先生と少年2

 布団を出そうとした知念のジーンズの裾を引いて木手が引き留めたので、結局は畳の上で始めることになってしまった。
 それでも畳に擦れては痛いだろうと、知念は自分が着ていたTシャツを敷いた上に木手の体を横たえる。
 カーテンを引いても部屋の中を見通せるぐらいには明るく、昼間から、と言う怠惰な思いが知念の奥底でジワリと何かを掻き立てた。

「先生…」

 既に弾んだ呼吸で自分を見上げる木手のこめかみにキスを落として、滑らかな頬にも唇を触れさせる。
 たったそれだけの接触で陶酔したように溜息をつくこの少年は、随分と感受性が高いんだなと思った。

 シャツの裾から手を忍ばせてささやかな乳首に触れると、頬が一瞬にして上気した。
 改めて性行為の生々しさを自覚したのか、身じろぐように踵で畳を蹴ってずり上がる。

「逃げたら触れんばぁ」
「だって…」

 腰を掴んでずるりと引き戻し、シャツの中に手を入れるとやっぱりずり上がった。
 もう一度自分の傍に引き寄せようと腰を掴んだら、ただでさえサイズの合っていないハーフパンツだけが知念のほうへ引きずられてくる。

 下着を穿いていないことは知念も知っていた。
 なぜなら洗って干したのは自分だからだ。
 けれどこの行為が終わった後、それを平常心で取り込めるかどうか自信はない。

「っせ、先生!」
「やーが逃げるからさぁ」
  
 大きなシャツの裾を引っ張って下腹部を隠す木手の慌てぶりに、知念の中で張りつめていたものが解けていく。
 どれほど大胆に誘って来ても、実際の行為になると何も知らない子供の顔が押し出されてくる。
 なおさら性質が悪いと思うが、心のどこかでそれを可愛いと思ってしまう自分も同罪だ。

 掴んでいたハーフパンツを背後へ放り投げると、木手の二の腕を掴んで引き起こし胡坐をかいた自分の上へ乗せた。
 知念の腰を跨がせて座らせるため、足を広げて向かう合うような体勢になる所為でいくら大きなTシャツを着ていてもそのままでは裾がずり上がって下腹部を晒すことになる。
 それを嫌がって片手でシャツを引き下ろす木手に、知念は苦笑しながら告げた。

「裸になってするもんやさ。恥ずかしいことなんかないばぁ」
「でも…っ」
「いいからじっとしれ。怖いことなんかあらん」

 首元に軽く歯を立て、噛みつかれた驚きに身を竦ませる木手の服の中に再度手を滑り込ませる。
 やはり畳を蹴って後ろに逃げようとするが、今度は知念の腕が背中に回っている所為で逃げることは叶わない。
 当たり前にまっ平らな胸を手で覆ってみるが揉むのも違うだろうなと、さっき触れた乳首を指先で軽く弾いてみる。

「っ、…ん…」

 びく、と体を震わせた木手がどうしていいのか分からないような顔でこちらを仰いで来る。
 恐らくはくすぐったいとか、快楽にはまだ遠い感触しかないのだろう。
 それでも刺激を受けて立ち上がり、手ごたえを増す乳首を摘むとやはり体が小さく跳ねる。

「先生…、なんか…ぁっ…」

 今度は微かだが甘みを帯びた声を聞いて、子供でも感じることに妙な関心を覚えた。
 もう少し可愛がってやりたい気持ちもあったが、今後の木手のことを考えれば余り変な性癖を付けるのは良くない。
 しかしその手が服の中から出て行く前に、木手がかぶりを振って制止する。

「や、…せんせぃ…」
「永四郎…?」
「そ、こ…もっとしてください…」

 蕩けるような甘い声だった。
 情欲を無理やり掻き混ぜられるような焦燥を感じて、思わず息を呑んでしまう。
 局部を見せることは今でも恥じらっているのに、快楽を自分からねだることに恥じらいはないのか。
 そのアンバランスさにさえも煽られた知念は強引にシャツの裾を首元まで捲り上げて身を屈め、ほんの少しの刺激で色づき始めているそこに唇を押しあてた。

「っあ…、っんん…」

 ほとんど無理やりに下半身を露わにされて慌てた声を上げた木手だったが、快楽の兆しを覚えた場所を吸い上げられてしまえば意識がそっちへ持っていかれる。
 未練がましくシャツの裾を掴んでいた手ももどかしげに知念の肩を掴み、舌先で硬くなった乳首を押しつぶすと一層力が込められる。

