俺はそれを見て、2、3回くらい瞬きした。目の前の人物の顔と、それの間も3往復はした。
 ――何だか、眩暈がしてくる。
 とりあえず、目の前で嫌味なくらいに爽やかに笑っている二見の頭を殴りつけておいた。


 もってけ☆ニーソックス!!


「これ、何だよ」
「ニーソックス。膝より少し上まである靴下」
「どうしろってんだよ」
「履いてくれませんか、ジュリエット」
「ふざけんな」
 正直、俺はもう帰りたい。
 ココは保健室で、良くここでサボっている二見に用があって、なんだかんだやっているうちに裸にされて、今じゃワイシャツしか羽織っていない状況になっている。
 身体もほとんど動かないから、起きるのも面倒に感じる。
「おねがい。白い靴下も真面目なジュリエットっぽくていいけど、やっぱりいつもと違うジュリエットも見たいんですよ、俺としては」
「だからって、コレはねーだろ」
「ジュリエットなら大丈夫。どんなカッコでも、かわいくはあっても、引くことはないから」
「――――複雑すぎるぞ、それ」
 かわいいと感じるか、引かれるかというのは、イコールではないと思う。
 だからこそ、余計にコレはないんじゃないかと思うわけなんだけど。
「おねがい」
 ――時々、コイツは自分の顔の使いどころが良くわかっているんじゃないかと思うときがある。
 それが、まさにいま。
「履くだけだぞ」
「それ以外に何ができるのよ」
 悔しくて、とりあえずみぞおちに拳を入れておいた。

「あー、やっぱりいいわ。ニーソックスとワイシャツ」
「――――……」
 とりあえずはいてみた。
 どこが二見の壷に入ったのかはわからないけど、再びベッドに押し倒されている状況から見て、嫌というわけじゃないらしい。
 ほんと、何がいいのかわからない。
「なぁ」
「なんですかね?」
「そんなにいいもんなのか?」
「いいでしょ、ワイシャツ一枚と靴下。すごい倒錯的で」
「お前の口から倒錯的なんて言葉が出るなんて思わなかったよ」
 とりあえず、抱き締められている状況が少し苦しくて、二見の胸元に手を置いて隙間を作ろうとした。
 でもその前に、二見が勢いよく起き上がり、何かを含んだ顔で俺に笑いかけた。
 多分、あんまりいいもんじゃない。
「ねえ、うつぶせて膝立ててもらえない?」
「――――は?」
 あまりに唐突な願い事に、思わず面食らってしまった。
「おねがい、アナタが疲れることはしないから」
「――めんどい」
「別に俺がやってもいいんだけどね。アナタが倍疲れてもいいなら喜んで」
「――――……」
 未だに崩れない笑顔が、尚のこと怪しさを増している。
 でも、コイツはこういうときは嘘をつかないから、倍疲れるとコイツが言うんなら多分疲れるんだろう。
「ん」
 とりあえず、二見の言うとおりに身体を捻り、うつ伏せになって膝立ちになった。
 正直、この体制はあまり好きじゃない。顔の判別のつかないものに、いいようにされているような錯覚に陥るから。
「あ、ジュリエット。もうちょい足閉じて」
「ぅあっ……!」
 突然、太ももに二見の手が添えられて変な声が出る。当然、相手にも聞こえていたらしく、恐る恐る振り向けばいい笑顔をした二見の顔と視線がかち合う。
「感じた?」
「――――うるさい、何するか知らないけどするなら早くしろ!」
「んじゃ、遠慮なく」
 そういうと二見は、俺の太ももに何か液体らしきものを塗りつけ始めた。
「な……なに、して――」
「ちょいと準備を」
「あ……っふ」
 自分じゃないみたいな声が嫌で、たまらず側にあった枕に噛み付く。それでも、口から漏れる息は抑えられなかった。
 全身に熱が回ったころ、背中に重みと熱を感じたと思ったら、二見の声が俺の耳に落ちてきた。

「ねぇジュリエット」
「――な、んだよ……」
「素股ってわかる?」
「わ、かるわけ……」
 俺の言葉に、二見が息だけで笑った。
「じゃぁ、実践しちゃいましょうか」
「なに、いって――――ひぁっ!」
 濡らされた太ももの間に、熱いものが捻じ込まれる。その正体に気付いた瞬間、首まで熱くなった。
「ば……おま――あつ、ぃ……!」
「どう、コレが、素股」
「やめ……熱、あつい……!」
「摩擦で、擦れて……熱いの? それとも――――気持ちよくて熱いの?」
 ほんの少し前も、同じような事をしたのに、脳にまで沁みたその言葉に、下半身に熱がこもるのがわかる。
 二見の吐息も同じくらい熱くて、当たった所から溶けそうになる。
「ねぇ、アナタのココも、固くなってきてるんですよ」
「やめ……ろ、いう、な――」
「ねぇ、これ、きもちい?」
「――き、くな……」
 初めはヌルヌルして気持ち悪いだけだったのに、段々擦られたところが熱くて、もっとしてほしいと思う。
 緩みそうになる太ももを必死に閉じている自分が、何だか恥ずかしくて、俺は声を押し殺した。
 でも、そんなこと、コイツには全部知られていて――
「――――腰、動いてるよ」
「ぁ……!」
 消えてしまいたい衝動に駆られた。
 いつの間にか、太ももの間を行き来していたものが、俺のにこすり付けられるように動かされる。
 その、いつもと違う感触に我慢するまもなく昇り詰めてしまった
「ふた、み……、ぃ、やだ、もう……むり――」
「ん、おれも、そろっと……」
 二見の手が、俺と二見のものを一緒にもむ様にこすり付ける。
 さらに、早いストロークで腰が動かされ、俺はすぐに達してしまった。
 

「ジュ〜リエット、お疲れ」
「――――ホントにな」
 あのあと、汚れたシーツをもっと汚し、さらにワイシャツもドロドロにしてしまい、仕方なくジャージで帰ることになった。
 ちなみに、二見もジャージだ。
「歩けなきゃ負ぶって上げようと思ったのにねぇ」
「えんりょする」
 ふら付きながらも、歩けないほどではなかったので、何とか二見に支えてもらって保健室を出た。
 来たときにはまだ日はそんなに傾いていなかったのに、すっかり暮れてしまった――……一体何時間ここに篭っていたのか、考えるのも嫌になる。
「あ、そーだコレ」
「何だよ」
「アナタにあげる。時々でいいから履いてね」
 二見から俺に手渡されたのは、、あの汚れてドロドロになったニーソックス。
 
 ――――とりあえず、二見の目の前でゴミ箱に叩き込んでおいた。








――――――――――――
 脳内ニーソ・ハイソ祭り用。
 どうしよう、需要無視して本に起こそうか本気で思案中。
 ニーソ、ニーソ、ニーソ、ニーソ!!




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