おねだりの仕方

1109リクエストあち様より
・甲斐木手
・18禁
・焦らし
・おもらし




 一時静かだった部室に、どやどやとテニス部が戻ってくる。
 レギュラーは自分の着替えが放り込んでいるロッカーの前に立ち、タオルで汗を拭いながら扉を開けた。

「えー、甲斐。来週の合宿よ」
「おぉ?」

 隣のロッカーを使っている平古場に声をかけられ、甲斐は飲み残したぬるいペットボトルの蓋を開けながら頷く。
 そのまま口を付けて流し込めば、スポーツドリンクの甘ったるい感触が喉を通り抜けていった。

「一週間みっちりはきついやー。しかも本土どー?練習して帰るだけじゃ勿体無い訳さー」
「だーるな。一日ぐらい休み欲しいさー」

 全国大会へ行く事が決まってから、学校は急にテニス部を優遇するようになった。
 今までそっぽを向いていたのにと甲斐や平古場は苛付いたが、部長の木手と監督の早乙女はそ知らぬ顔をして光栄だと学校関係者にのたまった。
 不平不満を漏らす甲斐達を抑えつつ、彼らはあっさりとレギュラーの参加する一週間の合宿の許可を取り付けた。

 しかも、本土の最新設備のコートでだ。

 この交渉は一見早乙女が行ったようだったが、実際は木手が早乙女に進言して交渉させたようなものだった。

 だから合宿の決まった当初、甲斐と平古場は手放しで喜んだ。
 木手が率先して決めた事ならば、無理なく効果的なスケジュールを組んでくれると思っていた。

 が、全国大会を前にした木手は鬼だった。

 見せられたスケジュール表には一週間休み無しでみっちりと練習メニュー書かれていて、愕然とするレギュラーに木手は言い放つ。

『時間が無いので、これぐらいこなしてくれないと困りますね』

 その後設備のいい場所で練習できるのがどれほど幸せか語られても、最早うんざりするだけだった。
 ちなみにその永四郎は今、合宿の最終調整とやらで早乙女に呼び出されている。

「えー、知念と田仁志もそう思うばぁ?」

 話を振られた二人は顔を見合わせて、あー、とか、うー、とか曖昧に唸る。
 木手の決めた事に反抗は愚か不満に思うという選択肢すら無い二人でも、流石に今回はどうかと思っているのだろう。

 普段なら、『永四郎が決めたんどー』の一言で終わりだ。

 甲斐と平古場の視線から逃れるように、知念はロッカーの中をごそごそと漁って制服を取り出した。

「やしが、合宿さぁ?練習は当たり前やっし」
「あがー、寛君は真面目すぎるんどー。7日間朝から晩までずーっと練習は有り得ないさー」

 知念のようやくの反論も平古場に一蹴され、それも一理あるとまた知念と田仁志が顔を見合わせて唸る。
 ユニフォーム姿のままの平古場はパイプ椅子を逆向きに跨いで座り、背凭れに両腕を乗せた。

「わったーが頼んでも無理だったばぁ」
「だーるな」
「そこで、うむやーの甲斐がちばるってわけよ」

 端っこのロッカーで着替えていた甲斐の方へ視線が集中し、本人が顔を上げる。
 ニヤニヤと企み顔の平古場を見て、また何か厄介な事が起こるのではと知念が小さくため息を零した。

「わん?」
「やーが永四郎に交渉するんどー。あにひゃーだってうむやーに言われたら断れねーだろ」
「やしが、こないだ皆でいゆった時にわんもいたばぁ?」

 そうだ、皆で直談判した時も平古場と一緒になって甲斐も先頭を切った。
 それでも木手は顔色一つ変えず首を横に振って、休日は無しだと繰り返したはず。
 そもそも、木手が恋人に甘い顔をするような人間ならば、部活はもっと休みが多くなっている。

「おぉ。前は他の部員の目があったんどー。永四郎も素直になれないやー。あんせー二人っきりの時ならどうよ」
「どうって」
「いちもより甘えたりちむじゅらさんなったりするばぁ?えー、甲斐よ」