「あ、あっ…ぁうっ…」

 変声期前の声が快感に溶け、居た堪れないのか木手の膝が閉じて腰を締め付けてきた。
 直接脇腹に触れるしなやかで張りのある内腿の感触に、性欲を掻き立てられるのをもう否定はできない。
 背中を支えていた手を降ろして、片方の山がすっぽりと手の中に収まるほどの尻を掴んだ。
 つるりとしているのにしっとりと手に吸い付く感じを楽しみながら掌で柔らかく揉むと、鼻から抜けるような声を上げる。

「ん、…んん…せ、んせ…ぇ…」
「気持ちいいか?永四郎」

 乳首から口を離して問いかけながら木手の顔を見上げた知念は、薄く開いた彼の唇が濃く色づいているのを見て喉を鳴らした。
 童貞でもあるまいしと心中では自分を叱咤するが、子供らしい健全な風貌に快感の火が灯るという背徳感を掻き立てる組み合わせに急く気持ちを抑えきれない。

 抱えていた体を畳の上に降ろし、うつ伏せにして腰だけを上げさせる。
 既にぐしゃぐしゃに丸まっている知念のTシャツを不安そうに胸へ掻き寄せるのを目の端で捉えながら、先ほど撫で回した尻の肉を両手で開いた。

「っ…やめ…!」

 普段なら自分でも見るような場所でない所に感じる外気に、小さな手で知念の視線から隠すように開いた狭間を覆ってしまう。

「永四郎、手が邪魔さぁ」
「だって先生が!」
「やしがこうでもせんとできんばぁ?じっとしれ、痛いことはせん」

 押し黙る木手の手に自分の手を絡めて退かせると、逆の手の親指で片方だけ肉を開く。
 当たり前だが乾いている狭間で、視線を感じてきゅっと閉じているアナルに軽く指を這わせた。
 突然乾いた指先に触れられた縁がさらに収縮し、木手の体が反りかえる。

「っ…何、や…先生!」

 ヒクヒク蠢くアナルに顔を寄せ、舌先で突くとまたしても逃げ出そうとする木手が膝に力を入れて前へ伸びあがった。
 けれど繋いでいた手を知念が離さなかったため、バランスを崩して上体が畳に沈む。
 それでも逃げようと尻を振る木手の腰を掴み、今度はできる限り奥まで舌を突き刺した。

「ひ…っ!…ぃ…やだ…あ、あ…」

 締め付けてくる縁を押し広げて中を掻き回し、腰を押さえていた手を離して木手のペニスに触れる。
 先端だけが皮から露出したそれははちきれんばかりに立ちあがって、雄々しくも滴を零していた。

「永四郎、気持ちいいばぁ?勃ってる」
「ぁ、あ…っ、んん…」

 指先で先を撫でると、鼻から抜ける声を上げて腰を揺らす。
 それは指から逃げようとする動きにもあるいは擦り付けようとする動きにも似て、木手自身どうしていいのか分からないようだった。

 しゃぶりついていた尻から顔を上げた知念は、断続的に声を上げながら先ほどまであれほど見せるのを嫌がっていたペニスをおとなしく弄られている木手の背中を注視する。
 尻が動くたびに腰がくねらせ、知念のTシャツに顔を埋めている姿はとても子供には見えない痴態だが、不安そうに時折こちらを振り返る様は色事など知らない子供らしさを際立たせた。

「永四郎、やめるか?」

 だからつい、そんなことを聞いてしまった。
 いきなり目の前に置かれた性交という行為に、もう彼が嫌になってしまったんじゃないかと危惧したのだ。
 そして危惧するということは、自分が彼とそういうことをしたいと思っているのと同じで、知念はすでにそれに気付いていた。

 木手に懇願されたからではなく、自分の意思で。

「…………」
「永四郎?」
「…や、めません…」

 問いかけるのはこれで最後にしよう、そう思いながら木手に頷いた。
 これ以上聞いても彼が頑なになるのは明白だし、止めてほしいと言われたら困るのはこっちだ。

 舌で濡らしたアナルに中指の先をゆっくり押し込む。
 指一本くらいならばどうってことはないのか、唾液の滑りを借りながらじわじわと指先が埋まっていく。

「あ、…あぁ…」

 決して華奢ではない指が中へ進むたび、中の肉はうねって絡みついてきた。
 奥へ誘うような動きと、排出しようとする動き。
 両方が合わさってまるで知念の指を愛撫するような感覚を覚え、気がつけば根元まで押し込んでいた。

