※サイトサンプル用に改行等を多少弄ってます。無駄に長いです。






>だってこの距離が、・・・・・・【お題:相互片想い+メガネ】




わかっている。彼は大事な「鍵」だ。
彼女にとっても、機関にとっても。そこに僕個人の意思は必要ない。
むしろ僕の感情で彼を揺らめかせるわけにはいかない。
そう考えながらも気がつけば僕は自然と立ち上がって彼に近づき、頬に手を添えていた。
「古泉?」
ガラス越しの彼の目が不思議そうに僕を捉える。
その瞳に嫌悪感が見えないことに心のどこかで安堵しながら、
彼の嫌がる顔だけは見たくなくて、シャットアウトするように目を閉じて彼に口付けた。
「・・・・・・っ」
唇が触れ合うだけの軽い感触。
ただそれだけなのに彼の、というだけで異様なほど胸が高鳴った。
一瞬の接触の後、静かに唇を離す。
彼は怒っているだろうか、驚いているだろうか。
罵詈雑言を浴びる覚悟をしながらゆっくり瞼を上げると、目の前には呆然とした表情の彼がいた。
僕と目が合うとハッとして唇と上気した頬を隠すように手のひらで顔を覆う。
「おま、本当に試さなくてもいいだろう!」
「すみません、つい・・・・・・」
正直なところ、自分でも驚いていた。
今までいろんな彼の姿を見ても、ギリギリのところで理性を働かせてきたはずなのに。
なぜよりにもよってこんな時に・・・・・・。自分はもしかして眼鏡属性があったのだろうか?
もし、これも長門さんの計画のうちだったのなら、本当に彼女には一生敵わない気がする。
どちらにしろ、ここは長門さんの言葉に好奇心が湧いただけということにしてしまおう。
それが彼にとっても僕にとっても最善策だ。
「勢いで男にするのか、お前は」
彼が呆れたように言う。
「ええと、なんといいいますか、流れ的に・・・・・・?」
好奇心が旺盛なのも困りものですね。
そう言って誤魔化すように笑おうとすると、目の前の彼が突然眼鏡を外した。
そして席を立って僕に一歩近づいたと思えば、半ば無理矢理顔を固定される。
「ちょ、なんですか!?」
いつもとは逆に彼の顔が接近してくることに戸惑いを覚えた僕は慌てて彼から距離をとろうとする。
しかし彼はそんな僕の様子など見ていないかのように、「いいから黙ってろ」と聞く耳を持たない。
あれやこれやと脳内でアワアワしているうちに、不意に視界が歪んだ。
「え」
「・・・・・・お前、なんでも似合うのな」
目の前で少しだけぼやけた姿の彼が憮然とした様子で僕を見ていた。
―――これは、もしかして

「眼鏡、ですか?」
「だな」
一体どういうわけか彼に眼鏡を掛けさせられていた。そして一方的に怒られた気がする。
「あの、なぜ僕に眼鏡を?」
「俺だけじゃ不公平だろ」
「それはそうですが・・・・・・」
だからといって僕が眼鏡を掛けても誰も喜ばないと思うんですが。
そう言うと彼がきょとんとした表情を一瞬だけ見せた後、何かを思い付いたようにニヤリと笑った。
「いいんだよ、俺も試してみたくなっただけだから」
「は?」
彼の言葉の意味が分からずに問い返した瞬間、ネクタイをグイっと引っ張られる。


「えっ」

突然のことにバランスを崩した僕にギリギリまで近づいた彼が、そのまま噛み付くように僕の唇を奪った。
えええええ!?
思いがけない彼からの口付けに頭が真っ白になる。
本当に間近に迫った彼の顔が眼鏡越しでも見え、どこか色気を感じる表情に治まりかけていた鼓動がまた激しく高鳴りだす。
どうしてどうしてどうしてどうして。
頭の中でその単語だけが渦巻いている。
そして彼はそんな僕を無視して押付けるように何度も角度を変えてキスをし続けている。
「・・・・・・ん、」
急に彼が一度唇を離したかと思えば、手を伸ばして強引に僕に掛けさせた眼鏡のフレームに触れる。
今度は何をされるんだろうと身構えると、彼が熱に浮かされたような顔でポツリと呟いた。


