I miss you : 2




突然ハウルが、「どうしてもやらなきゃいけない仕事ができた」と言い出したのが三日前。
そしてしばらく留守にすると言ったその主の不在が、今日で三日目。
家の中は火が消えたように静かだった。カルシファーは、変わらず燃えているけれど。
ソフィーは何度目かもわからないため息をつく。
恋はため息を増やしたが、では今の状態は何に起因するのだろう。決まっている。ハウルだ。
彼と思いを通わせあってからこっち、ハウルはずっとソフィーの側にいてくれた。
たった三日だが、その三日間ハウルがいないということはそれから初めてのことで、だからなんとなく寂しい。
落ち着かないのに、もうするべきことは何もない。掃除も洗濯もほぼやり尽くしてしまった。
ハウルがいればあんなに忙しかったのに、いない今、ソフィーは完全に暇をもてあましていた。
ソフィーがまるで箒の方が彼女の真の恋人ででもあるかのように掃除に明け暮れていたのは、磨くそばから汚していくハウルの存在があったからで、ソフィーが一日中働いていたのは、本当はすぐに終わるはずの仕事もハウルになんやかやとまとわりつかれて邪魔をされていたからで、することがないのはハウルがいないから。
普段怒っていたハウルの行動も、いざ彼がいなくなると張り合いを失ってしまったようで気が抜ける。
ため息。
ハウルはソフィーに何も言わなかった。ただ、冒頭の台詞だけ。
具体的に何をするとかいった説明は何もなしだ。しばらくという単語がどのくらいの期間を示すのかさえはっきりとは。
まさか危険な仕事ではあるまいかと気になって、そしてまたため息。
こんこんと控えめなノックの音でソフィーは目を扉に向けた。
開いた隙間から顔をのぞかせたのはマルクルだった。
「ソフィー、あのね」
もじもじしていたマルクルが、思い切ったように声をかけてきた。
以前も同じことがあったので、ソフィーは彼が何を言いたいのかはすぐわかった。優しい子なのだ。
「ハウルさんは、すぐに帰ってくるよ」
わたしってそんなにわかりやすいかしら。周りに気持ちを悟られてばっかり。
ソフィーは小さな魔法使いの弟子の目元にキスをして、よく眠れるように呪文を呟いた。
「……ありがとうマルクル。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ぱたんと扉は閉まる。



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04.12.29