「あー……」

 溜息のような長い声を漏らし、首を仰け反らせる。
 熱い内壁に包まれた指の根元が強い力で締め付けられていて、その狭さに驚いた。
 痛い思いはさせないと言ったばかりだが、それは本当に可能なのかとそう思う。

「永四郎、痛いばぁ?」
「ん、ん…大丈夫です…」
「ちょっと動かすぞ」

 痛みは感じていないようだったので、体内で指先を回してみた。
 ぴくりと尻が跳ね上がったが、痛みを感じている様子ではなさそうだった。

「っ…ん、ぁ…」

 少しずつ指を引けば、内壁が離したくないと言わんばかりに引き留める。
 ブルリと身を震わせて肩で呼吸をする木手が、排泄感によく似た感触を得ているのは知念にも何となくわかった。

「せんせ、…先生…っ…」

 途中まで抜いた指を再び押し込もうとしたが、やはり潤いが足りないのか少し引きつるような感じがある。
 どうしようかと辺りを見渡した知念は、木手と繋いでいた手を離して傍にある小さな箪笥の上に乗っている薬箱に手を伸ばす。

 薬箱は実家にあるものを母親がそのまま持って行けと言ったため、中にはいろいろ入っている。
 年季の入ったその箱を開けると、頭痛薬や風邪薬に交じってベビーオイルが入っていた。
 恐らくは妹の子供に使うものだろうが、持って行けと言われたんだから使って文句を言われることはないはずだ。

 オイルの小瓶を手に取り片手で蓋を開ける。
 とろりとしたベビーオイルを指を含んでいる場所へ垂らし、再び指を押し込むと滑りの助けを貰って根元まで楽に収まった。
 何度かオイルを足して脇に置き、腰を抱え直して引き寄せる。
 ぐったりした体は腰だけを引き上げられ、上半身は畳に崩れ落ちていた。

「っは、う…」
「気持ち悪いばぁ?」
「ん、だ…大丈夫です…」

 何度か抜き差しをする内に濡れた水音が上がるようになって、人差し指を添えて押し込んでみてもきつさは抜けないがゆっくり広がって呑み込んでいく。
 眉を寄せてきつく目を閉じている木手に声をかけるが、返ってきた答えは信じられるわけもない声だった。

「ぅ、ん…ん…」

 苦しそうな声を上げる木手を何とか楽にできないかと腰を引きよせていた手で触れたペニスは、そこはまだ勃起したまま滴を纏わりつかせている。
 竿を握りこんで先端を親指で撫でると、ぐったりしていた背中が引き攣った。

「っは、ァ…ぅ、んん、…あっ!」

 緩慢な動作でペニスを刺激しながらあまり激しくしないように注意して内部を探る。
 背中側に手のひらを向けていたのを腹側のほうへぐるりと回転させた瞬間、畳に額を擦りつけていた木手の頭が跳ね上がった。
 何かあるのかとその部分を押した知念は、余りに顕著な反応を示されて息を呑む。

「っひぃ、あ…!!」
「永四郎?」
「せ、ン…せっ!そこ、…い、あぁ…!」

 先ほどまでの苦しい声が嘘みたいに蕩け、指を呑まされた入口が柔らかく締め付けてくる。
 ただきついだけだった先ほどまでとは違って、うねうねと蠕動しているような感触があった。
 親指で撫でていた先端から先走りが更に溢れ出し、手の中で大きく脈動する。

「あ、あ…あぅ、ん…っ」

 木手の感じる場所を突くようにして指先を抜き差しさせれば、殊更に感じ入った声をあげて腰をくねらせた。
 それは先ほどのようにペニスへの刺激を意識したものではなく、明らかに体内で蠢く指の感触を追いかけてのことだった。
 男の指にアナルを暴かれて善がる木手の姿は、笑い出しそうなほど知念の興奮を駆りたてた。

「っふ、あ、っあ…ん、ん、っ…」
「永四郎…起きろ」

 指を引き抜いて木手に声をかけた知念は、ジーンズのボタンをはずしてジッパーを下ろし下着と一緒に脱ぎ捨てる。
 起き上がった木手が再びTシャツの裾で自分の下半身を隠しながらも熱っぽい目でこちらを見ているのを感じて、自分も今の彼と似たような目で見ていたのなら木手が隠したくなる気持ちもわかるなと少し思った。
 まるで夢心地のようにうっとりしているのに、今にも食らい付いてきそうなほどに自分を欲しがっているのがわかる。

