命短し恋せよハムスター



by 戸田采女


 もうすぐ師走という秋の終わりの日。
ゴールデン誠さんは今日も元気に回し車で遊びます。
かちゃかちゃと音をたてながら、給水器から可愛い舌で水を飲んでいたパールちゃん。
途中で止まっては回し車の誠さんを振り返ります。
誠さんはパールちゃんに手を振ったりはしませんが、もちろん熱い視線には気づいています。
軽い身のこなしで回し車から降りると、今度ははしごを素早く登り、巣箱のあるロフトの上から、下にいるパールちゃんをじっと見つめます。

かちゃん…。

小さな音をたて、最後の一口を飲み終わると、パールちゃんは濡れた口元も露に、ロフトの誠さんを見上げました。
(おおおっ)
グラビアアイドルのような仕草に、誠さんは某所を直撃されたようです。
ハムスターの行動は単純明快です。
やりたい時がお昼寝タイム。
誠さんはパールちゃんに向かい、あごをしゃくって巣箱に入るよう命令しました。
パールちゃんも素直に従い、いそいそとはしごを登ってきます。
「ききっ」
誠さんは嬉しげにひと鳴きすると、パールちゃんを先に巣箱へ入れ、続いて自分も中に入りました。

 ふかふかのおがくずを敷いた巣箱の中は、それは暖かくて快適です。
じっと寝ているだけでも、うっとりと心地よい眠りが訪れるのですが、若い二匹はそれではすみません。
二匹はじゃれあい、絡み合い、やがてはめくるめく『ぐりぐり』へと突入します。(ぐりぐりの意味は第一話参照)
(右近っ)
(誠さんっ…)
後ろからパールちゃんにおおいかぶさり、ふんわりした白い毛並みに鼻を埋め、誠さんは一生懸命ご奉仕しています。
パールちゃんもうっとりと目を閉じ、誠さんのリードに身を任せていますが…。

(あ…っ)

パールちゃんは、一瞬ほんの少しだけ身構えました。
実は今日だけでなく、パールちゃんには近頃気になることがあったのです。



 いえ、決してナニに不満があるわけではありません。

 気づいたのは一週間くらい前でしょうか。
『ぐりぐり』タイムの最中、誠さんのたくましい物がパールちゃんの中でお仕事をしているはずのとき、パールちゃんは右のお尻にあたりにも、異物があたっているように思えたのです。

 一度目は気のせいかと思いましたが、二度、三度同じことが続くと、気になって仕方ありません。
今もこうして切なげな表情で誠さんを受け入れながら、
『今日こそは確かめなくちゃ』 
と、固い決心をするパールちゃんなのでした。



 ことが済んだ後、満足した誠さんは大の字にひっくり返り、すやすやと寝息をたてています。
パールちゃんは完全に眠りに落ちたのを確かめると、ひくひくと鼻を動かしながら、誠さんの股間へと顔を近づけました。
目を凝らして見つめると、

(これはっ…)

 なんということでしょう。
誠さんの右の足の付け根、小豆大の腫れができているではありませんか。
鼻先でつんつんと堅さを確かめます。
しっかりとした異物感の正体はこれでした。
パールちゃんは腫れをじっと見つめます。
何やらただならぬ物を感じ、不安から、かちかちと歯を鳴らし始めました。

すると誠さんが、
「ふああ?」
大あくびをして目を覚ましました。
自分の股間の覗き込むパールちゃんと目が合い、一瞬「ありっ」と首をかしげました。

(なんだ、もっとしたいのか? )

 パールちゃんは涙目で股間を見つめたまま、歯を鳴らしています。

(こいつ…)

 内心にまにまと、勝手に盛り上がった誠さんは、再びききっとパールちゃんに抱きつこうとしましたが、パールちゃんはするりと身をかわして巣箱から出ると、ケージの柵にとりついて、前歯で凄まじい音をたて始めました。

がががががっ、ががががっ

(なんだなんだっ?)

