「でね、そろそろランニングとかも出来るようになったし、士官学校に通おうと思うんだ」
出勤前の朝食の席でアルフォンスが発した言葉に、エドワードが眉を顰めた。
「・・・どうしても、お前も軍人になりたいのか?」
「自分が軍人の人が言う台詞じゃないよね、それ」
賛成しかねる、と言った様子のエドワードに、アルフォンスが苦笑する。
「別に反対ってワケじゃねぇけどよ・・・。オレが軍にいるからとか、そう言う理由なら止めておけ」
兄弟喧嘩とまでは行かないが、危ういバランスの空気を孕んだ会話に、ジャンは無言でコーヒーに口をつけた。
「それはキッカケになったかもしれないけど、それが理由の全てではないよ」
「じゃその理由ってのは狗と呼ばれてまで国家資格を取るほどの理由なのか?」
「少なくとも、ボクにとってはね」
エドワードが舌打ちをして立ち上がる。
「勝手にしろ。行くぞ少尉」
「え、ちょっと待ってくれよ俺まだコーヒー飲んでねぇよ」
「早くしろ!!」
エドワードは自分の上着を肩にかけ、一人でずかずかと出て行ってしまった。
「・・・自分こそいつまでも軍の狗辞めないくせに」
見えなくなった背中に向かい、アルフォンスがぼそりと呟く。
「まぁ、生身になったお前さんを危ない目に合わせたくないってのは、分からないでもないぜ?正規の軍人になって、それまでよりもっと色々見えるようになったものもあるだろうしさ」
「でも、それでも兄さんは軍を辞めないでしょう?別にハボック少尉と一緒に居たいからとか言うわけじゃ無いんだろうし」
アルフォンスの歯に衣を着せない物言いに、ジャンは苦笑した。
「俺本人に言うかね、それ」
「あ、すいません」
「いいけどよ。俺も大将のそんなところに惚れたんだしさ」
アルフォンスも苦笑する。
「・・・惚気られた」
「ハッハッハ!けど、その口調だとお前も大将が軍人になるの反対だったのか?」
アルフォンスは真面目な顔で首を横に振った。
「兄さんが軍人になるって言った時は、ボクは止めなかったですよ。兄さんが言うとおり、このままじゃ国が傾くって、ボクも思ったから。だから・・・ボクも軍人になって国を支える力になりたいって、そう思って」
そこで言葉を切って、アルフォンスは少し照れたように頬を染めた。
「あと、兄さんの副官になりたいなって・・・」
「いや、ちょっと待て!!それは駄目だ、俺は副官の席だけは譲れないからな!!いくら相手がお前でも!!」
「え〜」
「それにだな、お前国家資格取るんだろ?それだとちょっと手柄立てれば直ぐ佐官になるぞ。佐官は副官職には就けないんだよ」
「ハボック少尉は一生尉官のままでいるつもりなんですか?」
「う・・・」
厳しい突っ込みに返す言葉も無い。
「でもまぁ、それじゃあそっちは仕方ないか。でも、兄さんの手伝いをしたいっていうのが大きいんですよ」
苦笑したアルフォンスに、ジャンは肩をすくめた。
「あー・・・言いたいことは俺は分かるんだが、それ大将にそのまま言ったら『やっぱりオレが軍にいるせいじゃないか』って言うんだろうな〜」
「言うでしょうね。そう言う意味じゃないんですけど」
ふとジャンは時計を見て立ち上がる。
「おっと、もうこんな時間か。・・・ま、大将も馬鹿じゃねーんだし、そのうち分かってくれるさ」
「あっ、ハボック少尉!!」
玄関に向かおうとしたジャンをアルフォンスが呼び止めた。
「あの、明後日なんですけど・・・」
「・・・遅い!!」
「悪い悪い」
助手席にどっかりと足を組んで座っていたエドワードは、非常に不機嫌だ。
ジャンは急いで車のエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。
「なぁ大将、何でアルが軍人になるの嫌がるんだ?」
「弟が軍の狗になるって言い出して喜ぶヤツがいるかよ!!」
