足を伸ばして床に座り、背を壁にもたれさせるようにしているステラは、自分の膨らんだ胸の辺りで揺れている水色の頭に触りたくてしょうがなかった。
ステラの身体を子猫のようにぺろぺろと舐める彼――アウル――は、不思議だ。
ひょっとしてわたしの身体は甘いの、と、疑問に思ったステラは試しに腕を持ち上げて舐めてみる。別に美味しくもなんともなかった。
じゃあなぜ、アウルはステラを舐めてるの?
流れる青い髪の誘惑に負けて、ステラは彼の頭を撫でた。
それが案の定アウルの気に障ったらしく、胸元にかりりと噛み付かれて、ステラは小さな悲鳴を上げた。
「ステラ、キャンディじゃない」
「わかってるよ、んなこと」
そう言ってアウルは自分のつけた噛み跡を再び舐め始める。
甘くないなら、どうして舐めるの? ステラにはわからない。
それとも、自分で自分の身体を甘く感じるのは無理でも、他人の身体は甘く感じることができるのだろうか。
「アウル……」
「なんだよ」
うざったそうに前髪をかき上げながら顔を上げたアウルの、その頬にステラは唇を落とした。
舌を出してぺろりと舐める。
――――やっぱり。
ステラは舌を引っ込めた後の唇に指先を当て、呟いた。
「……甘くない」
「――――っ」
「アウル?」
アウルは下を向いてしまって、長い前髪に隠れたその表情は、ステラからは見えなかった。
怒らせてしまったのだろうか、
それが心配になって彼の前髪に触れようとすると、手を払いのけられた。
拒絶されたと思い、胸が――直接噛まれた時よりも痛くて、ステラの目に涙が滲む。
開いた口から嗚咽がこぼれそうで、我慢するために噛み締めようとした唇に、甘い感触があった。
瞬くまつげで涙は散り、ステラは舌に乗った飴玉を、口の中でころりと転がした。
驚いてアウルを見ると、彼はきまり悪そうに肩をすくめている。
カラフルな包み紙をくしゃくしゃに丸めてから、無造作にポケットに突っ込む。
「それでも舐めてろ」
ステラが頷くと、アウルは唇に移った甘みをまた、舐めとった。



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