願うだけじゃ物足りない-サンプル-

(冒頭部抜粋)  今でも時々夢なんじゃないかと思う。


 気持ちに区切りを付けるために、知念は木手に告白した。そして思いもかけず、彼を手に入れる事になった。
 探し物が諦めた途端に見つかるのとよく似ていると、見当違いなことを考えるぐらいには驚いたのを覚えている。
 本当に、想いが成就するなんて思っていなかった。
「わん、永四郎が好きさぁ」
「……俺も知念クンが好きです」
 その時は、思いが通じたのが何よりも嬉しかった。仲間には見せた事の無いはにかんだ微笑みで俯く木手を、好きになって良かったと思った。

 休み時間の短い間に、不意に木手の顔が見たくなることがある。そんな時は自分がとても彼を好きなんだなと感じられた。そして教室を出るまでは、いつも幸せな気分でいられる。
 恋い焦がれて、けれど押し留めて。それでも堪え切れずに伝えた知念の想いを、受け止めた木手が返してくれた。自分なんかの想いに応えてくれた。その事がただ幸せだった。