エドワードは不機嫌さを隠しもしない。
「けど、大将は軍の狗で軍人だろ?」
「それとこれとは話が違うんだよ」
「同じだと思うけどな。大将と同じことをやろうとしてるのを怒るってのは、まるで大将は軍人になったことを後悔してるみたいだぜ?」
「そういうんじゃねーよ!!軍人になりゃ危ない目に遭うことだって多くなるし、・・・一般の錬金術師は手のひら返して冷たくなるやつも多い」
丁度信号で止められ、ジャンはエドワードに視線を向けた。
ロイが同じようにエドワードを庇ったとき、あれほど怒ったくせに、自分が同じことをしていることには思い至らないらしい。
「・・・悪いことばっかりか?」
「は?」
「国家資格とって、軍に入るっつーことは、大将から見てデメリットばっかりなのか?危険な目に遭って、一般人から白い目で見られる。それだけか?」
「・・・錬金術の研究は進むし、研究費の心配もいらなくなるけど」
「んなことを言ってるんじゃないんだけどなー・・・」
ムッとしたエドワードが唇を尖らせる。
「じゃ、何だよ」
「自分でそう思わないなら、大将にとってはメリットじゃなかったんだろ」
「研究費と資料を手に入れやすい以外に、軍の狗になるメリットがあるっていうのか!?」
「だから、そう思わないならもういいって。むしろ、デメリットの方か?一般人が白い目で見るって、そこまで騒ぐほどのことかよ」
ジャンの言葉に、エドワードの瞳に明らかな怒りの色が浮かんだ。
「アンタに、何が分かる!?」
「あー・・・もーいいや」
もう、ジャンが何を言っても仕方が無い。エドワード自身が納得しなければどうにもならないのだ。
「何なんだよ!?つーか少尉ウザイ、これはオレ達兄弟の問題なんだから口出すな!!」
ジャンは無言でアクセルを踏んだ。
アルフォンスが軍に入るのには賛成らしいジャンとも妙な空気になってしまい、結局エドワードは丸一日ジャンとろくに話をしなかった。
家に帰ってからも、当然元凶であるアルフォンスとも口を聞かない。
その状況は次の日まで続き、エドワードはイライラしながら執務室で書類に向かっていた。
エドワードだけが口をきかず、ジャンとアルフォンスは話をしながらの食事は、夕食も次の日の朝食も美味しくない、の一言に尽きた。
勿論味が悪いのではない。エドワードとて、そんな状況で美味しく物を食べられるほど神経は太くないのだ。
「・・・はぁ」
アルフォンスが軍に入ることは賛成は出来ないが、別に邪魔しようと思っているわけでもない。
自分が押し付けることではないのは重々承知している。だから、そっちはまだいい。
問題は。
どうにもジャンに話し掛けづらいのだ。
自分でも言い過ぎたと思っているだけに、話し掛けられない。
普通に話し掛ければ、普通に返事してくれるかもとも思うが、返事をしてくれなかったら、と思うと踏ん切りが付かない。
いつもなら放っておいてもじゃれかかってくるジャンが、自分から話し掛けてこないと言うのが更に話し掛けづらさに拍車をかけていた。
「・・・なんだよ、もう・・・」
終業時間はとうに過ぎ、今日中に片付けなければならない書類も全て終わっている。
普段ならそろそろジャンが現れ、帰宅の途につくところなのに、ジャンが姿を見せない。
話し掛けられないから探しにいくことも出来ず、急ぎでもない書類をただただ片付けつづけているのだった。
だが、その書類ももう全部終わってしまう。
「・・・歩いて一人で帰っちまおうかな・・・」
そんなことをすれば、尚更気まずくなるのも分かってはいるのだが。
「狗・・・か」
『狗』と呼ばれることには、もう慣れた。
狗になることはデメリットだけか、とジャンは言ったが、エドワードはそのデメリットを肌で感じてきた。
軍の中に居ればそれを理由に嫌がらせをされるようなことは殆ど無い。だが、軍を出ればそうも行かない。
