ステラの手の中の白くて柔らかな物体が、にゃーと声を上げた。
「……お前、なに拾ってきてんのステラ」
「にゃあ」
「にゃあ、じゃねっつの。スティング、スティングー!」
スティングになんとかさせるつもりでアウルは彼を大声で呼んだ。
こねえし……。
アウルはすぅー、と息を吸った。
「あーステラが大変なことにー(棒読み)」
「どうしたステラ!」
息を切らせながらすぐさますっとんできたスティングに、アウルは冷たい視線を向けた。
空咳したって誤魔化されてなんてやらない。
だいたい、こいつはステラのことになると過保護すぎんだよ。
「ステラ……へいき。大変じゃない」
いつ見ても普段のステラはぽややんとしている。見かけだけなら平和そのものだ。
たとえ中身がバイオレンスデンジャラスプリンセスでも。
見た目がいいって得だよなあ、僕も含めて。とアウルは思った。
スティングは息を整えて、それからアウルのほうを向いた。
「本人は平気だって言ってるぞ? どこが大変なんだ」
「腕に抱えてるもの見てないだろ」
「腕?」
「にゃあ」
ステラの声にあわせるように、猫がにゃーと鳴いた。
「にゃんこ」
そう言ったステラはきゅう、と抱いた猫を抱きしめた。おい、絞まる絞まる、虐待はやめとけ。
「……猫だな」
「猫だろ」
「俺にどうしろって?」
「めんどいからお前にこの事態を押し付けようと思って」
「そんなこと素直に暴露されてもむかつくだけなんだが」
「頼りにしてんじゃん。お・に・い・ちゃん」
「やめろ、鳥肌たった」
兄貴二人がコントを繰り広げている間、ステラは抱いた猫の手を自分の手のひらに載せたり、軽く振ったりして遊んでいた。
彼女は彼女独特の時間軸で生きている少女なのだ。つまり言い換えればマイペース。
「にゃん。にゃん。にゃー」
仔猫と戯れる妖精のような美少女。スティングは腕を組んだ。
「アウル、お前はこんなに可愛い光景の何が不満なんだ」
「笑えねージョークかましてんじゃねーよ」
「しかし、これだけ嬉しそうなステラの邪魔をしろっつーのか。鬼畜だなお前」
「アホか!」
アウルの見事なつっこみが決まり、スティングはアウルにどつかれた胸を押さえた。
勿論アウルは力の加減なんかしてやらなかったのだ。
「にゃあ、にゃあー」
「ったく……どうすっかな」
スティングは役にたたねえし……わざわざ呼んだのに。
アウルは上司にも同僚にも恵まれない己の不運を嘆いた。そしてため息をついた。
ステラが猫に頬ずりした。
「にゃん、ネオと一緒ー」←猫耳の仮面らへんが
空気が凍った。

強制排除決定!
がぜんやる気になったスティングとアウルはがっちりと固い握手を交わした。男たちは共通の目的のために手を組んだのだ。
「ステラ、猫なんか拾ってきちゃダメだろう」
スティングが幼児にするように話しかけると、ステラはようやくこちらの世界に戻ってきた。
相変わらず瞳はぼんやりぼけぼけしていたが。
「ダメ……なんで……?」
「飼えねーからだよ。ほら置いてこい返してこい戻してこい」
「かわいいのに……」
しゅん、と睫毛を伏せたステラを見て、かわいいのはお前だ!と男二人は心の中で絶叫した。
「そういっても宇宙にはつれてくわけにもいかないだろ」
「ネオに頼む!」
「はぁ!?」
「ネオー!」
「ちょっ待てステラ!」
その後、仔猫は「猫なんか飼ったらステラのお魚食べられちゃうぞ」というネオの子供だましな脅しにより、これからも地球で暮らすことになった。


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