「・・・・・・・・・邪魔」

「え」

言葉と同時に眼鏡が彼の手によって外された思えば、
両手で僕の顔を強引に捕まえて、本日三度目のキスを交わしていた。











>いまじねーしょんぎゃっぷ☆・・・・・・【お題:女体化+濡れ透け】




(略)

髪を優しく撫でられる感触にくすぐったさ感じながら、意識が段々と浮上する。
「・・・・・・・・・ん」
重い瞼をどうにかこじ開けると、視界いっぱいに部室の天井が目に入った。
・・・・・・ということは、俺はどうやら床に寝転がっているらしい。
それにしてはなんだか頭部が温かいし柔らかいような・・・・・・?

「気がつきましたか?」
「どわっ!」
天井を見つめたまま考え事をしていた俺の目の前に、いきなり古泉のドアップが迫ってきた。
だから顔が近いっ!
そうツッこんだあと、俺は気付きたくもない事実に気がついてしまった。
間近で微笑んでいる古泉の顔、そして後頭部の温かい感触と、慣れたように俺の髪を梳く手。
以上三つの条件を挙げたら、これを読んでいる勘の良いお嬢さんもだいたいのことは理解してくれるんじゃないかと思う。
むしろ、口に出したくないので理解してくれるとありがたい。
一言だけ言わせて貰うなら、なぜ朝比奈さんや長門じゃなく、古泉なのかと小一時間ほど問い詰めたいね。
「・・・・・・そのにやけ面をなんとかしろ」
しかし、未だ眩暈から回復出来ていない俺が出来た抵抗といえば、こうやって古泉に文句を言うくらいだった。
別にこの状況を喜んでいるわけでも、安堵を感じているわけでもないので、そこのところはしっかりと理解しておいて欲しい。
「すみません、しかし、なかなか膝枕というものはいいものですね」
「て、めぇ・・・・・・俺が必死で逸らそうとしていた事実をあっさりと口にしやがって・・・・・・!」
にこにこと機嫌よさ気に話し出す古泉の口を塞ぐべく、
どうにか身体を起こそうとするが、いかんせん眩暈が酷くてそれどころではない。
それに、さっきから気になっていたんだが自分の声が風邪でもひいたように掠れている。
ついでに身体も重い感じが・・・・・・
そう思いながら自分の心臓辺りを押さえようとすると、
ふにっとマシュマロのような感触が自分の掌に返ってきた。
「うん?」
不思議に思いながら、そのマシュマロをふにふにと触ってみる。
柔らかくて弾力がある。まるで朝比奈さんの・・・・・・・・・
「・・・・・・って、ええええええ!?」
俺は衝動のまま驚いた様子の古泉を押しのけて上半身を起こす。
慌てて古泉の視線から逃れるように古泉に背を向ける俺。
そしてシャツの上から触ったままだった、その、なんというかむ、胸?おっぱい?的なものを確認するようにそろそろともう一度揉んでみる。

むにゅ、むにゅ、・・・・・・むぎゅ。

「ひぁ!?」
緊張のためか思った以上に力が入ってしまい、思わぬ声が出てしまう。
その声がその、古泉とよからぬことを致しているときの自分の声と似ていて、
一人で勝手に羞恥を感じて顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかった。
「・・・・・・あの?」
古泉が訝しげに俺に声を掛けてくる。
古泉の声にビクッと思い切り身体を震わせてしまった俺。
アホか!これじゃやましいことがありますって身体全体で表現しちまったようなもんじゃないか!
自分の間抜けっぷりに内心頭を抱えながらも俺は足りない頭でこれからのことを考える。
思考中・・・・・・・・・思考終了。
よし、古泉。悪いが今は逃げさせてくれ。
お前にこのことがバレると非常にヤバイ気がするんだ。なぜと言われても困る。
だだの俺の勘でしかないが、正直お前に対する俺の嫌な予感は外れたためしがないほど当たってるんだ。
俺はそう決めると、急いで緩んでいたネクタイを上まで締め上げ、古泉から逃れるように立ち上がってドアの方へ向かおうとする。
ついでに確認のために部室内を見渡すが、先程まで居たはずの朝比奈さんと長門はなぜか居ない。
これなら好都合だとばかりにドアまで一目散に駆け寄ろうとした瞬間、



