彼がどっちかはお好みでご想像ください。

「服を買いに行きたいから、つ、つきあってくれないかな」
 勇気を出してそう切り出したら、切り出した相手は何故かとても嬉しそうな顔をした。
「そんなの、お安いごようだっちゃ!」
「ま、プロデューサーだしな」
 二人の言葉に、信子は緊張で詰めていた息をようやく吐いた。
「なんか、まだ一人で選ぶの不安で」
 センスに自信がないから、と言った信子の言葉を二人は信じたようだった。
 まあ当たり前だ、半分は本当なのだから。
 ただ、もう半分の理由を隠しているというだけで。
 実は信子、自分でも頑張って服装を研究したり、以前貰った雑誌をめくったりしているのだ。
 何度か一人でショップに足を運んだこともある。
 でも、どうも服を選ぶときに意識してしまう。
「……この服、彼が好きだと言っていた系統だ」とか。
「これ、確か彼はナシだと言っていたのに似てるかも」とか。
 気になる人の好みの格好をしてみたいと思うこの心を、信子は気付かれないように隠していた。
「んじゃいつにする?」
「早いほうがいいだろ、善は急げだ」
「明日とか……」
 予定を立てていく二人。信子はこっそり彼を見る。
 帰ったらとりあえず、服を選びにいく日に何を着ていくかを考えなくては。
 きっと悩みに悩むのだろう。