アルフォンスもそれを見てきたはずで、エドワードはアルフォンスにそんな思いをさせたくないのだ。
と、ノックの音が響き、エドワードは顔をあげた。
「どうぞ」
「エドワード君?」
ロスが顔を出す。
「どうかしたのか?」
「今時間あるわよね?1階の第2会議室に来て欲しいのだけど」
「え?いいけど、何?」
「マスタング准将たちが呼んでるの」
「分かった。この書類終わったら行くよ」
手元にある書類にサインをしてしまえば、特にやることも無い。
エドワードは手早くサインを終え、立ち上がった。
第2会議室の扉を開けようとして、はたと先刻ロスが「マスタング准将『たち』」と言った事に思い当たる。
もしもロイ以外の将軍でも居たら厄介だ、とエドワードは扉をノックした。
「エルリック少佐、入ります」
何の用だか訊いておきゃ良かったな、と思いながら扉を開くと、たくさんの炸裂音が鳴り響いた。
「なっ・・・」
「「「「「「HappyBirthday!!」」」」」」
頭の上に細いテープと紙吹雪が舞い落ちてくる。炸裂音は、クラッカーの音だったようだ。
ロイを始めマスタング組のメンバー、ロス、ブロッシュ、ジャン、アームストロングに、果ては。
「兄さん、今日が誕生日だって忘れてたでしょ〜」
「アル!!何でお前がここに!?」
「最初はね、うちでお祝いしようってハボック少尉を誘ったんだけど、それだと当直の人がこれないから、軍部でお祝いしよう、って言われてさ」
喧嘩をしていたことなど忘れたかのように、アルフォンスがエドワードにラッピングされた箱を差し出す。
「あ・・・ありが、とう・・・」
「君ももう17歳か。国家錬金術師となって、もう4年にもなるのだな。早いものだ」
そう言ったロイも、一目で錬金術関連の書籍だと分かる本を手にしている。
・・・ああ、そうか。
「あのっ・・・」
エドワードが意を決して口を開いた瞬間。
「エドワード・エルリックゥゥゥゥゥ〜〜〜〜!!」
「ギャァアアアァアァァ!?」
エドワードは骨が折れそうなほどの力でアームストロングに抱きしめられた。
「すっかり立派になって・・・我輩感動!!」
「あ、アンタは変わんねぇな・・・」
2日に1回程度は会う機会もあるのに、こういう場面で心の底から感動できるのもアームストロングらしいところだ。
「それに、アルフォンス・エルリック!」
「え゛」
ぐりっと振り返ったアームストロングに、アルフォンスが後退さった。
「すっかり元気になって!!」
「うわぁああ!!」
抱きしめようとしたアームストロングを、アルフォンスがすんでのところでかわす。
アルフォンスはそのままロイの背中へと回り込んだ。
「そ、そうだ!!マスタング准将、昇進のお祝いをまだ言ってませんでしたね!!おめでとうございます!!」
「あ、ああ・・・?」
アルフォンスから突如話題を振られたロイが怪訝そうな顔をすると、アームストロングの瞳が輝いた。
「おお!!そうでしたな、我輩からもあらためて!」
「ゲッ」
アームストロングの襲撃を、ロイとアルフォンスが左右に別れて回避する。
「アルフォンス!!わざと私を巻き込んだな!?」
「ターゲットが複数の方がかわし易いですもーん」
どたばたと走り回りながらふと周囲に視線を走らせたロイが、にやりと笑ってジャンの襟を掴んだ。
「ハボック、そう言えばお前の快気祝いもやってなかったな」
「へっ!?」
「おお、それもそうですな!!」
ロイがジャンをアームストロングの方へ突き飛ばす。
「ギャァアア!」
ジャンは素早い動きでアームストロングを回避した。
「ちっ、大人しく生贄になればいいものを」
「あ、アンタなぁあ!!」
大騒ぎしている4人を、周囲は笑いながら眺めている。エドワードも腹を抱えて笑った。
軍の狗となり、もう4年になる。その間に、それを理由に嫌がらせを受けたことも少なくない。