 木手がどこまで自分との性交を想像できていたのか知念は分からないが、彼の視線が自分の下半身に吸い寄せられている所を見ると何となくは分かっているようだった。
 視線を感じながらも既に勃起しているペニスにさっきのベビーオイルを垂らして何度か擦り上げると、微かに出ている喉仏が上下したのが見えた。

「先生…」
「ん?」
「ぜんぜん違う、俺もそんな風になれます?」
「あー…、あぁ…多分」

 こんな時にそんなこと聞くか、と内心思わないでもなかったがその質問にうっかり俺がそうしてやると変なことを答えそうになって結局は曖昧に頷いて木手の体を後ろから膝の上に抱え込んだ。
 そうしてやる、なんてまるでこれからもこんな風に接触することが決まっているような言い方だと思ったからだ。

 自分のペニスの根元を軽く支えると、片腕で抱えた木手の腰をゆっくり下ろしていく。
 知念の膝に手をついてバランスを保っている木手は、アナルに先端が触れた瞬間怯えるように肩を揺らした。

「平気か?」
「大丈夫…です…」
「深呼吸して、力抜け」

 息を吸う木手の胸が膨らんで、大きく吐き出されていく。
 それに合わせて抱えていた腕の力を抜いた知念は、締め付けるアナルの縁を押し広げていく感触に喉の奥で呻いた。

「っ、…永四郎…」
「っはぁ…あ、ぁ…ぁ…」

 ぬるぬるとした感触もそうだったが、狭い場所を無理やり押し広げるような肉の擦れ合う動きが堪らない。
 はー、はー、と深い呼吸を繰り返して何とか力を抜こうとしている木手を助けるため、オイルまみれの手でTシャツの中に手を入れてペニスに触れた。

「ふ、ぁっ…あ、あー…!」

 突然別のところに感じた強烈な刺激に驚いたのか、力を入れて体を支えていた足が滑って一気に腰が落ちてくる。
 根元まで一息に呑み込まれた知念も思わぬ快感に息を詰めたが、いきなり奥まで貫かれた木手のほうがよほど大変だろう。
 それでも逃げようとせずに受け入れようとしている姿が、何とも言えず健気に感じた。

 中途半端に開いたままの足は震える膝頭だけが上下ずれた状態で真ん中に寄せられ、つま先が内またになってしまっていた。
 前のめりになっている体は硬直してしまって動かず、知念の膝に置かれていた木手の手は爪を立てたまま衝撃に耐えているようだった。
 びくびくと痙攣するように内壁が動いているのに、自分から腰を揺すれないのは少しじれったい。

「う、ぅ…ん、…ぁ、…先生…」
「大丈夫か?」
「ん、ぁ…あ、…」

 大きく息を吐き出した木手が、恐る恐る上体を起こして背後の知念にもたれかかってくる。
 たったそれだけの動きでも中の知念の存在を大きく感じるのか、時々唇から洩れてくる声が妙に艶めかしい。

「せんせぇ…お腹、変、な…感じっ、します…」
「あぁ、痛いか?」
「少し、だけ…っ、でも…気持ちいい…」

 陶酔したような声を聞いてペニスから手を離した知念は木手の着ているTシャツで手を拭い、木手の両方の膝裏を掴んで足を開かせた。
 そのまま膝裏を持ち上げて自分に体重がかかるようにし、少しずつその体を揺すり上げる。

「あ、あ、あ、あ…」

 ズ、ズ、と一度は根元まで収まったペニスが抜けていく度、木手が微かな喘ぎを漏らした。
 知念の膝に置かれていた木手の手は膝を抱える腕に回り、肘の辺りをギュッと掴んでくるのが可愛らしい。

「せん、せ…や、ぁ…」
「ん…っ?」
「抜くの…嫌、あ、あぁ…!」

 首を横に振って嫌がる木手を見て支えていた腕の力を抜けば、半ば程まで抜けていたペニスは木手の体重でまた体内へと沈んでいく。
 大人の性器で押し開かれ擦り上げられる体内に全神経を集中しているのか、薄く開いた唇から唾液が零れ落ちるのにも気付かないまま拭う様子もなかった。   