 そう言われて甲斐の脳裏に浮かぶのは、ベッドの上で自分を呼ぶ木手の姿。
 硬質な態度とは裏腹の柔らかい間接を駆使した肢体でもって、エログラビアをしのぐ勢いのポーズを取る映像が次々と浮かんできて思わず相貌が崩れた。

「ま、まぁな…あにひゃーあれでよー」
「やーの惚気はいらんばぁ。で、やーがあにひゃーから一言休みを作るって言わせればいいんどー。この際手段は問わねー」

 組んだ腕に顎を乗せた平古場は、甲斐の言葉を遮って端的に目標を告げる。
 そのたった一言が難しいのだと言っているのに、平古場は何故こんなに余裕綽々なのだろう。

「どーするんばぁ?喧嘩じゃ負けるんど」
「甲斐よー、暴力だけがやーの武器じゃねーだろ。特に木手にはよー」
「はぁやぁ?」
「あんせー、布団の中でなら勝てるあんに」

 カターン、と田仁志がラケットを取り落とす。
 付き合っている事を特に隠しもしない甲斐の所為で部活内では最早暗黙の了解、触れないが吉となっていた。
 表立って反対したり、嫌悪感を見せたりする部員はいないにしろ、ここまであからさまに言われれば動揺も見せる。

「えー、凛。やー…」
「田仁志は黙らさんけ。要は永四郎が頷けばいいんどー。あにひゃーは馬鹿が付くぐらい責任感強いわけさ。一回自分がいゆった事反故にはせんばぁ」

 なぁ、裕次郎。と話を振られた甲斐は完全に固まったまま呆けて壁を見つめていた。
 それを見ていた知念は、小さくため息を漏らして平古場に進言する。

「卑怯な方法は良くないばぁ。そういう事は、その、気持ちを確かめるためにあるんばぁ?」
「寛よー、やーは初心やっし。レベルで言えば15歳の処女で生娘さー」

 生娘は処女に決まっているだろう、と言う周りの突っ込みも無視して平古場は急に声を潜める。

「やしがよ、永四郎はあらんどー」
「永四郎だって同い年やっし」
「あらん。年齢は15歳でもあにひゃーの身体は熟女どー」
「じゅくっ…」

 確かに、鍛えられた筋肉の上を覆うむっちりとした適度な脂肪は太股や尻の辺りに丸みを帯びさせていた。
 かなり無理矢理だが見ようによっては成熟した体と言えなくも無い。
 いやいや無い無い、と話を聞いていた全員が首を振って頭の中から木手の後姿を追い払うが追い討ちをかける平古場に陥落する。

「夜な夜な身体が疼くんばぁよ。火照った身体を持て余して何度も寝返りを打つ。その内指先がするすると自分の体を這っていって…」

 ベッドの中、シーツに自らの身体を擦り付けて悩ましく身体をくねらせる木手の手が、ゆっくりと褐色の肌を撫でながら下腹部へと滑り落ちていった。
 想像力逞しい中学生がぼんやりと着替えの手を止めたが、知念の低い声によって現実へ引き戻される。

「っ、凛…今度は何の本読んだばぁ?」
「あ、バレた?親父の官能小説さー。人妻の誘惑」
「まんまやっし」
「にしてもよー、ぬーがいい方法無いもんかねー」

 あっさりと話を終わらせてしまった平古場に、冗談だったのだと内心で胸を撫で下ろしながら知念は固まったままの甲斐を振り返った。

「えー、裕次郎。凛のは冗談やっし…」
「…よし」
「裕次郎?」
「凛!やー頭いいな!わん、見落としてたさー!その手があったんどー!」

 覚醒したかのように声を張り上げる甲斐は、手加減無しに平古場の背中を叩き大きく頷いてユニフォームを慌てて着替え始める。
 呆気に取られている部室内の面々には気付かず、脱ぎ散らかしたユニフォームを丸めて鞄の中へ突っ込んだ。

