「あれ、ブレダ少尉だけ?ハボック少尉いねーのー?」
久しぶりにイーストシティに顔を出した金色の小僧は、開口一番図体のでかい同僚の居所を尋ねた。
このガキとあのお人よしの同僚は、よりにもよってオツキアイをしているなんつー関係らしく、俺は半分呆れながらホットドッグを頬張った。
「挨拶よりハボの居場所が先かよ」
途端にガキの顔が真っ赤に染まる。
あーはいはい、仲のよろしいこって。
「た・・・たまたまだってのっ!!」
「へーへー。ヤツは大佐のお供で市街の巡回にいってるぜ」
「えっ、じゃぁ大佐もいねーのかよ。報告書持ってきたってのに」
「30分もしねーうちに戻ってくんだろ。そこで待ってろ。お前、弟はどうした」
「外にブラックハヤテ号が居たから、遊んでるよ。報告書出したらすぐに図書館に行く予定だったし・・・。大佐が出かけてるとは思わなかったな」
コイツの立場を考えりゃ、ここには報告書を提出に寄ってるはずなんだが、大佐を探すよりハボが先なあたり、頭んなかに花ぁ咲いてるのが丸分かりだな。
「ハボのどこがそんなにいいのかねぇ・・・」
「な、何だよっ」
「別にいいけどよ。初恋で舞い上がってるガキにんなこと言っても仕方ねぇ」
「ガキ言うな!!それに初恋じゃねぇ!!」
「お?そりゃ初耳だ」
ノロケ話を聞く趣味は無いが、ハボをからかうのに都合のいいネタだってんなら話は別だ。
「アレか、幼なじみか何かか?」
「えー?あー・・・まぁ、そう言えないこともねーけど・・・」
エドは少し照れたように頬を掻いている。
「4つか5つくらいの頃にさー・・・1週間だけリゼンブールに遊びに来たでっかい兄ちゃんが居てさ。確かそん時何か病気が流行ってて、アルもウィンリィもかかって、大人たちは看病で忙しくて。オレだけ元気で誰も遊び相手が居なかったのを、ずっと一緒に遊んでくれたんだよな」
ちょっと待て。兄ちゃんて、男じゃねーか。その頃からなのかよ。
「すっげー優しくて、でっかくて、力持ちで。ハボック少尉ってさ、兄ちゃんにちょっと似てるんだよな。兄ちゃんが大人になったらこういう風になってるのかな、って初対面のときの初印象がそんな感じだった」
「あ、むしろそっちが原因なのか」
「あ?」
「いんや。何でもねぇ」
しっかし、それだとむしろその男をハボに重ねてみてるだけなんじゃねーかとも言えるな。からかうネタどころか、知ったらアイツはマジへこみしそうだ。
「兄ちゃんの肩車好きだったな〜。兄ちゃんが帰ることになったとき、オレすげー泣いて大騒ぎしたんだよな」
「大将!?」
そのとき、丁度司令室のドアが開いて、ハボが戻ってきた。
「あ、少尉!」
エドがすぐさまハボに走りよる。アレだな、まるで出かけてた主人が帰ってきたペットみてーだな。
「やっぱ大将かよ〜。声がするからもしかしたらと思ったら・・・」
がしがしエドの頭を撫でてるハボのヤツも、溶けそうなみっともねぇツラしてやがる。もともと垂れ目の癖に、尚更目じり下げやがって、全く。
「けど大将、アレ覚えてたんだな〜。すっかり忘れてるもんだと思ってたのに」
「・・・は?」
「アレだろ、俺が10年前にリゼンブールに旅行に行った時の話しだろ?」
ハボの言葉に、エドの奴が目を見開いて口をあんぐりあけて、固まった。だが、ハボの奴はエドの様子に気がついていないみてーだ。
「リゼンブールではしかが流行ってたんだよな?大将だけ前の年にかかってたとかでぴんぴんしてて・・・そういやあの時聞いたはしかにかかってる弟って、アルのことだよなぁ」
「待てハボ、お前今の話どこから聞いてた?」
「ん?コイツが肩車好きだったってとこから。ホンット一日中乗っかってたもんな。懐かしいなぁ」
病気が流行ったってくだりを聞いてない上に、エドは病名までは言ってない。つーことは間違いなく本人だってことか。
「丁度俺が帰る日が、コイツの5歳の誕生日の次の日でさ。誕生日プレゼント全部返すから兄ちゃんをオレにちょうだい、とか言い出して、コイツのお袋さんは困った顔してるしうちの両親は爆笑してるし・・・」
「わぁあぁあああ!!」
「・・・ガキの台詞じゃなかったらとんでもねぇ台詞だな」
エドは耳まで真っ赤になって頭を抱えてやがる。ま、そらそうだわな。
「な、ウソ、マジで!?」
「何お前、自分が言ったこと覚えてねーの?」
「え、いや、えっと、そ、そこじゃなくて」
明らかにうろたえているエドをみて、俺はふとあることに気がついた。
そういえばコイツ、ハボがその『兄ちゃん』だって気がついてなかったんだよな?
ってことは。
「再会してから初恋の相手だって気づかずにもう一回惚れ直しげふっ!」
「言うなぁぁぁ!!ウソだろぉぉぉぉぉ!?」
エドの野郎、右手で俺を殴って逃げていきやがった。機械鎧で殴るんじゃねぇ、俺はハボと違って繊細なんだぞ。
「え、え?!た、大将!?」
ハボは訳が解らないって顔でおろおろしてやがる。
「な、なぁブレダ!俺何か変なこと言ったか?!」
「阿呆!今の流れでなんでそうなる!」
全く、馬鹿馬鹿しい。
こんな阿呆らしい話誰が教えてやるか!
「知りたきゃテメェでアイツ追っかけて聞き出しやがれ!」
俺は少々ぬるくなったコーヒーをずずず、とすすった。
ま、その後
「何でもっと早く言わねぇんだよ!少尉にファーストキスあげらんなかったとか悩んでたオレ馬鹿みたいじゃん!」
とか、
「俺だって大将が気がついてくれなかったのマジで寂しかったんだぜ!?」
だの、
「何だよっ、少尉なんか5歳のオレにべろちゅーかました変態のくせにーーーー!!」
とか、馬鹿馬鹿しいが笑える痴話喧嘩を見せてもらったからまぁ、いいか。
5歳の大将にキスしてたっつーのはからかうネタに使えそうだしな。
彼方さんへ
サイト5周年おめでとうございますv
5周年の前日に相互リンクさせていただいたのも何かのご縁ということで!
つたない駄文ですが、捧げさせてください!
from 西月リナ
彼方さんのサイト5周年に捧げさせていただいたSSです。
5周年ということでエドワード5歳の誕生日の思い出なんかをね(笑)
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