4.15
 悲壮なる決意を固めている俺に、古泉がくっそ腹の立ついい笑顔で言い放つ。
「何をいまさら、いつもしていることじゃないですか。そんなに恥ずかしがる必要はないでしょう」
 お前はもうちょっと羞恥心を持て。時と場合と周りの人間を考えてから発言しろ。少しは船医の純真さを見習ってみたらどうだ。
 すると古泉は膝の上で俺を抱き直し、耳元に唇がくっつくくらい顔を寄せた。
「……へえ?」
 耳に直接吹き込まれた声にぞくりと背中が震えた。途轍もなく嫌な予感しか感じられない、タチの悪い淫猥な響き。
 顔はすぐに離れて、何事もなかったように会話を再開した。だが油断してはいけない。
 それにしても何がそんなにこいつの逆鱗に触れたんだろう、船医と比べたことか?
「時間の経過を待つ場合、どれほどかかるんでしたっけ?」
「服用してからきっかり七日……だったと、思います」
 ……さっきから思ってたが、なんでお前らそんなに怪しげなアイテムに詳しいんだよ、正直俺は聞いたこともないぞ。
「僕たちは海賊ですよ? 価値あるもの、珍しいものの情報を集めるのは当然です」
 なるほど、と納得がいったそのときだった。
 コートの下にもぞりと手のひらが入ってきたのは。


4.16
「……っ」
 気のせいなどではない。
 コートと肌の隙間に入り込んできた指は、はっきりとした意思を持って俺の膝がしらの丸みを撫ぜた。生足に古泉の体温が直接触れる。
 本っ当に何を考えてやがるんだこいつは。ここがどこで、今どういう状況か理解してんのか。二人きりのベッドの上じゃない、会長や船医がいる前なんだぞ(いや決して二人きりのベッドならいいわけではないが!)。
「流石に一週間もこのままでは色々と不都合でしょうね」
 平然とした顔でなんでもないように話を続けながら、指はゆっくりと肌の上を辿ってくる。
「こ、」
 咎めようと声をあげかけた瞬間、太ももの柔らかな感触を堪能するように、するりと手のひらが滑って息をのんだ。
 幸いテーブルの陰になっているしまだ会長にも船医にも気づかれてはいないようだが、このままではまずい、非常にまずい。
 調子に乗った古泉の蛮行を早くやめさせなければならんが、かといってヘタに動いたり声を出せば他二人にばれて藪蛇になる。
 目立たないように踵で古泉の足を軽く蹴ってみたが、
「―――――っ!」
 手は太ももの内側、足の間に潜りこみ、きわどい部分をくすぐって俺を黙らせた。


9.9
「万が一、船に女性がいることを他の船員に知られれば、いらぬ混乱を招きます。おかしな考えを抱く人間が出てこないとも限りません」
「そうだな、餓えた野獣どもの集まりだからなあ」
 会長が同意する。
「まあ僕のものを他人に渡すつもりはありませんけど」
 揶揄するように古泉の指がそっと動く。俺は俯いてシャツの裾を握りしめた。
 こ、の、野、郎……! 調子に乗ってやがるな。
 ぶっちゃけた話、俺は女の子とお付き合いをしたことがない。従って、当然、そういうことをしたこともない。年齢的に奥手なんだろうとは思うが、ハルヒに振り回される学生生活で手いっぱいで機会にも暇にも恵まれてこなかった――――というのは言い訳くさく響くかもしれんが。
 そんなわけで、女の子の身体にも疎く、うっかりどっきりハプニングで朝比奈さんの特盛りを見てしまったことはあるが、下は見たことも触ったこともない。こんな形で女体の神秘に迫りたくなどなかった。
「……っ」
 閉じた秘裂をゆっくりとなぞる指に、唇を噛みしめる。
 わかっちゃいたが、やめる気はさらさらないらしい。どうやら耐えきるしかなさそうだ。未来は暗い。