「わんはやるぜ!かんなじ永四郎から約束取り付けてくるばぁ!」
「ゆ、裕次郎…」
「おー、ちばれよー裕次郎。うり、わんからの餞別さー」

 いち早く我に返った平古場はまたニヤニヤした笑みを見せながら、ヒラリと人差し指と中指で挟んだ掌サイズの紙を甲斐に差し出した
 ご休憩・ご宿泊40%OFF、と書かれたその紙は、ラブホテルの割引券に他ならない。

「凛!」
「おー、わったーはどぅしどー。ちばれ!裕次郎!」

 意気揚々と部屋を出て行く彼に何も言えない自分を叱咤しつつ、知念は平古場のつむじを見下ろして問いかけてみる。

「割引券なんか、どこでもらったばぁ?」
「んー、さっきの小説に挟んであったんどー」
「…………」
「わん、もー兄弟いらねーさー」




 赤色を基調とした原色のどぎつい部屋。
 時代遅れにも丸いベッドはベッドヘッドのボタンを押せば回るらしい。

 自分が座って少し身じろぐだけでギシギシと煩いスプリングに耳を傾けながら、どうしてこんな所にいるんだろうとすら思う。

 第一自分達は中学生で、制服姿で、男同士だ。

 突然甲斐に学校から引っ張り出されて、学校からは少し遠いこのラブホテルへ連れて来られた。
 入る時に少し抵抗した物の、どうせ入り口で止められるのだからと好奇心もあって中に入ったのが悪かった。

 受付の中年女性はこっちの顔をも見ずに部屋の鍵を寄越してきて、喜び勇んだ甲斐が駆け出す勢いで自分を部屋に連れ込んだ。

 そして彼は今、ここまで聞こえるぐらいの鼻歌を歌ってシャワーを浴びている。
 ベッドに寝そべれば甲斐がシャワーを浴びている姿が丸見えだ。
 浴室は、何故かガラス張りになっている。

 もう一度思う、どうして自分はこんな所にいるんだろう。

 甲斐とは付き合っているから、ラブホテルで当然行われる行為に関してはもうとっくに経験済だ。
 中学生と言う年齢に相応しい有り余る体力と好奇心で、お互いの肌が馴染むほど抱き合ってきた。
 けれどそれは互いの自宅で、親や兄弟のいないときを見計らってした事でありこんな強制的に『ヤレ!!』と言われているような場所ではない。

 ぐるぐると回る思考の渦に嵌っている間に、キュッとシャワーを止める音がして扉が開く。

「あー、さっぱりした。永四郎、やーも浴びれ」

 上機嫌な甲斐が腰にバスタオルだけを巻いた状態で出てきて、木手にそう声をかけた。
 ギッと一際大きな音を立ててベッドに座り、木手の背後に手を付いて身体を寄せてくる。

「ちょっと甲斐クン、どうしていきなりこんな所」
「わったー月曜日から合宿あんに」
「そうですけど…」

 体の側面にぴったりとくっつく甲斐の熱い身体に、背中を駆け上がってくる予感を抑え切れない。

「一週間やーと一緒にいるのに、なーんもできんばぁ?休み無いんどー」  
「全国大会が近いんだから、しょうがないでしょ」
「だーるな。あんせー一週間分いちゃいちゃさせれ」

 真っ向からセックスと言ってのけるより、こうやって湾曲的に甲斐から聞かされるほうが木手は羞恥を感じる。
 甲斐の吐息が首元にかかったと思ったら、耳のすぐ下の辺りをべろりと舐め上げられて思わず肩を竦めた。

「っ…!」
「たまにはこういう所もいいばぁ?声出しても怒られんどー」

 項に吸い付きながら右腕で木手の腰を引き寄せ、左手でスラックスの中にきっちりと収められたシャツを引っ張り出していく。
 肩を竦めて唇の触れる感触をやり過ごしても、服の中に潜り込んできた不埒な手が慣れた様子で乳首を摘むと大げさに体が跳ね上がった。