(略)



「大丈夫ですか!?」
 慌てた様子の古泉がこっちに近づいてくる。
「だいじょう・・・・・・・って、おい、古泉!?」
 真剣な顔をして近づいてきた古泉が自分のブレザーを俺の手から剥ぎ取り、床に投げ捨てる。
「そのままでは風邪をひきます」
そう言いながらそのまま濡れた俺のシャツを思いっきり―――
「ぎゃっ!!」
俺が止めるのも聞かずに、ご開帳しようとしがった。
思わず身を捩って逃げるが、古泉もしつこく俺のシャツを脱がせようとする。
「ちょ、暴れないで下さい!」
「馬鹿、暴れないやつがいるか!つーかシャツから手を離せ!」
「嫌です!」
「嫌ってなんだよ!それくらい自分で出来るって!」
 叫んで思い切り古泉の腕を離そうと足をバタつかせた瞬間、
「「うわ!?」」
俺が思い切りバランスを崩したと思えば、古泉もそれにつられる形で俺の上に被さるようにして古泉が倒れこんできた。
「う、ぐっ」
「うわっ!す、すみません!」
倒れた古泉の体重に潰されそうになり、死にそうなうめき声を出した俺に気付いた古泉が慌てて両手を杖にして上半身を起こす。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・近い」


気付けば古泉と俺はベッドの上で押し倒し、押し倒されながら間近で見つめあうといった少女マンガもビックリな展開になっていた。
おまけにおあつらえ向きに、俺のシャツは濡れて透けて乱れに乱れているという少年誌も大興奮な状況だ。

「・・・・・・・・・古泉」
「・・・・・・はい」
「・・・・・・・いや、なんでもない」
「・・・・・・はい」

 馬鹿みたいに身体を重ねているというのに、俺達は互いにどう切り出していいのかわからず、戸惑うように顔を見合わせる。
 多分、俺が女になったせいもあるんだろう。
 俺自身もなんとなく変な感じがする。なんかこう、意味も無くムズムズする。
俺があーでもこーでもないと考えていると、目の前の古泉が、そっと俺の頬に手で触れた。
「あの、」
「な、なんだ」
 古泉がいつになく緊張した面持ちで俺を見つめる。
その表情に少しだけ鼓動が跳ねるが、俺はあくまでもその動揺をさとられないように古泉に話の続きを促した。



「あなたがこうなった以上、責任はとりますから」





「・・・・・・・・・は?」












>すすむ?もどる?飛び越える?・・・・・・【お題:古キョン長】


(略)


「携帯買うのか?」
机から身を起こしながら尋ねる。
長門はしばらく手の中のカタログをじっと見つめた後、無言で頷いた。
「そっか。でもカタログよりは実際に見たほうがいいと思うぞ?」
カタログでいいデザインだと思っても、実際に見るとイメージと違ったり、機能があやふやだったりした、なんてことはよくあることだ。
店に行って実物を見るほうが早いに決まっている。
そういえば最近、新機種が出たばかりだったな。
自分の携帯を変える気はないが、新機種には興味をそそられるな・・・・・・。
俺はじっと俺を見ている長門に向き直り、とりあえずささやかな提案をしてみる。
「長門、あれだったら今日の放課後にでも携帯を見に行かないか?」
「それはいい提案ですね。僕もご一緒してもいいですか?」
「お前には聞いてない。つーか、いつの間にいたんだお前」
突然背後から聞こえてきた声に対して、ほぼ反射的に否定の返事をする俺。
嫌々ながら振り返れば、扉の前に相変わらずの笑みを浮かべた古泉が立っていた。
本当にいつの間に部室に入ってきたんだ。
しかしこんなことを聞いて貴重な時間を削られるのがもったいないと感じた俺は無視して長門に向き直る。
長門は俺と古泉を見比べた後、静かに首を縦に振った。
その表情が少しだけ嬉しそうに見えたのは俺の錯覚じゃないと思いたい。
「よし、じゃあ活動が終わったら、」
「その件ですが」
俺の言葉を遮るように古泉が会話に入ってくる。
「先程、涼宮さんに偶然会いまして、『今日はもう解散だから!』との伝言を預ってきました」
「ハルヒが?」
「ええ、朝比奈さんも一緒のようでしたが」
ハルヒめ。また朝比奈さんを使って何か悪巧みを考えているんじゃないだろうな。
俺が嫌な予感に頭を抱えていると、俺の袖を、つっと引っ張る感触があった。
顔だけで振り返るとそこには無言でご主人様の命令を待つ忠犬のような長門がいた。
そんな大きい目で見つめられると心臓に悪いんだが。
「長門?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
聞いても無言で俺を見つめ続ける長門に、俺は困りながらとりあえず尋ねてみる。
「・・・・・・行くか?携帯ショップ」
恐る恐る問いかけると、長門は肯定するように俺の袖を強く握り締めた。