 誠さんは訳が分からず、巣箱から顔をのぞかせてパールちゃんの様子をうかがいます。
常ならぬ騒音に、書斎の戸が開き、飼い主のうねめさんがこちらへやってきました。
「なんや、今日はパールちゃんの方かいな、珍しいな」
ケージに顔を近づけて話しかけるうねめさんに、パールちゃんは鋭く鳴いて異変を知らせます。

(大変ですっ…誠さんを病院に連れていかなきゃ!)



 若い獣医はゴールデン誠さんのチチやマタをさんざなで回した後、こともなげに言った。

「乳腺腫だな」

「んな、あほな」
うねめさんとパールちゃんの元飼い主、前川さんの奥さんは、声を揃えて呆れたように言った。
「それ、♂でっせ?」
「オスでも乳腺腫瘍ができる個体はいる。珍しいことじゃないぞ」
おばさんふたりは半信半疑で獣医の話を聞いているが、
「どうする。このハムスターはまだ若い。放置して腫瘍が大きくなれば、オペのリスクも高まる。早期の摘出手術をすすめるが?」
うねめさんはうなった。
「手術…でっか。それで命は助かるんですか?」
獣医は自信満々にうなずくと、
「良性なら再発することは少ない。今とっておけば、天寿をまっとうできるだろう」
「ほなら」
うねめさんと前川さんは顔を見合わせてうなずいた。
「で、いくらくらいかかるんですか?」
現実的なうねめさんは早速費用について尋ねたが、
「50万だ」

「は?」
おばさんふたりの目が点になった。
「ハムスターの手術に50万って…」
「ありえへん!」
うねめさんはぶんぶんと首を左右に振った。
「にいちゃん、あんたちょっと顔がええからって、えげつないこと言うたらあかんよ」                        
「どこがえげつない? 正当な報酬だ」                 
「よう言うわ。昔、大阪でウサギの脂肪腫とってもらった時、入院費込みで10万もかからんかったで」
食ってかかるうねめさんに、獣医は鼻で笑った。
「わからん人たちだな。ウサギとハムスターじゃ手術の難度は大違いだ」
「そうは言うても、50万は常識はずれな金額違います?」
イケメンに弱い前川さんの奥さんも、今日は珍しく食い下がった。
獣医は銀縁眼鏡の奥から、じっと前川さんを睨みつけた。
「ひとつ言い忘れていたが…」
言いながら、獣医は誠さんを診察台の上で再びひっくり返した。
人差し指の先で患部に触れると、
「こいつの腫瘍は足の付け根、大事なイチモツの近くだ」
眼鏡の奥、獣医の瞳がきらりと光った。
おばさんふたりはごくりと唾を飲んだ。
ついでに、今まで忘れ去られていた、キャリーケースの中のパールちゃんも、プラスチックの壁に両手の肉球を押しあて、不安そうに鼻をひくつかせている。
「いやなら他所へ行っても構わんが、もし腫瘍と勃起神経が癒着していたら厄介だぞ」
ふたりと一匹は一大事とばかりに、目を見開いた。
「ヘタな獣医が剥離に失敗したら、こいつの命は助かっても、ナニは一生使いものにならん」
獣医とパールちゃんの目が合った。
一瞬探るような視線が絡まったが、
「まあいい。今日は帰ってよし。ただしそう長くは待てないぞ。手術をするかどうか、一両日中に決めてくれ」



「はあ?」
リビングで番茶をすすりながら、うねめさんと前川さんは同時にため息をつきました。
再びケージに戻った誠さんとパールちゃんは、回し車の横で並んで丸くなっています。

「乳腺腫とはなあ…」
「オスなのに。しかも体育会系なのに」
前川さんは未だに信じられない面持ちです。
「誠さん。ショックやろうな」
「うん、番長・きよ○らが『乳がん』やて言われたようなもんや」
「気の毒すぎるわ…」
ふたりはがっくりとこたつに突っ伏しました。

