海を見ると子どものように目を輝かす。(実際こいつの精神年齢は子どもだ)
小さな水槽の中の小さな魚をいつまでも飽きずに見ている。
そうでなかったら甲板でぼーっと海を眺めている。泳げもしないくせに。
海の何が良いのかわからないアウルにとっては、だからそんなステラの行動は不思議だった。
「お前、水が好きなの?」
一拍置いてステラから答えが返ってくる。彼女の持つ独特のテンポ。
「……好き」
「あとさぁ、魚が好きなの?」
「好き」
「つまり、水があって、魚がいりゃいいわけだろ?」
水なんか飲むものだし魚なんか食うものだけど。
見てて楽しいもんじゃないじゃん、とアウルは思うけど。
ステラはなにがそんなに嬉しいのかにっこり笑うものだから、彼女にとっては違うのだろう。
「じゃあさ、川でもいいんじゃねぇ?」
「かわ?」
「そ、川。水があって、魚もいる。海と変わんねえじゃん。あと池とか沼とか湖とか」
とりあえずステラが好きと言った条件は満たしているじゃないか。
なんで海だけ特別なんだ? アウルにはいまいち理解不能だ。
「でも、ステラ、海が好き」
「だぁからさ、海じゃなくても別によくないかっつってんの」
「でも、海がいい」
「だーかーらーさー……」
「違うの。同じじゃないの」
ステラは言い張る。
意外と……でもないか、頑固だ。やっぱガキだこいつ。
めんどくさくなってきて、もういいやどうでも、と投げようとしたアウルを、ステラの声が引きとめた。
「アウルも、違うの。他の人と、同じ『ヒト』だけど、違うの。ステラ、川じゃなくて海が好き。ステラ、他の人は違うけど、アウルは好き。スティングも。ネオ、大好き。それって、特別って言うんだって、ネオが教えてくれた」
「……………………」
あのおっさん仮面。
黙ってしまったアウルをどう思ったのか、ステラが首をかしげる。
けれどアウルにはもう、ステラの『海が好き』という気持ちが全くの理解不能ではなくなっていた。
他とは違う特別。きっとそれでなくてはダメなのだ。



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