なんでこんなことになってるんだっけ、と天井を見ながら考える。
元はといえば、一人で勉強していたのが詰まって、仁に訊こうと部屋を訪れて、学校のことやなんかをしばらく話した後、いつの間にか軽い口喧嘩の応酬になって、じゃれるみたいな格闘に発展して、触ってるうちに気づけばそういう雰囲気になっていて、それで……そのまま。
「オレはなんだって、お前とこんなことしてんだ」
「したかったからだろ?」
「したかったのはお前だろ。オレを巻き込むな」
「お前を巻き込まなきゃ、出来ないじゃないか」
ああ言えばこう言う。
蹴飛ばして出てってやろうかな、と思いながら、光也は口の達者な少年を見る。
「まったく、こんな歪んだ兄を持って、亜伊子があんなに素直に育ったのが疑問だぜ」
「ああ、いい性格してるってよく言われる」
そういう意味じゃないだろうよ、と光也は呆れ、自分の髪の毛を指に巻きつける。
「それにしてもお前さあ、こんなかてえ身体抱いて、何が面白いの? 物好きなヤツ」
「物好きはお互い様だろう。じゃあ、お前はどうなんだ? その物好きな男に触れられて感じてるくせに」
「これは……! ちがっ」
「何が違う?」
「……ぁっ!?」
「可愛いよ、とてもね」
「嬉しくねー……男なのに可愛いとか言われても」
「じゃあ、どういうことを言われたら嬉しい?」
「……」
「光也」
「……それ」
「どれ?」
「名前。光也って呼んでくれるだけでいい。オレは、それで」
「欲がないなあ」
「そうでもないぜ」
……たぶん、すごくひどい要求だと思う。仁がそうと知らないだけだ。
「うーん、僕としてはもっと我侭言ってくれたほうが、張り合いがあるんだけど」
「やだよ。お前の台詞、気障ったらしくってさぁ。歯が浮くっ」
「僕は普通だ。お前が言葉に表さなすぎるんだよ」
「いつも散々言わせてるだろ。しかも無理矢理に! まだ足りないのか、欲張り」
あんだけオレに好き勝手しやがったくせに……と行為の断片を思い返しながら、同時にふつふつと怒りも湧いてくる。
あんなに恥ずかしい真似をさせやがって、ほんと変態じゃねぇのお前。
しかしそれを言ったら自分も変態の仲間入りをしてしまうことになるので、光也は黙っていた。



最初台詞オンリーだったんです。短いのはそのせいです。(06.05.16)
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