 飼い主ふたりが暗?く語りあうなか、当のはむはむ二匹も深刻な面持ちで見つめ合っています。

(俺は…手術なんかいやだ)
(誠さん、何言ってるんですか?!)
(失敗したら♂として終わってしまう…)
(失敗なんてしませんよ! あの先生なら大丈夫)
誠さんはきっとパールちゃんをにらみ、
(何でそんなこと言えるんだ)
(だってテレビで見ました)
(は?)
(あの先生、性格悪そうだけど、外科医としては超一流だそうです)
(しかしなあ…おまえの言うとおり、腕を信じてあいつに頼むとしても)
誠さんは再び瞳をくもらせました。
(問題は金だ)
パールちゃんは悲壮な面持ちで、しっかりとうなずいた。
(治療費のことなら任せてください。僕に考えがあります)
(考えっておまえ…)
気持ちは嬉しいがと、誠さんは首を左右に振りました。
パールちゃんはそれでも諦めず、
(せっかく一緒になれたんですよ!)
(うっ…)
パールちゃんは小さなお手手で誠さんの手を取り、
(長生きしてくれなきゃだめです、誠さんなら大丈夫、絶対復活します!)
うるうるお目目で力強く励ましました。

 武家のお内儀のように凛として動じず、パールちゃんはこうして誠さんを、果たし合いの場(オペ)へと送り出したのです。



「で、あんたら決心はついたのか?」
相変わらずタカビーな物言いだが、うねめさんも怯まず、
「一応な。だがその前に一一」
いったん言葉を切ると、パールちゃんの入ったキャリーケースを、獣医の目の前につきつけた。
「この子があんたに話があるそうや」
「は?」
獣医は小馬鹿にしたようにケースの中を覗き込んだ。
「あんた、いつもテレビで偉そうに言うてるやんか」
「なんの話だ」
「『動物の声に耳を傾けろって』」
前川さんとうねめさんがユニゾンで応えた。
「ほな、私ら待合室におるよって」
呆れたように立ち尽くす獣医にパールちゃんを預け、飼い主ふたりは誠さんを連れて外へ出た。

「で、俺に話があるそうだな」
付き合いがいいのか、本当に動物の言葉がわかるのか。
椅子に腰掛けた獣医は、ケースを開けてパールちゃんを取り出し、掌にのせた。
パールちゃんは二本足で立つと軽く一礼した。

(先生。誠さんの治療費のことでご相談があります)
「それは飼い主が心配することだろう?」
(いえ、私にもできることがあると)
「ふん」
獣医は鼻を鳴らしながらも、パールちゃんの眉間を指先で撫でた。
意外に優しいタッチに驚いた。
パールちゃんはちょっと恥ずかしそうに、
(私を動物モデル事務所にご紹介いただけませんか?)
医師は銀縁眼鏡の奥で目を丸くしたが、
「なるほどその手があったか」
とりあず話にのってくれた。
(はい。何でもやりますからっ、お願いします)
パールちゃんは再び丁寧に頭を下げた。
「ふん。そうか」
獣医は面白そうに呟くと、にやりと口の端で笑った。
何気にブラックな雰囲気が漂い始め、パールちゃんは一歩後ずさった。
「本当に何でもするんだな?」
(はい…)
パールちゃん、不安がよぎったが、ここで負けてはいられない。
(はい)
きっと顔を上げて獣医を見た。
「そうか…しかし50万は大金だ。ペット用品のCMに出たくらいじゃ、もらえないぞ」
(あっ…)
「その金額がほしければ」
(ほしければっ?)
「DVD出演しかないだろう」

(あのう…)

そんな需要があるんでしょうかと、パールちゃんは呑気な顔で獣医を見上げた。
「そうだな、何ならエージェントになど任せず、俺が撮って売リ出してやってもいい」
(そんなにおっしゃるなら…) 
意外に協力的な獣医の態度に、パールちゃんは望みをつないだ。
パールちゃんがこっくりうなずくと、医師はきらりと目を光らせ、
「ならば、クロハラハムスターの内藤兄弟との3Pはどうだ?」
恐ろしい提案を持ちかけた。
ところが当のパールちゃんは、口を半開きにして小首をかしげた。

(内藤兄弟って誰だっけ?)