「ぁっ…!」
「永四郎はここしちゅんどー」
「ん、ん…」

 指先で揉むように刺激されて、鼻にかかった甘い声が唇から零れる。
 気がつけば自分から甲斐に身を摺り寄せてしまっていて、湯上りの匂いに気付いて身体を離した。

「永四郎?」
「シャ、ワー…浴びてきます…っ」

 んー、と頬に口付けようとする彼の顎を掴んで押し出すと、その手を舐められて引きつった声が喉から飛び出る。
 肩に回していた手で木手の手を掴んだ甲斐は、何度も唇を落として自分の肩にその手を置かせた。

「シャワーは後で」
「ちょっと…甲斐クン」
「わん永四郎の匂いしちゅん」

 そのまま押し倒されて、またベッドがギッと鳴る。
 上からのしかかってくる甲斐の重みを受け止めながら、触れるだけのキスを何度も繰り返した。

 その内我慢できなくなって唇を開いたら、隙間から甲斐の舌が入ってくる。

「ん、ぅ…っ」

 目を閉じて口内を這い回る舌に意識を集中させていると、大きな手がぎゅっと尻を掴んできた。
 いつも挿入を急く甲斐にまたかと思いながらその手を退けるために腰を捩ろうとした時、先に彼の手が引いて行く。

 あれ?と一瞬引っかかった疑問は、快楽に蕩け始める頭の中では大した事ではないと隅に追いやられた。
 後に後悔する事になるとは、まだ気付いていない。

 甲斐がスラックスを脱がそうとするのを手伝って腰を上げた木手は、シャツのボタンを自分で外す。
 木手の腹に唇を落としていた甲斐は露になっていく胸元に手を伸ばし、胸筋を手で包み込んだ。

「っ…ん、…はぁ…」

 筋肉を揉み解されて、ジワリと燻る快楽が身の内に篭る。
 下着の中で力を持ち始めたペニスが布地を押し上げるが、甲斐はそれを見下ろして嬉しそうに笑うだけだった。

「勃ってきた」
「ぁ、…甲斐クン…っひぁ」

 親指の指先で乳首を押し潰されて、声が裏返る。
 刺激によって立ち上がった胸の先端を摘み上げられ、思わず腰が跳ね上がった。

「あっ、あ…あ…」

 自分ばかりではと考えて甲斐の腰を覆うバスタオル越しに股間を掴むと、そこはもう勃起して脈動している。
 喉を鳴らした木手がタオルの合わせ目から手を差し入れようとした時、やんわりと手首を掴まれた。

「甲斐クン…?」
「今日は、わんがやるからよー。永四郎はじっとしてるさぁ」

 こめかみの辺りに口付けられて、掴まれた手の甲にもキスを落とす。
 優しい仕草にうっとりとため息を零すと、その唇にも触れるだけのキスをくれた。
 熱くなり始めた指先で冷たい眼鏡のフレームを外しながら、木手は本格的に体の力を抜き彼に任せる事にした。




 いつもと違う事に木手がようやく気付いたのは、二人とも服を完全に脱ぎ捨てて絡み合う頃になってからのようだった。
 匂い立つような色香を滲ませる木手に煽られる自分をギリギリの所で引き止めながら、甲斐はツンと立ち上がった乳首に吸い付いた。

「っは、は…甲斐クン…っ、あ…」

 唇に含んだ先端を濡れた舌先で擦り上げ、クチュクチュと音を立てて吸い上げる。
 時折硬い歯の感触が真っ赤に熟れた乳首を掠める度、上擦った声が木手の唇から零れ出た。

「ねぇ…あ、ぁ…もう…ね…」

 体内に含まされた甲斐の指はもう三本を易々と呑み込み、アニメティの潤滑ゼリーを溢れさせている。
 涎を垂らして指をしゃぶる貪欲な口へもっと熱くて大きなものが欲しいと腰を揺するが、顔を上げた甲斐は伸び上がって木手の唇へ舌を這わせる。

「ん、甲斐クン…っふ…ぁ…」
「永四郎、どこもかしこも真っ赤さぁ」
「だ…って、ぇ…や、甲斐クンっ…」

 ビク、ビク、と震えるたびに先端から先走りを零して互いの腹を汚す木手自身にも、甲斐は触れなかった。
 いつもならそれを握り込んで溢れる体液を啜り上げてやるが、それも今日は我慢した。
 堪らず自分の指を絡めた木手の手も、掬い取って奪う。