「いらっしゃいませー」
大型電気店の自動ドアが開くと同時にお姉さんたちの笑顔が俺たち三人を迎えてくれる。
たとえ営業スマイルと分かっていても綺麗なお姉さんから向けられる笑顔はいいもんだ。
「笑顔がお好きなら、僕を見てくださればいいのに」
「うるさい。お前には聞いてない。だいたい、なんでお前がいるんだ」
「勝手にしろと言ったのはあなたですよ?」
「確かに言ったが、俺と長門の邪魔するようなら今すぐ帰れ」
俺がぶっきらぼうにそう言うと、古泉はいかにも「やれやれ」といった風情で困ったような笑みを浮かべると、じゃあ僕は新機種でも見てきますねと自分の携帯会社のエリアへと向かっていった。
その後ろ姿を見ていると、またしても袖が引かれる。長門だ。

「・・・・・・一緒に、見て」











>!をさかさにすると似てなくも、ない・・・・・・【お題:ネクタイ】



「なぁ、お前って私服でもネクタイしてるだろ?詳しいんならさ、明日買い物に付き合ってくれないか?」
卒業も間近に控え、こうやって部室で彼とオセロができるのもあと何回だろうと感慨深く思っていたときに突然降ってきた彼からの誘い。
驚いて目の前の彼を見つめると、彼は照れたように視線を横にずらしながら『忙しかったら、別にいい・・・・・・』と珍しく頼りなさ気に呟いた。
その様子にいつに無く胸を高鳴らしてしまう。
彼からの誘いを断る?僕が?まさか。
「いえ、僕もちょうど明日出かけようと思っていたところなんです」
そんなこと一ミリも考えていなかったくせに、彼に邪な想いを抱いていた僕の口からはスルスルと嘘が吐き出された。
「そっか。ほら、大学の入学式ってスーツだろ?よく考えたら何も用意してないって思ってさ」
僕の言葉に彼がホッとしたような表情を見せる。
そんな顔をしないで下さい。思わず、抱きしめたくなる。
自分の片手が今にも彼に向かって伸びそうになるのを必死で抑えながら、僕は彼と約束を交わした。


 SOS団が結成されて約三年。本当にいろいろなことがあった。
すでに未来人の彼女は卒業という形で任務を外れているが、たまに部室に顔を出しては周囲を和ませている。
そして衣装好きの涼宮さんの餌食になっているが、それすら楽しそうに見えた。
長門さんは今も昔も変わらないままだ。少しだけ表情が表に出るようになった気がする。
彼に言わせるとものすごくわかりやすくなったらしいが、未だに僕には良く分からない。
多分、彼女が心を許している彼だからこそわかることもあるんだろう。
彼女は卒業後も統合思念体の意思にのっとって、留学するという涼宮さんについて行くらしい。
その涼宮さんは、この三年で大きく変わった。
精神的にも肉体的にも成長した彼女は、昔のように感情に身を任せることをしなくなった。
おかげで閉鎖空間の発生率もかなりの割合で下がった上、機関の情報によると、彼女の能力が少しずつ低下しているとのことだった。
もしかしたら近い将来、彼女は普通の女性に戻るかもしれないとも言われている。
そんな彼女に一番影響を与えたと考えられる彼は、今も昔も変わらない。
めんどくさがりに見えて実はお人好しで、とても懐が深い彼。
涼宮さんとの関係も結局変わることなく、兄弟のような関係が続いている。


