アウルは唇を尖らせる。
「ステラお前、またそんなん見て……他にやることねーのかよ」
直訳すれば「僕に構えよ」になるのだが、ステラにそんなことが読み取れるはずもなく、視線をちらりとアウルに寄越しただけですぐまた水槽に夢中になる。ステラは面白いのだろうが、アウルは面白くなかった。
「だいたいそんなちっぽけなの、食ったら一口じゃん」
腹の足しにもなりゃしない。アウルはぼやいた。
実際は観用魚だから、食べたって美味しくないのだろうけど。
「食べちゃダメ! 小さくて、可愛いから」
「はぁ? お前にとっちゃ小さいと全部可愛いんですかー?」
「小さくてキレイだから、可愛いの」
小さくてキレイ……だから、可愛い。
「おさかな、好き。ステラ、海も好き」
可愛いから、好き。
「海はでけぇじゃん」
「キレイだから好き」
こいつの考えることなんてこんなもんだ。
一応こいつも女だから、女って可愛いもん好きなんだろうけど、でもこいつの場合なんかずれてる気がする。
「アウルもキレイ」
「はぁっ!?」
どっから出てきたんだその発想。
今は魚や海の話をしてただろうが、なんでいきなり僕なんだよ(さっきまで自分から構って欲しがっていたという事実は棚に上げられた)。
僕だってここまで思考がぶっ飛んではいないぜ――アウルはステラの頭を叩いた。
ポンコツなのが直るかな、などとふざけた意味を込めて。ステラはぶたれた髪を押さえながら
「キレイ……で」
まじまじとアウルの上から下までを見て、
「小さい、から、……可愛い?」
もっかい殴ったろかコイツ。
そりゃあアウルの背はそんなに高くない、だがそれを指摘されればムカつくに決まっている。
「お前よりはでかいっつうの」
「じゃあ……可愛くない?」
首を傾げるステラを見ているとイライラしてきた。
「あのなあ。キレイまでは百歩譲って許してやるとして、いい加減にしねーとマッジ怒るよ」
覚えとけ、と半ば怒鳴る勢いで言う。
「キレイで強い、から、“かっこいい”んだよ!」
「じゃあ、可愛くなくて、かっこいいけど、……好き?」
「“けど”はジャマ。余計。いらない」
「でもステラ、アウル好き」
「……そっちはジャマじゃねー」
どっち? とまた首をかしげるステラをもう一度叩いたものかそれとも撫でたものか、アウルは考えた。
なんかこんなんばっか(06.02.16)
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