「何ッ…や、あ…ぁ…っ」
「わんがやるって言っちゃさに」
「ん、ん…ぅ、ぁ…」

 先走りの付着した人差し指を口に含み、根元から舐め上げていく。
 ねっとり絡みつく柔らかい感触に目を細めた木手がため息を漏らすのを、じっと見つめながら。

 人差し指の先端を少しきつく吸い上げて離すと、指の股を擽って今度は中指を咥え込む。
 丹念に木手の手から体液を奪い取った甲斐は、その手を自分の指と絡めて握り込んだ。

「やーが余計な事するから、わん片手しか使えんばぁ?」
「あ、んん…っ、や…あ…」

 蕩けきったゼリーを纏わり付かせて体内から引き抜かれた指先で、ヒク付いて誘う縁を柔らかく撫でる。
 何とかその指を捕えようと腰を浮かせる木手の姿にぐらりと眩暈を起こしそうになりながら、人差し指だけを浅く咥え込ませた。

 チュプ、とぬかるんだ場所から上がる水音が耳に届いて、甲斐は大きく息を吐いて体内の熱を逃がす。
 きつく締め付けてくる内壁を優しく擦りながら、木手の内腿へ舌を這わせた。

「っは、あァ…ア…っ」

 筋肉を覆う柔らかい肉に歯を立てて軽く力を込めれば、内腿は小刻みな痙攣を繰り返し括れた腰が反り返る。
 片足の膝裏に自ら手を差し入れた木手が胸の方へ膝を引き寄せ、色付いて男を誘う場所を晒す。

「甲斐クン、っもう…ね?…ここに、入れて…っ」

 いつものお強請りが始まった。
 色に例えるとすればこの部屋のように毒々しい赤か、彼の好きな紫色だろう。
 強烈な色気を身体から溢れ出させる木手は、長い足を惜しげもなく大きく開きそれに飽き足らずはしたない口を露にするため指先でそこを広げてまで見せた。

 普段、甲斐はいつもコレに負けて木手の思うがままに動かされてしまう。
 けれど今日は違う、自分にそう言い聞かせて木手の足首を掴んだ。

「っ、甲斐ク…!!」

 親指で踝を撫でアキレス腱の部分を唇で挟み、舌を尖らせてそこをなぞる。
 そのまま踵へ舌を滑らせると、驚いたのか木手が足を引いた。

 シャワーも浴びていない事を今更気にかけでもしたのか、自分の爪先をぎゅっと握って隠してしまう。
 恥じ入る木手など珍しく、甲斐は喉の渇きを覚えてゴクリと生唾を飲み込んだ。
 それに気付いた彼が薄く笑ったのを見て、体内に残った指先で奥のしこりを押し上げる。

「っひ、ぃ…アぁ…っ!!」
「永、しろ…っ…」

 蠢く内部が指先ではなく自分のペニスを求めているのだと知っている甲斐は、指を引き抜いて木手と身体を密着させるようにのしかかる。
 木手を呼ぶ自分の声が、興奮に掠れて酷い有様になっていた。

 尻の狭間にいい加減勃起しすぎて貧血を起こしそうになっているものを押し付け、先端でゆるゆるとその場所を擦り上げた。
 追いかけるように腰を揺する木手が何とか先端を咥え込もうとする度、腰を引いて遠ざけてやる。

「はぁ、っ、…は、ア…ア…」
「っ…」
「や、や…甲斐く…何で…ぇ…っん、ぁ…」

 グチュリ、クチュリと濡れた部分が触れ合って擦れ合って音を立てた。
 息を弾ませて何とか望む物を迎え入れようとする木手の縋るような視線に、甲斐は奥歯を噛み締める。

「永四郎、欲しい?」
「ん、早くっ…ね、入れっ…あ、アっ…、やぁ…」

 戯れに先端を押し付ければ、淫乱な口が喜々としてそれを咥え込もうとした。
 それをかわして腰を引いた甲斐に、木手が自由になる片腕を首に回して催促する。
 狭い場所を押し開いて入ってくる熱の塊に期待していた蕩けた表情が歪んで、キュッと眉間に皺が寄った。

