仁がオレの目を覗き込んでくる。
どうやらこいつはオレの黒い目が好きらしく(羨ましい、のかも)、綺麗だなあとかしみじみ言うなよお前。
オレから言わせりゃ……言わないけど、仁の目のほうがよっぽど綺麗な色をしているのに、仁は、黒曜石みたいだとか、歯の浮くようなくっさいセリフをずらずら並べて、視線をオレから逸らさない。
てか顔近えよ。
オレはいたたまれなくなって、仁の緑色から逃れるように視線を落とそうとしたが、そうするとどうも唇にばかり目が行ってしまう。
だって、こんだけ近いと、なあ。
仁の瞳以外で強烈なパーツっていうと唇になるのだ。
変態かもオレ、こんなこと考えてるってばれたら絶対ヤバイな、と思うのに、上下に動く唇に目が吸い寄せられる。
いつもこの舌が、オレをいいようにあしらってくれちゃうわけだ? ふーん。
オレからキスして、その口ん中に舌を突っ込んでやったらどんな顔するだろうか。
嬉しそうに、そして少し意地悪に笑う仁が簡単に想像できたから、考えるだけにしてやめておく。

「おい、聞いてるか、みつ」
「わり、聞いてなかった」
唇の動きは追っていたけれど、なんて言ったかまでは全部聞き流していたオレは、とっさにそう答えることしか出来なかった。
オレは慶と違って上手くはぐらかすのとか、嘘をつくのが致命的に下手なのだ。
仁はオレをからかうときにいつもする表情になった。オレその顔嫌い。
「正直だな、お前」
「悪かったな」
「正直だというのは誉め言葉だろう?」
「いい意味で使ったんじゃねぇくせに」
応酬。互いの息が顔にかかりそうだ。
いつまでこの距離でいなきゃなんないんだろう。こういうのも生殺しっていうんだろうか?
しちまおうかなキス、なんか目が離せないし、と唇を見つめたままでいると、それがゆっくり近づいてきたので、オレも同じように顔を寄せた。

――――僕はさっき、口づけてもいいか、って言ったんだぜ。



rainさんの絵を見てムラムラして書いた、反省はしていない
(06.10.10)

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