僕とも相変わらずいい団員仲間の関係を―――ああ、少しだけ変わったことがあった。


それは二年も終わり、学年が繰り上がる直前の春休みのことだった。
彼が急に僕に勉強を教えてくれと言い出したのだ。あの勉強嫌いの彼が。
突然のことに驚いた僕だったが、その頃からすでに彼を慕っていた僕が断るはずもなく、受験が終わるまで平日も休日も彼と僕は肩を並べることになった。
会うごとに新しい一面を見せる彼に、ますます僕が惹かれたのはいうまでも無い。

しかし、彼は涼宮さんの『鍵』。
僕が手を触れて良いような相手じゃない。
何より、自分の気持ちを伝えることで、今の関係が崩れるのがとてつもなく恐ろしかった。
だから僕はその感情をひたすら隠して彼に勉強を教えることだけに集中した。
結果、彼は当初の志望大学よりも二、三ランク上の大学に合格。
その大学が偶然僕と同じだったと知ったとき、内心歓喜の嵐だったことは彼には秘密だ。



そして、僕は―――

「おい、古泉!」
間近で聞こえた彼の声に、急速に意識が戻ってくる。
慌てて声がした方に視線を送ると彼がネクタイを二本持ったまま、心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫か?疲れてるなら・・・・・・」
「いいえ!大丈夫です」
帰りを促そうとする彼の言葉を遮るように強く言う。
せっかくの休日の彼とのデートをここで終わらせるなんて、そんなことできるはずがない!
必死に言い募った僕の声の大きさに驚きながらも彼は「それならいいが・・・・・・」とひとりごちた後、
気を取り直したらしく、僕の目の前に二本のネクタイを掲げる。
「これ、どっちがいいと思う?」
「そうですね・・・・・・」
彼の右手にあるネクタイは青を基本色として、所々に藍色のラインが入っている。
左手にある、もう片方のネクタイは黒を背景に小さな白のドットが散っている。
どちらもシックなもので、彼が好みそうだと思いながら、僕は彼の右手にある青いネクタイを手に取った。
そのまま二つ折りにして彼の首もとへ近づける。
彼の首に指が触れると、彼がびくりと身体を震わせた。
「・・・・・・っ、」
彼が声にならない吐息を吐き出したかと思えば、頬があっという間に朱く染まった。
どうして、この人はこんなにも僕を動揺させることに関して天才的なんだろう。
そんな態度を取られると、誤解してしまいますよ。
頭の隅でそう考えながらも、表向きは何も気づかなかったように振舞う。
臆病な自分を殴りたくなるが、衝動のまま行動して後悔するよりはいいと自分に強く言い聞かせた。
「あなたは黒よりも青の方がお似合いだと思いますよ」
「そっか」
じゃあ、これにするかなと呟いてレジに向かおうとする彼を慌てて止める。
「ちょ、そんな簡単に決めてしまっていいんですか!?」
他にも鏡を見るとか、店員に聞くとかあるじゃないですか!焦った僕の提案に、彼はこともなげにあっさりと言った。
「いいんだよ。お前に選んで欲しかったんだから」
「・・・・・・!!」
その爆弾発言に僕は言葉を失った。
降参だ。
彼は本気で僕を殺す気だ。
一気に顔全体の表面温度が沸騰したように赤くなる。
こんな顔、彼には見せられないと慌てて俯こうとした時、
「じゃあ、レジに行ってくるから」
そう言って彼が僕にくるりと背を向けた。


「・・・・・・あ」

一瞬だけ見えた、髪の隙間から覗く彼の形のいい耳がひどく赤くなっているように見えたのは僕の願望が見せた錯覚だったのろうか。













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