手を伸ばさずにはいられない光。触れたいと思うのは罪だろうか。
光也は僕の前で平気で無防備な姿をさらすようになった。
平気で着替えるし、風呂に入るし、目の前で寝てしまえる。
もし僕が――――もし、邪な行為に及ぶような男だったらどうする気なんだ、こいつは――――。
いつからだろう、光也から僕に対するはっきりとした信頼を感じるようになったのは。
それは同性の友人へ向ける真っ当な感情であり、当初の彼の態度を思えば、喜ぶべき変化であるはずだ。
だから僕は、光也を怯えさせないように、自分の中の獣を檻に閉じ込めて、決して出てこないように押さえつけている。
傍らの光也のまっさらな寝顔。
人の気も知らないで、と言うのは簡単だ。だが僕はそうしたくない。彼を裏切りたくは、ない。
ぐっと指先を抑え込む。シーツの上を爪が軽く引っかいた。
ごく小さな音だったが、耳障りに思えて眉をしかめる。
光也にも伝わったのか、「ん」と一瞬だけ寝息が途切れ、また聞こえ始める。
僕は彼に恥じないよう『みつ』を愛していたい。
自分の愛が高尚だというつもりは無い、だいいち、男にこんな想いを抱くところからしてその資格すら失われているだろう、けれども、僕に与えられた笑顔、あの光が曇るような真似をすることだけはないように。
うっすらと開いた光也の唇から息がこぼれている。
まぶたが細かく一・二度震えたかと思うと、下からぼんやりした瞳が現れる。
しまった、目が合った。光也は微笑んで
「……じん」
僕は彼の呼びかけに答えられず、また答えようとしたときには彼はすでに再びまぶたを下ろしていたので、もしかすると僕の聞き間違いか空耳だったのではないかと思ってしまうほど。
けれども彼が僕に見せた刹那の微笑を、忘れられるわけが無い。
「みつ……光也」
その顔に覆いかぶさる長い前髪を払い、身体に布団をかけてやる。
そして僕は、自分の指がこれ以上の罪を犯す前にベッドから立ち上がった。


(06.11.04)
肉欲は抱いてないっぽいのかなーと思いました。

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