「っえいし、ろう…」
「っはぁ…あ、あ…あ、っぅん…ん」

 円を描くように木手の腰を回させると、オイルが掻き混ぜられてグチュリと音を立てる。
 何度かそれを繰り返した知念は、いつの間にか木手の腰がその動きを真似ているのに気付いて膝から手を離した。
 畳に足を付けて再び知念の膝に手を置いた木手は、自分からゆっくりと腰を動かし始める。

「ぁ、あ、ん、んぁ…、ん…」

 次第に円運動だけでは足りなくなったのか上下に動くようになると、快楽を得ようと目を閉じて一心不乱に体を揺する木手の口から甘い声しかこぼれなくなった。
 けれどそんな緩慢な動きでは知念の方は生殺しなだけで、もう少し強い感覚が欲しくて腰を突きだす。

「っんあぁ…!」

 途端にビクンと身を弾ませて硬直した木手は、そのままぐったりとこちらに全体重を預けてきた。
 達したわけではないだろうが、時折小さく跳ねる膝頭を見て思っていた以上の快感を与えたのだとわかった。

「永四郎、もう動いていいばぁ?」
「ん、ん…っ…」

 降ろされた髪に隠れている耳元に問いかけると、肩を竦めて何度も頷く。
 抜くのが嫌だと言った彼のために、繋がったままゆっくりと知念と向かう合うように体を回転させた。
 先に上半身を捻って自分の首に腕を回させ、それから半分ほどまで引き抜いて体に隙間を作り腰に木手の足を跨がせる。
 それから畳の上でぐしゃぐしゃになっていた自分の着ていたTシャツを片手で広げ、そこへ木手の背中を横たえた。

「あ、…ぁ…」

 両足を高く持ち上げ、懸命に縁を広げて男を受け入れて真っ赤に色づき木手が呼吸を繰り返すたびに収縮している場所を見下ろす。
 体勢が変わって木手にもその場所が見えるようになり、彼もまたそこをじっと見つめていた。
 半ばまで抜かれていたペニスをもう少しだけ引き抜き、括れの所で縁を刺激する。

「んん、せんせ…あ、…あぁ、あ…先生…」

 片方の足首を掴んで広げ、自分の指先がくっついてしまうほど細いのに彼の年齢を意識した。
 しかしここまでくればやめられないことは明白だし、性的な興奮は罪悪感を凌駕している。
 持ち上げた足の間に腰を沈ませていけば、大した抵抗もなく根元まで木手の体内に沈みこんだ。

「っはぁ…ぁ、あ…、んぁ…!」

 何度か感覚を確かめるようにゆっくり木手の中を往復してから、次第に早さを上げていく。
 体内を突き上げる激しさに体がずり上がる木手の顔の横に手をつくと、そこへ肩が当たって体が止まった。

「あぁ、あ、ぁっ、い…ァぁ…っ!」

 揺すられる度に跳ねて木手の額を隠す前髪を掻きあげ、そこへ唇を落とす。
 そのまま頭を抱え込んで身を屈め、真っ赤に色づいた唇を塞いだ。

 ちゃんと心得ているらしいがそれでもどこか恐る恐る舌を差し出す木手の唇をはぐらかすように舐め、恥じ入るように引っ込んでしまったのを追いかけるように口内へ舌を侵入させる。

「んう…っ、ん…ん、んん…っ」

 小さな舌を絡め取り、喉から溢れるくぐもった喘ぎさえ吸い上げた。
 腹の中を掻き混ぜられて上がる声は知念が彼を突き上げるたびに揺らいで、力の入らない手がふらふらと彷徨って畳についた知念の手に重なる。
 指を絡めて握り込んでやると、両手でそれに縋りついてくるのがいじらしい。

「っ、先生…っあ、あ…あぁ、っは…」
「永四郎…っ」

 手加減なしに彼の体を揺さぶり、思うまま突き上げても木手の内部は知念のペニスを喜々として受け止めて締め付ける。
 抱え上げられた足が律動に合わせて揺れ、畳に縫いとめられた体は時折覆いかぶさる男を煽るように身を捩った。