「なぁ、っ、永四郎…」
「あ、っふ…、ぅ、…ぁ、に?甲斐ク、ン…」
「合宿一週間、長いやー…っ?」
「ん、ん、…ァ、こんな時に、ど、したの…っ」

 首まで赤く染めて濡れ切った吐息の合間にようやく声を出す木手は、会話の内容よりも下半身の快楽に気を取られている。
 甲斐は自分の方が快楽に絡め取られないよう気をつけながら、腰を揺すって擦りつけた。

「一日ぐらいは休み、が…欲しいんどー」
「また、ぁ…その…んっ、話?はぁっ…駄目っ…、言ったでしょ…っ」

 所謂素股の感触に、木手の腰が意図的にくねって挿入を促してくる。。
 話はいいから早くしろと言わんばかりの態度だが、甲斐はそれも気付かない振りをした。

「永四郎、わん、の頼み…っだばぁ?」
「無理…な物は、無理なのっ…ねぇ、それより…甲斐クンッ…」
「あいー、ショックで萎えそう…」

 え、と木手が一瞬素面に戻ったような表情をする。
 そのタイミングを狙って先端の括れた部分までだけを木手の中へ埋没させると、ドロドロに蕩けた肉が絡みついてきた。

「あぁっ…あ、っァ…っん…」

 ようやく与えられたものに身体を震わせ、感触をしっかりと味わうように目を閉じてこちらが総毛立つ様な甘いため息を零す。
 けれど甲斐がそれ以上前にも後にも腰を動かさないのに気付いて、ゆっくり目を開けた。

「一週間、…なぁ、永四郎…」
「あっ…、ん、甲斐クン、その話っ…ぁっ、とで、ね?」
「ん〜ん、なま」
「だっ…て、あ、あ…早っ、お、く…まで…っ」

 敏感な縁の部分で一番太い部分を咥え込んでいるのは、緩慢な快楽を与えてはくれるが絶頂に達するには弱すぎる。
 奥が何度も蠕動を繰り返して熱の塊をよこせと訴えるが、頑として奥へ腰を突き入れようとはしなかった。

 感じやすい先の部分を突っ込んでいる甲斐も木手と同じく息を荒げてはいるが、霞んだ頭にそれでも残る目的を思い出し何度も大きく息を吐いて快楽を逃がす。

「っは、はぁ…っ…永四郎…」
「ん、ん…駄目っ、ぁ…アっ…」
「やっ、ぱりかぁ…っ」
「あっ!…ッ待…ってぇ…や、甲斐クン!」

 ヌチュ、と音を立てて腰を引くと、括れた部分が木手の体内から露出する。
 そのまま括約筋の動きで抜け出てしまいそうな所を、木手の腕が甲斐の腰に回って阻止しようと力を込めた。

「永四郎…?」
「はぁ、…っん…、半日…っは…だけ…」
「しんけん?」

 何度も頷く木手の中に再び先端を埋没させると、身体を仰け反らせて喘ぎを漏らす。
 しゃくり上げるような呼吸をしながら、自分のアナルを開く性器の感触に神経を集中させているようだった。

「約束な…っ、永四郎」
「ん、ん…わ、か…っ…から早くっ…」
「あと…コスプレと、っ…縛りも」

 それは駄目だと跳ね付けられるかと思ったが、木手は先ほどと同じく頷くばかりで早くとうわ言のように甲斐を急かす。
 もう冷静な判断ができない所まできているのか、あれほど嫌がっていた事もうんうんと頭を上下させ、絡んだままの手をきつく握って腰を揺すっていた。

