日常が崩れるのなんて、本当に小さなきっかけでおこる。
「好きです、一目ぼれです、付き合ってください!」
「――――帰ってください」


 フォーリン ⇒ ラブ


 今日も一日、何もないはずだったんだ。
 いつも通りに学校行って、いつも通りにコンビニのバイトに行く。ちょっと違うのは、今日のシフトにカワイイ子がいるって事くらい。
 そんな普通の日、だった。さっきまでは。
「お願いします、好きなんです。ほんっとうにすきなんで―――」
「うるさい、黙れ、列が詰まる、とっとと帰れ!」
 何が悲しくて、くそ忙しい時間に男に告白されなきゃならないんだ。あまりの俺の形相に、男の後ろの客が引いているのが見える。
「いやです、返事くれるまで動きませ――」
「おれはおまえがきらいですはやくおかえりください」
 小さい子から評判のいい笑顔を浮かべて、俺は棒読みで答えた。
 そして、やっと折れたのか、男はため息をついてチロルチョコ1コだけ買って帰っていった――ちなみに、その時出してきたのは、何の嫌がらせか万札だった。

「お疲れ様でしたー」
 バイト仲間からからかわれた俺は、憂鬱な気分で裏口から帰ることにした。店の正面に止めていた自転車を取りにいくため、口元をマフラーで覆いながら歩いていると、店先に人影があった。
「あ、おそかったね」
「――――――……」
 それは、見たくもなかった、あの男。
 ニコニコと手を振るそいつを無視して、さっさと帰ろうと自転車のライトをつけたところで、後ろの荷台に重みを感じた。みると、俺の自転車の荷台に座っている男がいた。
「うち、近くだから乗せてってよ」
「――――二人乗りは禁止されていますので。」
「ほんと、すぐ近くなんだ」
「だったら歩いて帰れ」
「少しでも一緒にいたい」
 コレがカワイイ女の子だったら、多分喜んで送ってあげたのに。
 少しの可愛さのかけらもない――でも、カッコいい部類には入るんじゃないかと思う男の、あまりにも大人気ない行動に、俺はため息をついて仕方なくそのまま自転車にまたがった。

「知ってる?」
「何が」
「人が人を好きになるのは、その人が自分の持ってない遺伝子情報を持っているからなんだって」
「ふーん」
 大の男2人を乗せた俺の愛車は、悲鳴を上げながらよたついていた。
 それを知っているのかいないのか、後ろの男はのんびり俺に話しかけてくる。最初は俺の腰に回していた腕は、その衝撃で一度大きくこけそうになったところで、自主的にやめてくれたみたいだ。
「一目ぼれってね、遺伝子レベルのすごい恋なんだって」
「ふーん」
「だから、どんなに嫌われても、好きにさせてみせる」
「――――遠慮しとく」
 しばらく無言でこぎ続けていたら、後ろからココでいいと言う声が上がった。
 自転車を止めて、建物を見上げる。それは、最近学校で話題の高層マンションだった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「――――……フフッ」
「何だよ」
 自転車から降りたそいつは、俺のすぐ近くによってきた。それはもう、とてもキレイな笑顔を浮かべて。
「やっぱり、好きだなって。覚えてる? 俺、前に一回あったことあるんだよ」
「知らない」
「まぁ、3ヶ月も前だしね。でも、俺は覚えてる。その時好きになったから」
 気が付いたら、鼻の頭がくっつきそうになっていて、慌てて顔を離そうとしたら、ようにキスされた。
「っ……なに、すん――」
「お礼とおまじない。これからもずっと、俺の事で悩んでね」
「ふざけんな!!」
 ありったけ叫んで、逃げるようにその場を立ち去った。
 何より悔しかったのは、あの時のキスで、口の中がチロルチョコの味がしていること
 そして――
「あれ、どうみても俺の学校の制服じゃねぇかー!!!」
 コートの下から少しのぞいた制服に、今度は学校で会う可能性を考えて、俺は夜空の星の下、盛大に叫んだ。





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―――――――

突発で思いついた話。
何だか、強引な攻と、何だかんだでお人よしな受の組み合わせが好きなようです。
続きは、気分によって出るかもです。