空が綺麗だな、と思った。口に出したら、ますます実感した。
 夕暮れの朱色の光と、滲みこむように広がる紫や紺、立体的な雲。なんて綺麗なんだろう。
「今まで、そういうこと、ちゃんと考えたことなかった」
 信子が言うと、隣に座った男の子は、からっと笑った。
「んー、特別だってことに気付くと、世界が変わるよねっ」
 普段はよくおどけて見せているのに、本当はとても強かったり、実はしっかりした考えを持っている彰。
 軽い口調で重いことを言うから、侮れない。
「世界が、変わる……」
 目の前を隠す前髪、俯いて下ばかり見ていた眼。
 そんな信子はもういない。
 彰と修二の二人に会って、信子は変わった。
 俯いたままでは見えなかったものが見えてくる。
 それは空の色だった。大嫌いだった自分のいいところだった。周りの人の温かさだったりもした。
 顔を上げろ、お前は自信を持っていいんだと言ってくれた人たち。
 その筆頭が彰で――――彰はとても優しい。今も、優しい瞳で信子に笑いかけている。
 すぐ側にある彰の肩から、信子の肩に伝わってくるようだ。
「ありがとう」
 無性にお礼が言いたくなったからそうした。
「んー? 何が?」
「え……な、なんだろう。色々」
「そっかー。んじゃ俺も。ありがと」
「わっ」
 信子は彰に引っ張られて、彰の肩に頭を乗せる姿勢になった。
 よく電車の中で見るようなそれを、まさか自分がする日がくるとは思わなかった。
 今度は直接体温が伝わる。じんわりと広がって、信子を温める。
「お・れ・も、そう。野ブタと会ってから、世界変わりっぱなしよ〜ん。特別なことに気付いちゃったからさぁ」
 彰は肩に乗せた信子の頭を撫でた。
 信子からも、何かが伝わっているのだろうか。
 伝わったらいい。
 頭をちょっと寄せて、信子は思いをこめてみた。

……あなたが、特別。