 皆さんに思い出していただきたい。
はむはむの脳みそは小さいのだ。
記憶の容量には限りがある。
右近がはむはむとして生まれ変わった時、都合の悪い存在はほぼ記憶から消し去った。
個体認識できるのは、誠さんと、母上、孫作ぐらいのものだろう。
どうやら3Pという言葉も知らないらしい。

(それで手術代が出るんなら…お任せしよう)

 心を決めたパールちゃんは、ききっと鳴いて獣医を見上げた。
「おおそうか。本気なんだな」
獣医はパールちゃんののど元をこちょこちょとなでた。
パールちゃんが首をすくめると、
「なかなか感度も良好だ。よし、シーン1は…」
掌の上にパールちゃんを仰向けに転がした。
「回し車にくくりつけられて、内藤兄弟が両脇から乳首とおマタをごにょごにょだ」
獣医はそう言いながら、パールちゃんの足の付け根をくすぐった。
(あ、そんなことされたらっ…)
悲しいかな、ハムスターの神経回路は単純で、信号の伝達も矢のごとしだ。
掌の上でもだえるパールちゃんを、獣医は面白そうに眺めた。
「そうか、気持ちいいか。次はシーン2だ」
獣医はパールちゃんを再び四つん這いに戻すと、両脇の下に親指と中指を入れて持ち上げた。
「亀甲縛りでケージの天井から宙吊りだ。縄は…焼豚の紐くらいがよかろう」
足が宙に浮き、パールちゃんは危険を感じてばたばたともがいた。
「前は嶺次郎が××し、後ろから帯刀が…という構図はどうだ?」

 どうだと言われても、所詮パールちゃんには亀甲縛りも、焼豚の紐も理解不能な語彙なのだ。
とにかく宙づりの状態から解放されたくて、パールちゃんは足をばたばた、歯をかちかち鳴らし続けた。

 獣医はくっくとおかしそうに笑い、
「悪かったな、からかって」
と、パールちゃんを自分の掌の上に戻した。
さすがに温厚なパールちゃんも、これには腹をたてたらしく、毛を逆立てて歯を鳴らした。
「わかったわかった。お前の心意気に免じて…安くしてやるよ」
(え…? DVD出演はなしなんですか?)
いぶかしげに見上げるパールちゃんには答えず、パールちゃんを掌にのせたまま、獣医は立ち上がると待合室へのドアを開けた。

「おい、話はついだぞ」
獣医はパールちゃんの喉を人差し指でごにょごにょ撫でながら、うねめさんたちに呼びかけた。
パールちゃんは顔をあおのかせて、ひくひくとひげを動かした。

(あいつっ、右近を!)
誠さんはキャリーケースの中で、思わず仁王立ちになった。
プラスチックの壁に両手をふんばると、激しく歯を鳴らしながら獣医を睨みつける。
(この悪徳獣医め、右近に何をする?!)
「ちょっと話をしただけだ。鎮まれ」
(嘘だ、右近の様子が何かへんだ。おまえ、やらしいことしたんだろうっ?!)
獣医は鼻をならし、わざと見せつけるように、パールちゃんの耳の後ろを優しくなでた。
これまた条件反射で、パールちゃんは目を細めた。
獣医は勝ち誇ったように誠さんを見た。
「人を自分と一緒にするな。ごちゃごちゃ抜かすと、ついでに去勢手術もするぞ」

 誠さんの脳内では、去勢手術→切腹申し付け候と、変換された。

 誠さんの顔から一瞬にして表情が消え、崩れるように膝をついた。

 ケースの中で固まる誠さんを尻目に、獣医はパールちゃんを両手でくるみ、
「こいつの健気さに免じて、費用は10万にしてやるよ」
改めてうねめさんにそう告げた。
うねめさんはぽんと膝を叩いて立ち上がった。
「そういうことなら、お願いしますわ」
前川さんもほっとしたようにうなずき、獣医の手からパールちゃんを受け取った。
「パールちゃん、よくやったね!」
詳しいことは知らないが、パールちゃんのおかげで50万が10万になったのだ。
飼い主ふたりは万々歳だ。

獣医はにやりと笑い、
「交渉成立だな。では今から準備にかかる」
「よろしくお願いします」
ここに至ってはうねめさんも素直に頭を下げ、誠さんのキャリーを渡した。
やると決まれば獣医はてきぱきしたもので、大声で助手を呼びつけると、キャリー片手にオペ室に入った。



「なんや、えらい時間かかっとるやないか」
うねめさんが時計を見て苛ついた。
「もう30分もたってる」
『泌尿器がらみは難度が高い』と言われたものの、通常の腫瘍摘出は15分程度だそうな。
パールちゃんも落ちつかない様子で、ケースの中を動き回っている。
不信感に満ちた目で手術室をにらんでいると、ランプが消えてドアが開き、オペ着姿の獣医が現れた。
ふたりと一匹が固唾を飲んで見つめると、
「安心しろ。手術は成功だ」

(誠さんっ!)

