深海よりも怖いモノ

地球の面積の7割を占める海。
海さえ手中にしてしまえばペコポン侵略は完了したも同然!
と、いうケロロの提案から、潜水艦ロードラジャー号に乗り込み海底の侵略に乗り出したケロロ小隊だったが……。


「何事もまずは形からであります!」

 どこかの戦艦アニメによく似た艦長ルックを着こなしたケロロが、海上に浮上したロードランジャー号の甲板の上でビシッと敬礼を決める。
 そんなケロロを前にして、白いセーラー服と制帽を身につけたギロロ以下小隊員4名とモアも敬礼する。
「ゲロゲロ、せっかく海に侵略しに来たのでありますから、これくらいの格好はしないとネ☆
と思ったでありますが…そこの二人、びっくりするほど似合わないであります!」
 目深に被った帽子の下からギロロとクルルに視線を向けて、ケロロは嫌そうに顔をしかめた。
「うるさいわ!制服を用意したのは、貴様だろう!」
「クックック〜。俺らは素直に渡された服を着てるだけだぜ」
 激昂するギロロと陰気に笑うクルルを見て、やれやれだぜ〜、とケロロはアメリカ人のようなオーバーアクションでため息をつく。
「そんな反応するから、余計に似合わなくなるんだよ〜。
その点タママとモア殿はさすが、よく似合ってるであります!」
 ケロロに誉められた二人が、思い思いに可愛らしいポーズをつける。
「えへへ、それほどでもあるですぅ〜」
「おじさま!モア、この制服大好きです。てゆーか意気揚々?」
 そんな二人を見て、ケロロはいいねぇ、と目を細める。
 そして最後の一人、普段はなかなかペコポン侵略に参加したがらないドロロへと向き直る。
「で、忘れちゃならない、ドロロ兵長…」
「たまには、こんな格好もいいでござる」
 ピシッと姿勢良く立つドロロを、ケロロは上から下までじっくりと眺める。

バッ!!

 と、ケロロはいきなり、ドロロのセーラーの裾をめくった。
 勢いよく持ち上がった白い制服の下から、隠れていたドロロのおなかとしっぽが現れる。
「た、隊長殿!? 突然何をするでござる!?」
 慌てながら、ドロロは服の裾を押さえた。
「いんや〜、なんだか急にめくりたい衝動が…ゴミンネ☆」
 ドロロは反省の色の見えない謝罪をするケロロを恨みがましく見ながら、ケロロから少し離れたギロロの隣に移動する。

バッ!!

「えぇっ!?」
 その隣に立った瞬間、今度はギロロがドロロのセーラーをめくりあげた。
「すまん、何故だかめくりたい衝動が…」
 ギロロはじっとドロロのセーラー服の裾と、そこから伸びる足を見つめている。
 放っておくとまたやりそうな雰囲気だ。
 身の危険を感じたドロロは、今度はクルルの隣に移動する。
 が、やっぱり

バッ!!

 めくられた。

「クック〜。普段見えているものでも、見えなくなると気になるもんなんだよな。
確かに、これはめくりたい気分になるぜ〜」
「み、皆同じ格好をしておきながら、何故拙者ばかりが狙われるでござるか!?」
 ドロロはぎゅっと服の裾を押さえて、涙目になりながら抗議する。
「なんでってねぇ…ドロロはギロロやクルルのセーラー服、めくりたいと思う?」
「思わないでござる!」
「でっしょ〜?つまり、そういうことだって」
「答えになってないでござるよ…」
 このままではケロロのいいようにされてしまう。
 そう悟ったドロロは  今度はタママの方へ逃げよう…!と視線をむけるが、そこには
「さあ来い、めくってやるですぅ〜」
と言わんばかりに目を血走らせて、指をわきわきさせるタママがいた……。


「あれ?ドロロはどこにいったの?」
 ロードランジャー号の客室から甲板へ顔を出した冬樹が、ケロロに話しかける。
「ドロロは別行動であります!」
 甲板の隅に脱ぎ捨てられたセーラー服を横目に見ながら、ケロロはいつものことのように答えた。


 その日、人気のない海岸の岩陰に、うずくまって涙する青い宇宙人がいたとか、いなかったとか…



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アニメ第20話のセーラー服小隊(の特にドロロ)があんまりにも可愛かったのでつい…。
でも、いつの間にかドロロだけセーラー脱いで別行動になってたのが悔しかったんです。
別行動するなら、その前に捲らせろ!!
そんな自分の欲望に素直になってみました。
話の中じゃ似合わないとか言わせてますけど、クルルもギロロもめちゃ可愛かったと思います。
ケロン人の感覚では似合ってないってことで納得してください。
勢いだけで押し通すようなタイプの小説を書いたのは久々でした。
ケロロのセリフ書き込むのが楽しかったであります。


2004/09/13