探し人は、案外簡単に見つかった。
「――風邪引くぞ」
屋上の貯水タンクの近くに二見はいた、寝てたけど。


ジュリエットの戯れ。



昼休み。
昼飯を食べようと席から腰を浮かせたところで、香藤先生に二見を呼ぶように頼まれた(半ば強制に近かった気もする)。
とりあえず、すきっ腹を抱えて行きそうなところをいくつか当たってみた。
そういえば今日は天気いいな……と思い、屋上に足を向けてみたら、ビンゴ。
二見は居た、ねてるけど。
「おい、二見」
軽く肩を揺らしても、起きる気配がない。今度は強く揺すってみる。
「二見!」
二見は微かに呻いたが、まだ寝ている。どれだけ寝不足なんだろう。
次は鼻でも摘もうか……と思った時、風で二見の髪の毛がサラサラとなびいた。
シャンプーのCMの一コマのようなその光景に、俺は悪戯を思いついた。

 * * *

「―――ぃ、おい…」
アノ人の声がする。そう気づいた途端、頭がすぐに晴れていく。
「―――ジュリエット?」
「ぅす」
目が覚めた途端、機嫌のいい金沢の顔がある。
俺、今日の星座占いそんなに良くなかったはずだけど……なんて考えながら、何かよう? と聞いてみた。
「香藤先生が呼んでた」
それだけ言うと、金沢は立ち上がり、少し背伸びをした。微笑ましいその動作を見守っていたら、ある違和感に気づいた。
「アナタ、いつの間に不良になったの?」
「は?」
「コレ。前の時間は体育じゃなかったでしょ」
眉間に皺を寄せた金沢に苦笑して、自分の首元を指した。
青いリボンタイは、カレに良く似合っていたから、無いと少し残念になる。
すると、目を見開いた金沢が思いっきり噴出した。
カレがお腹を抱えて笑っているところなんて、滅多に見ることがないから、むっとするよりビックリしてしまう。
ヨダレでも垂らしてたかな、俺。
「―――……わりぃ。何でもねぇ……あ、そうだ」
そういうなり金沢は、俺の首からスルリとタイを引き抜いて……って、え?
「借りてく、じゃぁな」
早く行けよと言いながら、金沢は素早く俺のタイを締めて、始終笑顔で屋上から姿を消した。
きっと、今の俺の顔は赤い。耳まで熱いから全身真っ赤になってると思う。
「反則でしょ、あれ」
でも嬉しい。アノ人の首元で揺れているのが、俺のタイ。
あの某にでも、自慢してやろうかと思ったところで、頭に違和感を覚えた。

「――――っとに、アノ人は!」
やることがいちいち可愛らしくてしかたない。
頭に触れると、俺の髪の毛が軽く結ばれていた。結んでいたのは、もちろん。





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主人公も悪戯をするといいな、と思いながら考えた小ネタ。
学年が一緒なら、ネクタイ交換もありだよな…とも思いました。



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