アウルはだらしなくベッドに横になり、わざとらしく手足をばたつかせた。
「アウル、ベッドで泳いでるの?」
部屋の片隅にちょこんと座って海の写真集をめくっていたステラにちげーよ! と言って、スティングの頭に枕を投げつける。
「暇! 超暇!」
スティングは何気ない様子で振り向くとひょいとその枕を受け取って、元のベッドの上に戻す。
アウルが膨れた。
「後ろから狙ったのになんで当たんねーんだよ」
「腕が未熟だからだろ」
枕の上に拳を叩きつけて、アウルはスティングを睨む。
「むかつく!」
「で、お前は何をそんなにむかついてるんだ?」
「言っただろ、暇なんだよ!」
「少しは大人しく出来ないのか?」
「それ僕に言ってるの? 本気? ばっ――かじゃね?」
無理、と全身で表して、
「だからさぁ、これ、やろうぜ」
にんまり笑った。
その手にはいったいいつのまに出したのか、綺麗な青いガラスのトランプケースが握られていた。
手品する人みたい、とステラはぼんやり思う。
スティングは呆れたように、そして諦めたようにため息を吐いた。
やれやれ、付き合えばいいんだろ。
「で、ゲームは? ポーカー?」
「いんや、ブラックジャック」
我が意を得たりとアウルは笑う。
シャァァ、と小さな、例えて言えば霧雨の降るときのような音を立てて、カードがばらばらに組み合わされる。
見事な手つきでカードをきる彼の手元、その動きにステラは見とれた。
「でさ、何賭ける?」
「おいおい、いくらなんでもそれは賛成しないぞ」
「いーだろ別に、こんくらいさあ。つか、こんくらいしないと楽しくないじゃん。勝負ってヤツ。あ、それとも負けんのが怖い?」
「……わかったよ」
負ける、という言葉にひっかかりを覚えたのだろうか。スティングはアウルの申し出を受ける。
アウルは興奮気味に身体を前のめりにさせた。
「やりぃ! 話わかるね。で、賭けるもんは――」
「チップはこれな」
これもまたどこから取り出したのか、スティングの手にはビスケットが一箱あった。
アウルがはぁ?と怪訝な顔になる。ステラの顔は対照的に嬉しそうに輝く。
そのままちょこちょことスティングの側によった。
「ステラも……ステラも欲しい」
「ああ、後で俺のやるから待ってな」
優しくそう言ったスティングにアウルの怒声がとんだ。
「なんで菓子なんだよ! それからお前が勝つの前提なのかよ! 僕を舐めてんのかっ」
「俺がそう簡単に博打にOK出すと思ったか? ステラもいるし」
スティングは人の悪い笑みを浮かべ、アウルは勢いよく空気を吐く。
「ハン、付け足した後のが本音だろ。こいつの教育に良くないってか」
忌々しげにステラを見やって、カードをベッドの中央、スティングと自分の間に置く。
ビスケットの箱をスティングの手からひったくるように取ると、ぺりぺり箱を開けた。
入っている枚数を確認する。4枚入りが8パック、計32、半分で16枚ずつ……か。
アウルは4パックをスティングに放り、残りの4パックの包装を破いて中のビスケットを取り出したが、途中スティングの方を見て眉をしかめた。
「おい! 何やってんだよ!」
ステラに自分のビスケットを1パック分けていたスティングが、しれっと言う。
「俺が自分の勝ち分をステラにやるのが嫌なんだろ? だから最初にやっとこうと思って」
「ってめ……スティング! 見てろよ、余裕ぶってられんのも今のうちだっ、絶対負かしてやる! 後で吠え面かくなよ!」
「怖い怖い。ま、お手柔らかにな」
スティングは肩をすくめる。その横で、ステラがビスケットの一枚目を噛んでいた。



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