「…ん、っ、好…っにして…い、からっ…」
「っ、…」
「お願…っ、奥までっ…して、ぇ…!」
「永四郎っ…」
「あ、あ…っは、あぁァ…ア…っ!」

 木手の太股を掴んで、ズブズブと自身を奥まで突き入れる。
 下腹部と臀部が触れ合っても更に押し付け、木手の足を開かせて根元までギッチリ咥え込ませた。

「あ、…あ、あ…は、…ぁアっ!」

 ようやく与えられた物に夢中でしゃぶりつく内壁の感触に、甲斐の方が持っていかれそうになる。
 馴染むのを待つ必要も無く腰を引いて叩きつけると、今まで散々放って置かれたペニスからとうとうドロリとした精液が溢れ出した。

「…ぁ…あぁ…っ…」

 閉じる事を忘れた唇から引き連れるような呼吸音を漏らす木手は、腰を断続的に跳ねさせるたび体内の甲斐をきつく締め上げる。
 何度かに分けて行われる勢いの無い射精が終わる前にその身体を揺すり上げ、ただでさえ狭い場所を半ば無理矢理押し広げた。

「い、…ひぃっ、あぁっ、や、甲斐ク…まだっ…」
「わんっ、も限界さ…ぁっ」

 スプリングを軋ませながら突き上げると、甲斐の首に回っていた木手の指先が肩に爪を立ててくる。
 それが食い込む痛みさえ興奮を掻き立てる材料でしかなくて、甲斐は夢中でその体を弄った。
 木手にお預けを食らわせているつもりで、自分にも強いていた我慢がとうとう限界にきた所為だ。

「っん、ん…っく、ぅ…っはぁ、っ!」

 絶頂を終えてもなお刺激される性感に一時辛そうに眉を寄せていた木手だったが、揺すられている内に声には再び艶が乗り始める。 

「っは、…ぁっ…、んん…あっあっ…!」

 逃がさないとばかりに木手の足が腰に絡みつくのをいい事に、甲斐は空いた片手で木手のペニスを握り込む。
 自分の精液を纏わり付かせているそれを上下に扱くと、手元からも卑猥な水音が上がった。

「ぃっ…あっ、あァッ…っひ、ぅんんっ…!」
「…っは、ぅ、う…永っ…しろ…」

 括れた腰とベッドの間に出来た隙間に腕を差し入れて引き寄せると、自分の身を支える力さえ失った木手の身体がぐにゃりと反り返って胸を突き出す。
 絡めていた手を離して自分に向かって差し出された乳首を、木手にペニスに触れてヌル付いた指先で押し潰した。

「…あぁっ…あ、ア、んっ…」

 両腕で自分の顔を覆い隠してしまう木手の足を抱え込んで、彼が一番感じる場所を先端で擦り上げる。
 途端に嬌声が泣きじゃくる声に変わり、息を吸うたびに喉が風鳴りのような音を立てた。
 溶けたゼリーを纏わり付かせて扱き立てる内壁から齎される快楽に、目の前がチカチカする。
 
「アあぁっ…ッんぁ、あ、あ…っ」
「永四郎っ…わん、もぉ…イくっ…!」
「待っ…あっ、俺もっ…ね、ぇ…イかせっ…あぁっ」

 一度射精してしまった所為で置いていかれそうになっている木手が、自らのペニスに指を絡めながら泣き声で懇願する。
 その手の上からペニスを握り込んで上下に擦り上げた。

「ひっ、ぃあっ…あぁ、あァ…っ!!」

 搾り取るような体内の動きに流されるまま叩きつけるように何度か突き上げて射精すると、ガクガクと身を震わせて木手も再び昇り詰める。
 木手が精液を吐き出すたびに自分のペニスを締め付けてくるのが心地よく、促すように再び手を上下させた。
 途端、トロリと蕩けた表情を見せていた彼が眉を寄せ、首を横に振って手を引き離そうと逆の手を添える。

「やっ…甲斐クン…止め…」
「ん、永しろ…?」
「あ…、は…っ」

 不意に握り込んだ手の中が暖かくなったかと思ったら、二人の指の間からポタポタと雫が溢れだす。
 次第に勢いを増していくそれに驚いて手を離すことも思い浮かばないまま、呆然とそれを見下ろしていた。