けれど、代わりにこの気のいい大人たちと知り合った。共に戦い、望みを叶えるための手助けも随分してくれた。
望みを叶えた後、そのままであればいずれ大きな戦争が起きるのは避けられない、と思った。
そうなれば、掛け替えの無い仲間となった彼らが、・・・軍人である以上、真っ先に危険に晒されるのも分かっていたから。だから、エドワードは軍人となる道を選んだのだ。
軍の狗になったことで、失ったものは確かにある。けれど、そのお陰でそれ以上に大きな、そこまで大切な、信頼できる仲間を手に入れた。
アルフォンスも、同じなのだろう。エドワードやこの大人たちが、危険に晒されるのを手を拱いて見ていたくないから、軍人になりたいのだ。
自分の力が、大切な人たちを守るための力になれば、と。
「エドワード君、誕生日おめでとう」
「ホークアイ大尉」
「主役を差し置いて、大騒ぎね」
「あっはっは。まぁ、面白いからいいよ」
それなりに体術に自信がある3人は、上手いことアームストロングの魔手から逃れ続け、中々決着がつかない。
「1回我慢すれば、あとは安全なんだけどなぁ、アレ」
「その1回のデメリットが大きいのでしょう?」
「ま、ね。それにしても、こんなパーティー準備してたなんて全然気がつかなかったよ」
「それはそうでしょう。話が出たのは昨日だもの」
「へ?」
どういう意味かとリザを見れば、リザは苦笑した。
「ハボック少尉が、エドワード君の誕生日を聞いたのが昨日の朝だったらしいの。それから準備を始めたから、昨日今日と凄く慌しかったのよ」
「え、でもそれじゃ準備する時間なんか全然無いんじゃ・・・」
「ハボック少尉は昨日、エドワード君を家に送った後に、軍に戻ってきていたわよ」
「え・・・」
「間に合ったのは、間違いなく少尉ががんばったお陰ね」
未だぎゃあぎゃあとアームストロングから逃げ回っている3人に視線を向け、リザが笑った。
「・・・ハボック少尉って、バカだと思わねぇ?」
「あら、そう?」
「バカだよ。だって、オレと少尉、喧嘩してたんだぜ?昨日の朝、オレすげー酷いこと少尉に言ったし・・・」
俯いたエドワードの耳に、リザがくすっと笑った声が聞こえる。
「それは、愚かだというのではなくて、それだけ深く人を愛することが出来る人だと言う事よ」
エドワードは一気に頬が火照るのがわかった。
「そ、っ・・・」
「それと、エドワード君がそうやって、言ってしまったことを後悔していることに気がついているからかも知れないわね」
「・・・」
そうなのかもしれない。
昨日の口ぶりからするに、ジャンはアルフォンスの気持ちがきっとわかっていたのだろう。
『軍の狗になって、嫌なことばかりだったのか』、ジャンはそう言った。そうでは無いことを分かっていて、何も言わずに背中を押してくれた。それは、エドワードが自分で気がつかなければ意味が無いことだったから。
「・・・少尉」
丁度エドワードの目の前でアルフォンスがジャンの足を払い、ジャンがひっくり返った。
「おわっ!!」
「すみません少尉っ」
ジャンを生贄にアルフォンスがさささっと逃げていく。先程から、ロイとアルフォンスは平気で他者を盾にするのに、ジャンはしないためにもっぱらジャンが矢面にたっている。
エドワードは足を踏み出してジャンの前に立った。
「大将?」
「なぁ、アームストロング少佐!!」
「うむ?」
アームストロングが、ふと動きを止める。
「アルが、今度士官学校に通うんだよ。そんで国家錬金術師になるんだ。アルのことだから直ぐにオレ達の仲間になるぜ!」
「おおお!それは素晴らしい!!」
「い゛っ」
「アルみたいな優秀な錬金術師を、また准将が紹介したとなれば、准将の次の昇進も早まるかもな〜」
「うむ!!」
「うっ」
