こんな夜更けに、闇と風の中に城を走らせるのは誰だろう。
 それはソフィーとカルシファーだ。ソフィーはおびえるカルシファーをひしと抱きかかえている。

ソフィー   「カルシファー、どうして顔を隠すの」
カルシファー「ソフィーにはハウルが見えないのかい。アクセサリーをつけて、派手な服を着ている…」
ソフィー   「あれはたなびく霧よ……」
ハウル    「かわいいソフィー、一緒においで。面白い遊びをしよう。
         秘密の庭にはきれいな花が咲いているし、金の服を僕がたくさん用意して待っているよ」
カルシファー「ソフィー、ソフィー! きこえないの。ハウルがソフィーになにか言うよ」
ソフィー   「落ち着きなさい、枯葉が風にざわめいているだけよ」
ハウル    「いい子だ。僕と一緒に行こう。僕の魔法がもてなすよ。
         ソフィーをここちよくゆすぶり、踊り、歌うのだ」
カルシファー「ソフィー、ソフィー! 見えないの、あの暗いところにハウルの魔法が!」
ソフィー   「見えるわよ。でも、あれは古いしだれ柳の幹よ」
ハウル    「愛しているよ、ソフィー。君の美しい姿がたまらない。力づくでもつれてゆく!」
カルシファー「ソフィー、ソフィー! ハウルがあんたをつかまえる!
         ハウルがあんたを恥ずかしい目にあわせる!」


 ソフィーはぎょっとして、城を全力で走らせた。あえぐカルシファーを両腕に抱え、やっとの思いで荒地に着いた……。
 腕に抱えられたカルシファーはすでにくたくたになっていた。


「ソフィー! ほら、僕の可愛い奥さん! いい加減に機嫌を直しておくれよ!」
「何か虫でも飛んでるのかしら。さっきからうるさいったら」
「あのさあ、ふたりのケンカにおいらを巻き込まないでもらえる?」



04.12.14