 雫は木手の腹から左右に流れてベッドのシーツに染み込んで、甲斐が膝を付いている為にへこんでいるそこへ重力に従って移動してくる。
 膝頭に触れた液体は既に冷たく、放出を終えて木手がブルッと身を震わせた振動で我に返った。

「永四郎…」
「…………」

 彼の顔は、セックスの興奮ではなく真っ赤に染まっている。
 現実から目を反らしたいのか甲斐に表情を見られたくないのか、顔を反らして唇を噛み締めていた。
 立ち上ってくる独特の臭いに、何故かニヤニヤと顔が緩んだ。

「えー、…お漏らし…」
「だから止めてって言ったのに…!」

 現実を突きつける甲斐の言葉を聞いて、快楽の名残で縺れ気味の口調と普段見せない幼さで答える。
 プライドの高い木手には耐え切れない羞恥心を感じている様子が、いつもより更に甲斐を興奮させた。

「や、甲斐ク…何考えて…汚いっ」
「やーのやっし。それに、わん別に気にしねーさ」

 素直な身体はその興奮を下半身へとすぐに伝達させ、木手の体内に残っているペニスがまた頭を擡げ始める。
 自分が粗相をしたと言う事実に半ば涙ぐみかけている木手の目元に唇を落として、緩む頬を押さえないまま素直な感想を口にした。

「わんが今どこに突っ込んでるか考えれば、これくらいどーってことねーだろ」
「っ、甲斐クンのバカっ…!」

 惚れ惚れするような平手打ちが綺麗に甲斐の頬へ決まり、その隙に木手はさっさとバスルームへ消えてしまった。




 赤みの引かない頬に大きな湿布を貼って、甲斐は部室前に立っていた。
 合宿の集合場所に指定されたここには、もう既にレギュラーと朝練前の平部員達が全員揃っている。

 甲斐の湿布を見た知念は肺の中の空気を全て押し出すような長い長いため息を漏らし、平古場はニヤニヤ笑って甲斐に近づいてきた。

「えー、裕次郎。どうだったんばぁ?」
「んー、まぁ…五分五分?」
「おいおい、わんの協力を無駄にさんけー」

 協力と言っても、彼が甲斐に手渡したチケットは別に苦労して手にいれた物でもないが。

 木手はと言えば見送りに来た校長と教頭に、早乙女と共に挨拶をしている。
 その後姿をのんびり眺めながら、甲斐は頬の湿布に触れた。

「まぁ、見てろって」

 二人が挨拶を終えてこちらへ来るのを見た知念が荷物を持ち上げると、他の面々も大きなバッグを肩にかけて出発の準備を始める。

「皆さん揃いましたね」
「おー。欠席は無しさー」
「当たり前ですね」

 平古場の言葉に軽く頷く木手は、いつもの仕草で眼鏡を押し上げた。
 それからチラリと甲斐に視線を流し、湿布をわざとらしく撫でる様子に眉を寄せて嫌そうな顔を見せる。

「出発前に、少しいいですか」
「んー?」
「………三日目のお昼から夕方六時まで、自由行動にします」

 ザワ、と辺りが騒然となるのにため息を零した木手は、もう一度だけわざわざ甲斐に視線をやってからそっぽを向いた。
 それに気付いている平古場が、大きな声で発言する。

「えー、木手。どういうつもりばぁ?」
「少し休養があった方が、効率が上がりますからね。さぁ、出発の時間です。バスに乗ってくださいな」

 パンパン、と手を叩いて促すと自分の荷物を担いで足早にバスへ向かう部長の背を眺めながら、平古場が甲斐の肩を叩く。

「正直、わんはやーを見くびってたさー」
「凛よー、わんだってやるときはやるさー」
「えー、どうやって落としたんばぁ?」

 興味津々の平古場に、甲斐は少し考えてからやっぱりニヤニヤ笑って答えた。

「ベッドの中ではわんの方が強いって訳さー」

 聞こえてしまった田仁志と知念が、顔を見合わせて大きなため息を漏らしている。


 END


2008/03/04:完成
2008/03/04:UP