらと汗を滲ませていた。
立ち上がった乳首までしっかりと目に焼きついたくせに、実際見たことの無いペニスや自分の下半身の感覚は全く覚えていない。
異常な夢だと甲斐は思った。
男を好きになったことも無いし、木手を好きだと思ったことも無い。
友人としてそれ以上の気持ちなどないのに、何であんな夢を見たのだろうか。
動揺が少しずつ収まってくると、甲斐は別の絶望感に打ちひしがれた。
「最悪…」
下腹部の濡れた感覚を、否定する材料は持っていない。
END
2007/09/27:完成
2007/10/07:UP