「っは、は、っああぁ…っ、先生っ、ダメ…っ」

 知念が身を起こして木手の足を片手で抱え直すと、彼の体が反り返ってのたうつ。
 指で探った場所を突いたのに気付いた知念は、立て続けに何度かそこを擦り上げた。

「や、あっ…ダメ、っダ…メ…あぁっ…」
「っ気持ち、いいさぁ?ダメなことあらんど…っ」
「違…ん、ん、んんぅっ…っは、ぁ…何かっ…」

 眉を寄せ、唇を噛み締めて堪えるような仕草を見せるが知念の動きに合わせてくねる腰がどうしたって快楽を享受しているのを物語っている。

「何かッ、出、っ…あ、んん、ぅ…っ」
「イきそうか…?」
「は、あぁっ…あ、あぅ…っわか、んっ…ない…っ!」

 泣き出しそうな顔で首を横に振る木手は、自分から片手でペニスを握りこんだ。
 体内に渦巻く快感の出口がそこしかないのを思い出したのか、腰をくねらせて鳴きながら自慰をする様が途方もなくいやらしい。

「え、ぃしろ…」
「せんせぇっ、せんせ…あ、あっあ…ァっああぁ…!」

 ビクリと大きく体を痙攣させた彼が、自分の手の中で射精する。
 まだ濃さのない精液が薄い腹へ飛び散る度、知念をこれまでにないほど強く締め上げてきた。
 けれどそれは咥え込んだペニスから精液を絞り取ろうとするような奥へ誘い込む動きで、目が眩むほどの快楽と同時に堪え切れない射精感を覚える。

「っは、はぁ…っあ、っは…ぁ、ぁ…」
「はぁっ…、っく…っ…ん…!!」

 絶頂の余韻でまだ震える体を何度か強く突き上げ、まだ足りないとばかりに片手で木手の腰を掴んで引き寄せ一番奥で達した。
 何度か緩く抜き差しをして最後まで出し切ると、詰めていた息を大きく吐き出す。

 次第に冷えていく頭で、彼の腰を強く掴んでしまっていたのを思い出して手を離した。 
 少し赤くなっているそこを撫でながら顔を上げた知念が見たのは、意識を飛ばしてしまっている木手だった。


 彼の意識が戻る前にと、知念は手早く後始末を始めた。
 最中はともかく、正気に戻った後木手が自分に始末をさせてくれる性格ではないのをもう十分理解している。
 タオルで体を拭い、押し開いて弄んだ後ろから精液を掻きだす。
 いろんなもので汚れてしまったTシャツを脱がせて新しい服を着せた所で後始末は終わりだが、腕の中から離しがたくてそのまま一緒に寝転んだ。

 理由は、自分の中ではもうわかっている。
 絆されたと木手に理由を押し付けて逃げるつもりはない。
 最中に何度もいじらしい、可愛いと思ったのがいい証拠だ。
 けれど、どうして、なんて聞かれたらどう答えればいいだろうか。
 自分で責任の取れる年齢の男が大人の男と付き合うのと、まだ中学生でもない少年が大人の男と付き合うのとでは意味が違う。
 せめて後7年、彼が高校を卒業するまで、なんて考えて無理だなと打ち消した。

 散々好き放題に弄んで、終わったら大人面して彼を突き放すことはもうできない。

 腕の中で眠っているあどけない表情に罪悪感も湧くが、同時に覚悟も決まる。
 目が覚めた木手が、間違いでした、なんて言わないことだけを願って知念も目を閉じた。




 次に目を覚ましたのは、コンコン、と何かを叩く音がした時だ。
 目を開けると外はもう暗くなっているのか部屋の中は家具などの影がかろうじて見える程度で、痺れた片腕がまだ木手を自分の傍に留まらせているのだと実感できた。

『えー、凛よー。じゅんに誘ったんばぁ?』
『おー、ちゃんと7時っていゆったばぁ』
『やしが、電気消えてるんどー』

 街灯の光に照らされて影が二つ、窓の外を動いていた。
 微かに聞こえる声は昼間訪れた平古場と、話に出て聞きた甲斐だ。
 話の内容からするともう約束の時間なのだろう。
 もっとも、平古場が勝手に取り付けた約束で知念は一応断ったのだが。

『ひんぎったな。あにひゃー』
『…………』
『行こうぜ、凛。待たせるとまずいさぁ』
『…………』
『凛?』

 このままやり過ごしてしまおうと息を潜めていた知念は、平古場の様子がおかしいと気付く。
 甲斐の問いかけに答えない平古場の影はしばらくぴくりとも動かなかったが、あぁ、と納得したような甲斐の問いかけに答えたような曖昧な声を上げた。