 パールちゃんは嬉しげにケースの中を走り回った。
うねめさんと前川さんもほっと肩の力を抜いたが、
「泌尿器のほうは大丈夫なんか?」
うねめさんが上目使いに尋ねると、
「ああ、癒着はきれいにはがした。今まで通りの生活がおくれるはずだ」
獣医は力強くうなずいた。
パールちゃんは二本足で立つと、獣医を見上げ、うるうると瞳を潤ませた。



 麻酔が切れても一晩はこちらで様子を見るからと、誠さんは病院に留め置かれた。翌朝、驚異的な回復力で、誠さんはペレットをもりもり食べ、エリザベスカラーをつけ退院となった。

 番長・き○はらがフリフリ襟のブラウスを着ているような姿を、飼い主ふたりは結構おもしろがっていた。

(何とおいたわしい…)
 
 同情していたのはパールちゃんだけだった。
支払いを受け、誠さん一行を送り出す時、獣医はキャリーケースに顔を近づけて、誠さんにだけ聞こえる声でいった。

「抜糸までは…自重するこったな。キズが開いても知らんぞ。わかってるだろうな」

 誠さんはエリザベスカラーの下あたりを毛繕いしながら、獣医と目を合わせ、不敵に笑い返した。



 さて無事マンションに戻った誠さんとパールちゃんですが、
「ほな、しばらくパールちゃんは前川さんのとこで預かってもらおか?」
「うちは全然かまわんよ♪」
前川さんの奥さんは、パールちゃんの久々の里帰りが嬉しいのです。
「よろしく頼みます」
うねめさんも丁寧に頭を下げ、前川さんを送り出しました。

 誠さんは自分だけがケージに戻され、パールちゃんがキャリーで連れ去られるのを見て、
(なんでやっ!)
速攻でケージの柵にかじりつき、
がががががっ、ががががっ、と抗議の声を上げました。
「やかましいっ!」
ドスのきいた一喝のあと、うねめさんのドアップが目の前に迫ります。
「抜糸までは別居させるようにとの指示や」
(くっ…あの悪徳獣医、余計なことを)
誠さんは手術してもらった恩も忘れ、かちかちと歯を鳴らしました。
「高い金払うて手術したんやで。傷口開くようなアホなマネされたら困る」
誠さんはさらに激しく歯を鳴らします。
歯は鳴らしますが、否定はできません。

「図星やな…」

 ハムスターは短い命。恋する二匹は一日だって無駄にできません。

「それでもな、誠さん、ここは我慢や」
 うねめさんは真顔で諭します。
「それに、しばらく独り寝させといたほうが…」
(ほうが?)
ひげをひくつかせ、誠さんがうねめさんの目を覗き込みました。
「再会した時、パールちゃん燃えるで」
(なるほどっ)
「楽しみは後にとっておき」
うねめさんは思わせぶりにふふんと笑いました。

 簡単にひっかかった誠さんは、嬉しげにききっ鳴き、瞳を輝かせました。
あっさりと柵から離れ、とっとこ給水器の方へ向かっていきます。

かちゃん、かちゃん…

力強く舌を突き入れて水を飲みながら、小さな脳みその中は妄想で溢れかえっています。
パールちゃんのあられもない姿が次から次へと浮かんでは消え、

かちゃん、かちゃん、かちゃん、かちゃん…

給水器を鳴らす音は、増々激しさを加え、果てるともなく続くのでした。


おわり


某ドラマの獣医ドリト○先生、ご出演ありがとうございましたm(__)m




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壁紙は『ハムスターひまわりアイランド』さんからお借りしています。


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