平屋の廃屋
廃屋に閉じ込められた四人は、どうやらいじめっ子のようだ。先ほどから情けない声で喚いている。
さて。
何で私は冷静かと言うと、件のいじめられっ子だからだ。
――つか、勝手に人を殺すなよ。
どうも、同じ学校で近所だった奴が自殺(これまた、別のいじめっ子に苛められて)したのを、私と勘違いしたみたいだ。
あ、仲間割れし始めた。
ついでに。私がここにいる理由は、単純にこの家が、私の持ち家だからだ。
明日越してくる予定だったけど、ちょっと予定が早まったので掃除をしに来たら、これだよ。
まあ、格安物件だって言ってたもんなー、あのおっさん。
なんでも出るらしいんだが、寺で生まれ育った相方曰く、こんなのはまだ優しいとのこと。本当に酷く、危ない所は絶対に近づけないようになっているとの事。しかも、人はそういう場所に、本能的に近づかないようになっているとも言っていた。
あれの言う事が正しい事は、私は身をもって知っている。まじで。だから否定はしない。
あ、王道パターンの二対二に別れた。
つーか、そろそろ警官呼ばなきゃ。住む前に家が壊れる。
* * *
大豊作
よくある怪談。
今は使われていない道のトンネルで、ある一定の条件を満たすと、女の人の幽霊が現れる。
私は、今まさにそのトンネルにいる。
というのも、たまたま新しいトンネル付近で、道幅拡張工事をしており、迂回路としてこの道を通る事になっているからだ。
まあ、条件さえ満たさなければ、幽霊は現れない……はずなんだけど、この道、昔の道だから道幅狭いし、通行整理の人が居ないもんだから渋滞してしまっている。しかも、ただいまの時刻は夜中の十二時。
ヘッドライトはもちろん辺りを照らしているし、苛々している所為かクラクションは鳴り放題。
自称、空気を読まない事に定評のある私はもちろん、鳴らさない。
よって、他の車が阿鼻叫喚の惨劇状態になっている中、何事も無く帰ってくる事ができた――と安心していたら、謎の青年が夢枕にて、延々とお払いに行って来いと訴えてきた。何の冗談かと問うと、車の外に、大量に張り付いてきてしまっているとの事。一応忠告は聞く性質なので、後日お払いには行ってきた。
後に、彼から聞いた話によると、車に入ってこれなかった理由は、条件を完全に満たしていなかった事、そして、車の後部座席に、相方の臭い靴が三足、なぜか積まれていたため、との事。
さらに相方に聞いたところ、その三足の靴は、彼と何度もピンチを切り抜けてきた相棒らしい。すでに三足とも、ボロボロになったから捨てたと聞いて、私はあれも幽霊だったのだと、やっと気付いた。