『あにひゃー欠席どー』
『ナツミちゃんがっかりするさぁ』
『しゃーねぇ、あぬデブ呼んでやるかぁ』

 段々小さくなっていく声に安心して体の力を抜くと、腕の中の木手がごそごそ動き出す。

「先生、行かなくていいんですか」
「永四郎起きてたんどー?」

 どうして抱きしめて眠っているかの理由より、どうして合コンへ行かないのかの理由の方を聞きたいらしい木手は暗闇の中でもまっすぐ見つめてくる。
 根本的に答えは一緒だが、追い詰められている気がするのはなぜだろう。
 まるで浮気を咎められているようだと思ったら、何となく納得した。

「行かん」
「でも」
「もともと行く気もなかったさぁ」

 外の気配を探りながら体を起こし、側のタンスに持たれて木手を引きよせる。
 自分を背凭れにして座らせ抱え込むように後ろから腰に片腕を回した。

「先生」
「ん?」
「どうして俺とセックスしたんですか」

 一番基本的なことを聞かれて、木手が強請ったんじゃないかとは答えられなかった。
 間近で聞いていても聞こえないような小さな声でしか言えなかった言葉を、なぜ今はこんなにはっきりと言えるのか。

「永四郎…?」
「…、ス…してください、とは言いましたけど先生がどっちを取るかはわかりませんでした」
「え、いや…」
「キスだけで終わるなら諦めようと思ったんですけど、先生結局一回しかキスしてくれなかったの自分で分かってます?」

 あぁ、そうか、図られた。
 しおらしい振りをしてその実知念が逃げられないように既成事実を作り上げようと初めから決めていたのだ。

 不意に、木手の試合風景を思い出す。
 対戦相手は必ず試合開始直後の数十秒だけ好きにさせ、その間に見つけた弱点を突いてあっさりと仕留めてしまうのが彼の得意な戦法だった。

「大体、学校ではもうセックスのことをちゃんと教えてくれています。コンドーム付けないと体に悪いですよ」
「あ、あぁ…わっさんや…」

 ひしひしと逃げられない予感が背筋を這いあがっていく。
 逃げる気などないが、この子供が自分の本性を全く見抜かせなかったのが空恐ろしかった。

「でも先生、セックスってあんなに恥ずかしいんですね。学校で教えてくれたのとは全然違います」
「ちょ、えいしろ…」
「だって、乳首を吸ったりお尻のあ…」
「しゃ、喋らんけ…」

 子供だからか、子供だからあけすけに喋れるのか。

 思わず木手の口を手で押さえながら、知念は大きなため息を漏らした。
 口を塞がれたままきょとんとこちらを見つめている木手は、最中の艶っぽさが嘘のように子供の顔を見せている。
 最中に何度もいじらしいと思ったあの態度だけが演技ではないことだけが救いだった。
 口ぶりからするにセックス自体を体験するのは初めてだろうし、裸になるのを恥ずかしがったのも嘘ではないようだ。

「ところで先生」

 これだけは聞いておかなければ、というような調子で木手が口を塞ぐ手を引き剥がした。
 もう何を言われても驚かないし動揺もしないという境地に達した知念は話に耳を傾けようとする。
 けれど、木手は掴んだ知念の手を弄ぶだけで長いこと口を開こうとはしない。 
 どうかしたのかと顔を覗き込もうとした時、窺うような声で木手が問いかけてきた。

「……また、ここに来てもいいですか」

 不安げな声が、演技でない保証はない。
 しかし演技だとは思いたくなかった。
 好きだと自分に言った時の必死な瞳まで、疑いたくはない。

 手に触れる大きさの違う木手の手を握り込むと、彼が恐る恐る後ろを振り返る。

「永四郎の好きにすればいい」
「…………」
「うむやーの家に来るのに、遠慮はいらんさぁ」

 薄く開いた唇に二度目のキスをして、しがみついてくる体を受け止めた。
 微かに震える背中を撫でで宥めながら、こめかみにも小さくキスを落とす。

「かなさんよ、永四郎…」

 自分からあれだけ積極的に迫ったくせに、耳元で呟いた言葉に首まで赤く染め上げる彼が可愛らしい。

 木手の中に混在する大人と子供の顔に、これから自分の方が翻弄されていくのは間違いなかった。
 半ばそれを望み始めている自分が、木手よりも随分と性質の悪い大人だと知念は気が付いている。


END

2008/09/16:完成
2008/09/16:UP