ターゲットをアルフォンスとロイに絞ったアームストロングに、アルフォンスとロイが必死で逃げ出した。
「酷いや兄さん!今ボクのこと売ったでしょ!?」
「おのれ鋼の!後で覚えておけよ!!」
「少尉を盾にしないで自分で逃げろよバーカ」
笑ったエドワードを、床にひっくり返ったままのジャンが見上げる。
「大将・・・いいのか?」
主語が無くとも、アルフォンスの進路について、認めるのかと問われたことは分かった。
「ああ。よく・・・分かったよ」
「そっか」
ジャンも笑った。
盛り上がっているパーティーをこっそり後にして、ジャンはテラスへ出た。
第2会議室は禁煙なのだ。
テラスの床に胡坐をかいて煙草を取り出し、火をつけていると、ガラス戸が開く音がした。
「少尉?」
「大将。主役がこっち来ていいのかよ」
「もう皆オレ抜きで盛り上がってるよ。どっちかってーと、もうアルが主役になってるし」
「ああ・・・」
毎日エルリック邸に行くジャンは兎も角、他の者は体を取り戻した後のアルフォンスの姿を殆ど見ていない。しかも、近いうちに士官学校に入るなどといわれれば皆話をしたがるだろう。
エドワードが近寄ってきてジャンの隣に腰を下ろす。
「た、大将!」
「ん?」
「その・・・ゴメン!!」
ジャンはエドワードに向かって両の手のひらを合わせた。
「え・・・な、何だよ?」
「昨日俺、偉そうなこと言った。一般人に白い目で見られるのなんか大したことないって」
「そんなの、別に」
「あのあと、准将にそんなに国家錬金術師ってのは大変なのかって訊いたんだ。そしたら、すげぇ怒られた」
エドワードは困った顔をしてジャンを見ている。
「軍人が民間人に嫌われるのと同じレベルで考えるな、場合によっては何年も世話になった家族同然の師匠にまで縁を切られるようなこともあるんだ、ってさ。まして、大将は田舎の方を旅してたこともあったわけで、軍人でさえ嫌われるような地方なら、それこそ口には出さなくても相当な嫌がらせをされたこともあるはずだ・・・って言われたよ。俺、んなこと知らなくて・・・。マジで、ゴメン」
「いいよ、別にそんなの!その・・・オレこそ、酷いこといったし、ゴメン」
「大将が怒るの当たり前だろ。俺が悪いんだから」
「少尉」
エドワードの視線が真っ直ぐにジャンを捉えた。
「知らないことは罪じゃない。知ろうとしないのは、駄目だけどさ。少尉はオレのこと解ろうとしてくれたんだろ?だったら、それでいいんだよ」
「大将・・・」
「・・・それに少尉は間違ったことは言ってない」
エドワードが膝を抱える。
そっと手を伸ばして肩を抱き寄せると、エドワードは抵抗せずにジャンに寄りかかってきた。
「軍の狗になったことも、そのあと軍人になったことも、後悔してない。嫌なこともあったけど、いいことも沢山あった。なら・・・アルだって軍人になっても、幸せを掴めるはずだよな。オレは今、幸せなんだから」
「ああ。アルならきっと幸せになれるはずさ。いい奴だからな」
ぐりぐりと頭をこすり付けると、エドワードは笑って、それからふと困ったような顔をした。
「ま、それはいいけどさ。オレ、もう喧嘩はゴメンだな。少尉と話せないの、正直キツかった」
「そりゃこっちの台詞だっつの。このままフラれたらどうしようかと、マジで悩んでたんだから」
「えー!?だって少尉話しかけてこなかったじゃん!?」
「話しかけてシカトされたらマジ泣きしちまいそうだったからだって・・・」
エドワードがジャンを見上げて目を丸くする。それから苦笑した。
「ま、お互い様、かな」
「そうかもな」
エドワードの額に音を立てて唇を触れさせる。
「HappyBirthday」
アルは黒いのではなく、毒舌(?)なだけです。多分。
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06/07/10 脱稿